エッセイ〜「自分とエヴァと綾波さんと」




長い、長い。夢を見よう。



例えば、監督が最初から学園エヴァを造っていたら僕はエヴァに何の興味も持たなかった、と思う。

十八歳の俺にとって、物心ついた時にオタク文化はもう確立していたから。

部活の友達に美少女ゲームを借りてやってみたり。

受験の時には萌え単を誰かが持ってきて笑いあったり(索引が無い単語帳は始めてみた)。

それでも、僕はエヴァンゲリオンにはまった。

それはもう首の付け根まで。

ディラックの海にはまるかのごとく。


例えば、僕があと二歳若かったらエヴァにはまらなかったと思う。

年寄りでも同じ。

でも僕はエヴァにこだわる。

調度いい時期に出会った。

僕の年齢的にも。

世間のエヴァ熱的にも。


僕がエヴァにこだわる理由。

それは、僕がエヴァがだいっキライだからだ


基本的に、僕はハッピーエンドしか受け付けない人間だ。

で、友達に見せられたエヴァ。

感想は、控える。まあ、多分、皆さんの想像どうりだ。

やっぱりちょっとだけ語るなら、救いの無いデスゲーム小説を読んだ感じだ。

頑張っても、やる気無くても、駄目は駄目。
さらに、綾波。ちょいと可哀相過ぎないか?
だから、僕は保養を求めた。


不味い物を食った後に、おいしいものを食べたくなるように。

臭い空気の後に、新鮮な空気を求めるように。


感動した。

沢山の二次作品があった。

その作品を読みふけるうちに、僕は綾波という存在にさらに心を惹かれていった。

二次作品から綾波に惚れたという意味で僕は正当なアヤナミストではないのかもしれない。

はっきり言って、今でもあのキャラのどこに惹かれたのかわからない。

だから、彼女を語る術を僕は持たない。

ただ、彼女のことを好きになった。

彼女に幸せになって欲しいと思った。

それともう一つ。

エヴァ二次作品のコミュニティー。

それが魅力的だった。

みんなが同一のソースを使用して、それぞれがそれぞれの世界を作り上げていく。

思想が反そうとも必ず帰着する場所は一つしかない。

そんな絆。

エヴァの無数の可能性。

人が考えうる無数の可能性。

そこに自分の考えた可能性を含ませたかった。

その絆に自分も繋がりたかった。


夢は現実だ。

いい夢を見たら気持ちがいいし、悪い夢を見ればぐったりとする。

夢は現実だ。

夢は未来を作る。人に希望と絶望を与える。

夢は現実だ。

意味の無い夢想は良い休息にもなりうる。

僕の触れるもの全てが現実だ。

それが虚構であろうと、真実であろうと。

映画であろうと、アニメであろうと。

メジャーであろうと、マイナーであろうと。

だから、僕にとってエヴァンゲリオンは一つの現実だ。

だから、いつか僕も僕のエヴァンゲリオンを完成させたいと思う……






「……まあ、そんなとこかな。俺が二次小説を書く理由は。まあ、簡単に言ってしまえば好きだから。それだけだね」

「ったく。まだ一作も仕上げたこと無いくせに良く言うわよ」

「ぐっ……し、しょうがないだろ?僕が書きたいのは長編で……しかも、途中で切れるのが嫌だから全部書き上げてからどこかに投稿しようと思ってるんだよ」

「無様ね……相応のポテンシャル、計算をもって行動に出ないからそういうことになるのよ」

「まあ良いじゃないか。……で、今日はどこ行くんだい?」

「今日は買い物よ!!夏物のバーゲンなの!!行くわよ!!」

「えぇ……また買い物なの?」

「来て、くれないの?」

寂しげな瞳。

はあ。

大きなため息をつく。

もしかしたら、自分は綾波レイのこういう部分に惚れたんじゃないかと自己嫌悪に陥る。

誰かにすがらないと生きていけないような少女。

自分を必要としてほしい。

自分だけを見てほしい。

そんな自分が見えるようであまりに情けない気がする。

だけど、好きなものは好きなのだ。

しょうがないじゃないか。

「行くよ」

短く答えて、書きかけの小説を保存する。

レイ、アスカ、時々リツコ。

「ほら、ごらん。そっくりだろう?誰かさんに、っと」

一言。呟いて立ち上がった。

天気は晴れ。


長い、長い。夢を見よう。


夢を見るから現実を捨てるんじゃない。

現実のために幸せな夢を見たい。


長い、長い。夢を見よう。




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