「成人式」





   第三新東京市。

 

 

 

   六年程前。

   ここで、人類の存亡を賭けて、

   力の限り闘った者達がいた。

 

   人の記憶は風化するが、

   公開されない数多の記録と共に、

   失われることなく後々まで語り継がれるであろう物語。

 

   だが、人々は、立ち止まる事は出来ない。

   過去の栄光にすがっては、生きてはいけない。

   前を向き、命の限り、歩き続けるのだ。

 

 

   これは、サードインパクトを中心で体験しながらも、

   生き延び、幸せをつかみ取ろうとする、そんな少年少女達の、成長した姿。

 

 


 

   ガヤガヤガヤ・・・ワイワイ・・ガヤガヤガヤワイワイ・・・ガヤガヤガヤ・・・・

   華やいだ声が、楽しげなざわめきが、辺りにこだまする。

 

   やかましくも、喜びに満ちた喧噪の中に、

   もう少女とは呼べず、女性として成長した三人の姿があった。

   その出で立ちは、周りと同じく、着物である。

   艶やかに着飾った女性達の中でも、彼女たちは一際輝いて見えた。

 

 

 

   世界中を襲ったサードインパクトは、再び気候に影響を与えた。

   日本では、色とりどりの四季が回復し、

   春には桜、夏には蝉、秋には紅葉、冬には雪が、

   訪れるようになっていた。

 

 

 

   凛と澄んだ空気、ぬけるような空の下。

   チルドレンは六年の時間を駆け抜け、大人となり、

   鎖に束縛される事のない自由な翼を両の肩に持ち、

   人生の大空へと飛び立っていく。

 


 

   「おっそいわねぇ・・・」

 

   栗色の長い髪の女性が、つぶやく。

   誰に言うわけでもなかったのだろうが、側にいた、蒼色のショートカットの女性が小声で答えた。

 

   「・・・まだ開始には時間があるわ・・・」

   「っ! わかってるわよっ・・・!!」

 

   二人とも、肌は抜けるように白い。栗色の髪の女性は、白人の色だろう。蒼色の髪の女性は・・・白磁とでも言えばいいのだろうか。

 

   「アタシはねっ、女性を待たせるような行為が気に入らない、って言ってんのよっ!!」

   「まぁまぁ、少しは落ち着いてよ。せっかく正装してるんだから、ね?」

 

   宥めるように声を掛けたのは、暖かな優しさを感じさせる、夜色の髪の日本人的な女性である。

   栗色の髪の女性は、憤懣やるかたないように瞳を鋭く怒らせていたが、しばらくして、フッ・・・と力を抜き、視線を高く上げた。

 

   冷え、澄み切った空は、紺青に彩られ。

   同じ色の瞳が、遙かな成層をも通り越え、更にどこか遠くを見つめているようにも、見えた。

 

 

 

   「・・・あれからもう、六年以上経つのね・・・」

   再び、独白する。

 

 

 

   そう、大変だったあの時期から、変わる事のない友情で結ばれ、ここまで彼女たちは過ごしてきた。

   中学、高校は同じ道を、大学は各々の信じる、進むべき道に従って。

   しかし、時間は過ぎ去っても、進む道は違えども、変わる事のない友情を。

 

 

   そして今、華やかな、記念すべきこの空間に、彼女たちは立っていた。

   この三人の女性。

   栗色の髪の女性を、惣流・アスカ・ラングレーという。

   蒼色の髪の女性を、綾波レイという。

   夜色の髪の女性を、洞木ヒカリという。

 


 

   「・・・ねぇ、レイ。」

   アスカが、つぶやくように呼びかけた。

   「何・・・?」

   「アンタさぁ・・・どうして、アイツだったワケ?」

   レイが、小首を傾げる。

   「・・・? 急に、どうしたの・・・?」

   「んー? なんとなく・・・」

 

   「自然に惹かれあってくっついたみたいだったから、気にした事無かったけど・・・」

   「今までの事、思い返してたら急に気になって。要素は、そりゃ色々思いつくんだケドね?」

 

 

   アスカの胸に去来する、記憶・・・。

 

 


 

高校一年の最初の頃、後からミサトに聞いた話だ・・・。

レイが、攫われそうになった事がある。

ネルフの保安諜報部員も居たけれど、

助けに入ってくれたのがアイツだった。

それが最初だったと記憶している。

 

確か、旅行に行った先で、肝試しして、

レイが足滑らせて滑落しそうになったときに、

身を挺して庇ってくれた事もあった・・・。

 

クリスマス前に、隣のクラスの子がアイツにアタックしてきた事がある。

あの時のレイってば、明らかに嫉妬してたわよねぇ?

 

湖に、初めてデートしに行ったとき。狙撃された事もあった。

あの時は、たまたま歩く場所を半歩ずらした瞬間だったって聞いた。

運良くレイは無傷、弾はアイツの肩に当たって、全治一ヶ月。

あの子はアイツが意識取り戻すまで二昼夜起き続けて・・・

意識を取り戻したとき、初めて大声出して泣いたのよね。

びっくりしたわね、あン時は・・・。

あんな風に取り乱すのなんて、初めて見たからさ・・・。

 


 

 

   「まぁ、言いたくなかったら、無理には聞かないケド・・・」

 

   レイはそっと目を閉じた。

   しばらくして、

   「別に隠す事じゃないわ・・・聞かれなかったから答えなかっただけ・・・」

   「そう、六年前の、あの時から・・・」

   レイは、ゆっくりと記憶をさかのぼっていく・・・

 

   ・・・・・・・

   ・・・・・・

   ・・・・・

   ・・・・

   ・・・

   ・・

   ・

 

   サードインパクト。

   それは、人々の心の壁が、取り払われた瞬間だった。

   いや、瞬間だったのか、無限に思える時間だったのか、誰にも判りはしないが・・・。

 

   誰もが、心の足りない部分を持ち、膝を抱えて、蹲っていた。

   綾波レイは、様々な人々の心の側に立ち、語り掛けた。

   救いとも、癒しとも異なる、補完を・・・。

 

 

   中年の男

     (何を望むの・・・?)

     (娘が・・・)

     (娘との、絆を取り戻したい・・・)

     (やり直したいんだ・・・)

     (仕事にかまけて、かまってやれなかった娘との、絆を・・・取り戻したいんだ・・・)

     (そう・・・)

     (心を開いて・・・)

     (どこかに、あなたの娘さんの心が見えるわ・・・)

     (しっかりと、手を繋いでね・・・)

  

   おばさん

     (何を望むの・・・?)

     (亭主と、昔のように、暮らしたい・・・)

     (結婚した頃のように、仲睦まじく・・・)

     (いつのまにか、家事と育児の忙しさの中で、心を置き去りにしてきたんだよ・・・)

     (ヒステリックになって毎日喧嘩ばかりしていた、亭主との絆を取り戻したいんだよ・・・)

     (そう・・・)

     (心を開いて・・・)

     (どこかに、あなたのご主人の心が見えるわ・・・)

     (しっかりと、手を繋いでね・・・)

  

   一国の宰相

     (何を望むの・・・?)

     (我が国民との、信頼を取り戻したい・・・)

     (皆のために、そう思って行動していたはずなのに、いつの間にか独裁的になっていたんだ・・・)

     (国民の声に心を傾けて、国民の意思を知って、絆を回復させたいんだ・・・)

     (そう・・・)

     (心を開いて・・・)

     (どこかに、あなたの国民達の心が見えるわ・・・)

     (しっかりと、心を開いてね・・・)

  

   小さな女の子

     (何を望むの・・・?)

     (パパと、ママから愛されたい・・・)

     (喧嘩ばかりして、ちっともわたしの事見てくれない・・・)

     (ううん・・・違うの・・・)

     (パパと、ママに、仲良くして欲しいの・・・)

     (昔のように、みんなで一緒にお出かけしたい・・・)

     (そう・・・)

     (心を開いて・・・)

     (どこかに、あなたのご両親の心が見えるわ・・・)

     (しっかりと、あなたが二人を繋ぐ、架け橋になるのよ・・・)

  

   同い年の少年

     (何を望むの・・・?)

     (キミは、ダレ・・・?)

     (ワタシ・・・アヤナミ、レイと呼ばれたモノ・・・)

     (何を望むの・・・?)

     (アヤナミさん・・・キミの望みは、何・・・?)

     (ワタシ・・・?)

     (ワタシには何もないわ・・・全てが終われば、消えていくだけ・・・)

     (・・・・・・・・)

     (アナタは、何を望むの・・・?)

     (消えていくだけ、なんて、悲しい事、言うなよ)

   ほんのかすかに、アヤナミレイの姿が、揺らいだようにも見えた。

     (どうして・・・?)

     (ワタシは、この時のためだけに生きてきたわ・・・)

     (ボクはいまのままでいい。ボク自身には何も望まないから、キミが、幸せに生きていてくれるなら・・・)

     (どうして・・・?)

     (なにが?)

     (どうしてそんな事を言うの・・・?)

     (辛い事を、消したくないの・・・?)

     (ボクは、今でも、充分、きっと、幸せだから)

     (キミがどんな人なのか判らないけれど、消えていくためだけに生きていていいはずはないから)

     (だから、ボクは望むよ。キミが、生きている事を・・・)

     (キミが、幸せになれるように、生きていく事を・・・)

     (これで、いいかな・・・?)

     (ヘンなヒト・・・)

 

 

   ・

   ・・

   ・・・

   ・・・・

   ・・・・・

   ・・・・・・

   ・・・・・・・

 

   「たった一人・・・。・・・一人だけ、他の誰とも違う、言葉を私にくれた・・・」

 

   「たった一人・・・。・・・一人だけ、他の誰も見なかった、私を見てくれた・・・」

 

   「彼はあの時の事を、覚えてはいないと思う・・・」

 

   「でも、誰も彼もが忘れていても、覚えていなくても、私の心の中にだけは・・・彼の言葉が刻まれているもの・・・」

 

   「碇くんが逃げなかったから、今この世界があるように・・・。彼が望んでくれたから、今私はここにいる・・・」

 

   「だから・・・彼が転校してきて、初めて出会った時・・・、胸が張り裂けそうに痛いのに、何故か、暖かかった・・・」

 

   「私の、心の中にだけある、・・・絆・・・」

 

   「そう・・・」

   アスカには、それしか、それだけしか、言えなかった。

 

 

 

   あの、補完の瞬間。

   誰しもが、心の補完を無意識に求めた。

   それは、エゴでもなんでもなく・・・人の心の不完全性が、それを求めたのだ・・・。

   心の壁が取り払われたその時、アスカは、母親を求めた。

   それは別に、おかしな事ではない。

 

   地球上にその瞬間存在した心を全て溜め込んだプールを形成したのは、碇シンジと呼ばれた少年。

   彼は、「器」だった。

 

   ほとんどの心の傍らに立ち、補完を促したのは、綾波レイと呼ばれた少女。

   彼女は、補完が終われば、消えゆく運命にあったはずだった・・・。

 

   だが、たった一つの邂逅、たった一つの言葉、その事が、綾波レイという少女を、この世界につなぎ止めた。

   その事の重さに想いを馳せて、アスカとヒカリは、ただ、息をのむしかできなかった。

 

 

   今までの喧噪が、一瞬全て打ち消されたような、そんな錯覚にさえ陥る。

   言葉を発すれば、全てが脆くも崩れ去るような。触れるだけで砕けて散ってしまいそうな。

   奇跡。

   そんな陳腐な言葉では言い表せない、歓喜。

 

   誰しもが自らの補完を求める中で、ただ一人、アヤナミレイという存在を気にした少年。

 

   消えるなんてユルサナイ。

 

   幸せにナリナサイ。

 

   ・・・いや、違う。

 

   碇シンジと、同じ響きを持って。

 

   そんな悲しい事、言うなよ。

 

   あの、誰しもがアヤナミレイという存在を、気に掛けていなかった中で。

 

   生きている事を望む、と。

 

   幸せになって欲しい、と。

 

   感情の希薄だった、あの頃には、まだ理解できなかったのかも知れない。

   しかし、サードインパクトを乗り越えた、仲間達と共に過ごす時間が、綾波レイを変えていった。

 

 

 

 

 

 

 

   高校一年の時。梅雨の始まる直前に、「帆田タケユキ」は転校してきた。

 

   レイの胸は、ざわついた。何か判らない感情に。

 

   彼の事は知っていた。忘れるはずもない。

   何故なら、あの瞬間、ただ一人、「アヤナミレイ」を望んでくれた人だから・・・。

 

 

   様々な事があった。アスカが思っていたような事も含めて。

 

   私が攫われそうになったとき。怯むことなく、助けに来てくれた。今も、スローモーションのように、脳裏に映る。

よみがえる、胸に刻まれた、絆。

 

   私が足を滑らせたとき。咄嗟に、下敷きになって怪我をしてまで守ってくれた。

「申し訳ない」という、感情。そして、胸が、ざわつく感じ。

 

   文化祭の出し物。舞台の上で、演技とはいえ、彼と、キスをした。

「恥ずかしい」という、感情。だけど、胸が、暖かかった。

 

   クリスマスの前。彼の隣、という場所を、私から奪おうとした存在。

「面白くない」という、感情。そして、胸が、ちくり、と痛んだ。

 

   誕生日パーティ。手のひらに、そっと落とされたのは、アクアマリンのネックレス。「似合うと、思って」

「嬉しい」という、感情。そして、胸が、高鳴った。

 

   私は、たくさんの感情を、碇くんから、アスカから、みんなから、そして、帆田くんから、受け取り、育んできたのだ。

 

 

 

   明確に、「失いたくない」、そう意識したのは、アスカの考えにあったように、狙撃されたときだった。

 


 

無音の中、帆田タケユキの右肩から前後に迸る、真っ赤な、血。

ぐらりと。

体が傾げ、ゆっくりと倒れ込んでいく。


木々の間から現れ、二人の安全を確保する、黒服の男達。

楽しいデートだったはずの時間。

急速に失われていく、帆田の顔色。


傷口を押さえたレイの両手は、一瞬で鮮血に染まり。

何一つ出来ないままに、ネルフの病院に担ぎ込まれる二人。

 


 

   帆田くんが、意識を取り戻すまで、二昼夜の間、寝る事はなかった。

   いや、できなかった。

 

   蝋人形のように、青白く、無表情に、破裂しそうな感情を抱え込んで。

 

   片時もベッドから離れることなく、ぎゅっと両手を胸の前で握りしめ、目覚めだけを祈り続けて。

 

   その間に口にしたのは、たった一言。アスカに気遣われたとき。

「・・・胸が、痛い・・・」

 

 

 

   帆田が意識を取り戻したとき、レイには、飛びついて、しがみついて、泣き叫ぶしかできなかった。

 

 

「置いて・・・いかないで」

「もう・・・っ、一人に、しないで」

 

 

   感情の解放。

   初めての。

 

 

   サードインパクト以降、少しずつ感情を得ていった時代を第二の人生と言い表すならば。

   初めて感情を解放したその時、綾波レイの、第三の人生が始まったと言えるのかも知れない。

 


 

   「レイ・・・今、幸せ?」

   ヒカリが尋ねる。

 

   「・・・ええ。私は幸せにならなくてはいけないし、幸せになりたいもの・・・」

   レイの顔に、柔らかい微笑みが広がる。

 

   純粋に、ガラス細工のように繊細に、美しい。

   アスカも、ヒカリも、そう思った。

   生きる事の喜びを知る者の、弾けるような輝き。

 

   もちろん、それはアスカとヒカリも同様だ。

   だが、それでも、感情が希薄で、生きる事に執着しなかった彼女を、ここまで変えた、帆田タケユキと言う少年に、二人は心から感謝を捧げた。

 

   「レイ、アンタはこのままでいいの? そりゃ恋人同士かも知れないけど、アタシもヒカリも、将来一緒になる事をお互いに確認してるわ」

   アスカが、やや意地悪そうにレイを覗き込む。

   ヒカリの頬が、朱に染まり。

 

   「アンタ達が別れるとは到底思えないけど、アイツもオクテだから、多分なかなか言い出さないわよ?」

   レイは小さく微笑んだ。

   「帆田くんが碇くんと同じようにオクテなら・・・」

   「私の行動も、アスカに見習うしかないと、思わない?」

 

 

   アスカはわずかに片方の眉を上げたが、それについては、何も言わなかった。

   一言、

   「まぁ、がんばんなさいよ」

   と。

 

 

   ヒカリは何も言わず、微笑んで。

   そっとレイの肩に、手を乗せた。

 


 

   「もうそろそろ来てもいいんじゃないの、アイツらは・・・」

   アスカが再びぼやく。

   「そうね、後五分もないわよね、全く、あの三バカトリオプラス一は・・・」

   ヒカリも同調する。

   「来たわ・・・」

   レイの言葉に被さるように、元少年達の言葉が三人の美女の耳に届く。

 

   「ゴメンゴメン、アスカ、待った?」

   「おーっ、いいん・・・ヒカリ、おそなってすまんなぁ」

   「みんな、おはよう」

 

   三バカトリオが姿を現し、彼ららしい挨拶を交わす。

 

   「レイ、おまたせ」

   プラス一、帆田タケユキも声を掛ける。

   「いいえ・・・式の開始には間に合ったわ」

   レイはいつも通りの表情で告げる。

 

   「あ・・・よく・・・似合ってるよ・・・すごく綺麗だよ・・・」

   レイの、白を基調に、青をあしらった着物姿に、帆田は惚けたようにつぶやく。

 

   「・・・ありがとう」

 

   朱に頬を染め、レイは少し俯いた。

   口元がかすかに微笑んでいるように見えるのは、気のせいだろうか?

 

 

 

   「帆田くん・・・聞いていい・・・?」

   「・・・? どうしたの?」

   帆田タケユキは少し首を傾げ、聞き返す。

 

   レイは、ゆっくりと顔を上げる。

   深紅の瞳が、射抜くように帆田の瞳をまっすぐに捉え、ささやくような言葉が、雷鳴のように帆田の耳朶を打った。

 

 

 

   「私の事を、これからもずっと・・・側にいて、守ってくれる・・・?」

 

   「っ!!」

 

   帆田が、息を飲んだ。

 

 

   いつかははっきりさせないといけない事。いつかは聞かないといけない事。

   いつか自分から口にしようと思っていて、できなかった事。

 

 

   シンジは、アスカに怒濤のごとく迫られて、一言も言い返す事もなく、コクコクと頷かされたという。

   トウジは、夕焼けに染まる大学の校庭で、トウジからヒカリに告げたらしい。

 

   そしてボクは・・・。

 

 

   帆田は、烟るような微笑みを浮かべて、口を開いた。

 

   「ボクは、初めて出会ったときから、綾波さんを守りたい、そう思っていた」

 

   「今まで、ボクが臆病な所為で、はっきりさせなくてゴメン」

 

   「返事なんて、決まってる・・・」

 

 

   「ボクは、レイ、キミの事を」

 

 

 

   その時、スピーカーが大音量で成人式の開始を告げ、帆田の言葉はかき消された。

 

 

   二人は、ゆっくりと顔を見合わせた。

 

   「「行こう(きましょう)」」

 

   二人の声はユニゾンし、一月の冷たい風に乗って、消えていく。

 

 

 

 

 

   手を繋ぎ、急ぐでもなく、しっかりと大地を踏みしめて歩む二人の後ろ姿からは、微塵の曇りも、迷いも感じられなかった。

 

 

Fin.

 

 


 

   後書き

   拙い文章を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

   初めてこういう文章というものを書いてみましたが、難しいモノですね。

 

   素晴らしいEVA小説に出会ったときの感動、それを忘れないうちに、

   自分も何か表現してみたくなり、勢いに任せて書いてみました。

 

   ここに至るまでの本編にあたるストーリーも考えてはあるのですが、

   初めての文章と言う事もあり、盛り上げ切れる自信もなく、

   「成人式」という一つのイベントを切り出して、形にしてみました。

 

   で、本来のストーリーでは、カヲルくん、マナ嬢とマユミ嬢も

   出てくるはずなのですが、ここでは煩雑になるために、

   省略しました。

 

   ごめんよケンスケ、本当は山岸マユミ嬢がお相手になっている

   はずなんだけど、今回は独り者で(笑)

 

   当方は基本的にLRではありますが、このストーリーはLRSには

   なりません。

   アスカにはあのまま成長していって欲しいし、それならば

   相手はシンジだろう、レイには、変わっていって欲しい、

   それならば、新しい風が必要だろう、そんなスタンスの元、

   LRではあっても、LRSではないストーリーになっています。

 

   帆田タケユキ。彼が、綾波レイにとっての新しい風です。

   いつか、本編も書いてみたいです。

 

 

   では、またいつか、お会いできるといいですね。

 

                             あいだ

 

 

 

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