Hoffnungネタ雑記帳

こんな話は面白いかも? と思っても、プロットを展開し、情景や演出を考えて...となると、なかなか書き上げることができなかったりします。10周年企画で、「エヴァ歳時記」とかどうだろ? なんて書いてみたものの、のってくれる人がいる保証もなし、とりあえず記念期間中(2010.6.6 〜 2010.9.13)は自分で断片を投下していこうというわけです。

思わせぶりの会話の断片あり、未完の設定資料あり、単なるパロあり、あるいは「歳時記」ふうな身辺雑記あり、とまとまりはありませんが、どうかおつきあいください。これまでも、綾波展BBSでときたま断片を落としてきましたが、元データが消えたものは、手元のメモから転記していこうかと。

こんなことを思いついたのは、(自分の余裕のなさはさておいて)アイデアを書きとめておけば、誰かがそれをふくらませて面白い話を書いてくれるかもしれない、という期待もあってのことです。じっさい、私もBBSなどで他の人が落とした小ネタを生かして書いたこともあるし、さらには某所での企画(何年前だか...?)で私は「図書館レイちゃん」なんてお題だけ出して、自分は書かずにバックレたのに、その時のお題で書いた人が複数いたという事実を最近知ってびっくり、なんてこともあります。小ネタを非商用のエヴァFF限定の「パブリックドメイン」として公開して、使いたい人はどうぞというのもありかと思うわけです。ここの小ネタを展開してお話を書かれた方は、綾波展までメッセージをお寄せください。


2010.6.15.

るん るん るん

うららのきわみの ひるさがり

ちびレイはごきげんだった

すきっぷとわ こうするのだ

 

るん るん るん

る〜〜〜〜〜〜ん!!

おもいっきり じゃんぷしたの

 

こけてしまった ちょっといたい でも

ゆんしょ

 

はずみをつけて

るん るん るん

る〜〜〜〜〜〜ん!!

できた ちょっとすごいかも

 

あたしの かみのけと おそろいの あおいそら

おそろいの わんぴーす

げんどうぱぱが かってくれたの

げんどうぱぱは とてもやさしい

 

レイよ おまえは やがてむにかえるのだ

なんのことか わからないけど

いいないいな はやくむにかえりたいな

 

ごきげん れいちゃん

 

【初出:オリジナル綾波展BBS。「エヴァ歳時記」風に見ると、「2007年・3月」くらいになるのかな?】

 


2010.6.16.

デトロイト・メタル・シンジ

「優しげな青年がデスメタルのカリスマに!」なんちて...着想だけ。私は音楽は聴くだけで、バンドやった経験とかないんで、スラスラと話が出てこない。これなんかは、「誰か書いてぇ!」というネタです。

例えば、こんな感じになるのかしらん?(ベタでスマソ)

 

 ステージを瘴気が満たす。デニム&レザーにシルバーメタリックの正装で固めた客たちは酸欠もなんのその、ちぎれて飛べよとばかりに首を振りまくる。デスヴォイスで客をさらにあおるシンジ。

「Wanna have more heavy sh*t?!」

 客席からの咆吼を圧するように、ダウンチューニングしたギターが禍々しいリフを放った。

「Mother f*ckers、このくらいは知っとけ。If you listen to fools...」

 咆吼が異様なまでに高まった。そうだ、このリフは。

「The mob rules!!」

 そうだ。ロニーのサバスだ。全員が「メロイック・サイン」を高々と突き上げる。

 と、そのとき。

 PAが何やらあわてて合図を送ってきた。へ? とシンジはそっちをつい見つめる。デスメイクは間抜けな顔をしてもバレないからこんなときは都合いいのだ。

(エヴァ、緊急出動って...)

 まずいよな、こんな時に。どこに使徒が出たんだろ、なんて思ってもしょうがない。

 

 んで、なんだかんだでステージ衣装のままエヴァに乗ってしまうシンジ。発令所では、「プププ」(マヤ)、「お前には失望した」(ゲンドウ)、「逝きなさい、シンジ君」(ミサト)とかなんとか。そんでもって、何かの間違いで(ケンスケの悪戯とか)エヴァのプラグ内の画像が外部に漏れてしまったり。

 

「クラウザーさんがエヴァに乗ってる!」

「暴走?」

「つかクラウザーさん使徒を喰ってるし」

「まさに悪魔か」

 

【ここが初出。書いたのは今日。いやー、ハチャメチャ話って、難しいわ(苦笑)】

 


2010.6.19.

 いまは亡き中原中也が言った
「海には人魚はゐないのです
 海にゐるのは
 あれは波ばかりです」

 

−−こんな出だしの詩があります。「いまは亡き」のあとに別の名を入れることで、色々に展開できるでしょう。ふと、この詩句は「綾波レイ」によせる想いと重なるものがあるように感じられました。だから。

「エヴァにはレイはゐないのです
 エヴァにゐるのは
 あれは想ひばかりです」

 

−−「波」を「想い」と置き換えるのはいかにも凡庸ではありますが、偽らざる気持ちといえましょうか。この詩の結末はちなみに、パロディーにすらいくらかの面白みをあたえる滋養があります。

 

 いまは亡き某が遺した
 想ひといふ言葉はレイになった
 レイといふ言葉は
 想ひになった

 

【ここが初出。書いたのは2002年くらい?エッセイめかしたストーリー性のないお話でも書ければと思った時期がありまして。その時のメモの断片です】

 


2010.6.20.

 ひさびさの星空だった。

 少女はていねいに短冊を結ぶと、空を仰いだ。笹の枝は手に入らなかったが、小ぶりの立木は、それなりに役目をはたしていた。

「何をお願いしたんだい?」

 銀色の髪の少年が、いつもの微笑をたたえてたずねる。

「...世界中の人が、幸せになりますように...」

 少年は、わずかに寂しそうな表情を浮かべると、短冊を手にとった。

「そうだね」

 二人の眼前には、赤みがかった琥珀色の海が、無言で波打っていた。

 いつまでも。

 

【初出:オリジナル綾波展BBS。「エヴァ歳時記」風に見ると、パラレルワールドの「2016年・7月」。念のために蛇足をつけとくと、「EOE的な、人類みなLCL化したままの世界に二人だけ残ったレイとカヲル」という設定の断片です】

 


2010.6.23.

ユービックEVA

400字原稿用紙換算で約400枚、400K強、1回16K(8000字相当)見当で26回連載なんちて。

不活性者=ATフィールド能力。

ユービックスプレー、ユイさん登場、チルドレン(候補者)が次々にやられる、レイは残る。

 

【ここが初出にて、補足。書いたのは...って書いてないわ(w:元ネタはP.K. ディック「ユービック」。ディック自身による「映画版シナリオ」も出ている。原作は、超能力者バトルを思わせる導入部から始まる。アクティブな能力の発揮を押さえ込む力をもった「不活性者」たちが火星に集められ、バトル開始と思われたところで、先制攻撃に巻き込まれて、なぜか退行と崩壊をつづける世界の中でさまよう、という話だったよな。

一人、また一人と仲間を失う一方で(ケンスケ、トウジ、etc. 本編に出ないマナとかムサシのようなゲーム限定のキャラも、数合わせに使えるかもしれない)、あちこちに出現する「ユービック」の象徴。世界の崩壊感覚は新劇場版が出る前のエヴァと通じるものがある。ユービックによって人々を助けようとする、少女性をもちつつ「聖母」のような存在はユイでもありレイでもあり。仕事の依頼人であり、最初の死者(と思われた)ランシター社長はゲンドウの役回りか。ネタバレになるが、半生者たちの生気を食い荒らす悪魔的存在の少年=カヲルと配置すると、ユイ(レイ)対カヲルという構図も作れる。ディック作品の主人公のヘタレぶりというか受け身ぶりは、(新劇場版以前の)シンジと何となくかぶる。

この種のクロスっぽい話だと、「(火星に植民地があり、超能力者たちが能力を生かして仕事を得ているような)ディック作品にエヴァキャラを出した話」なのか、「(使徒がいてエヴァがいて、人類補完計画が動いている)エヴァ世界でユービック的イベントが起きる話」なのか、重点の置き方でだいぶ方向が違ってくる。前者だと、あまり面白くないかも。後者だと、アニメ本編をなぞる形でやるより(使徒戦とのからみがうまくいかなくなる恐れあり)、使徒戦の終盤になってディック的な世界崩壊を引き起こす特殊能力をもつ使徒が登場するとか。あるいは不発に終わった補完計画の代わりに、いろんなものの退行が起きる。

しかし、二つの既存作品をもとに多少なりともオリジナルなところのある話を作って、長編小説の形で書き上げるのはどう考えても能力限界を超えているので、これはお手上げ。とりあえず、早川SF文庫の「ユービック」を読んで(読み直して)妄想をふくらませてみてください】

 


2010.6.27.

2020年のスノーボール

 

 ジルベスター。一年の終わり。死と再生のとき。

 唐突に、ネルフ・ユーロ支部のアスカから招待状が届いたのは11月も末だった。

 二人にとっては、初めてのドイツ、いや初めての海外だった。「あの時」から、行動の自由には制限がかかっていたこともある。だがそれは、毎日をせいいっぱい生きることが何より大切だということを知ったからでもあった。

 だから、アスカからの招待には喜んで応じた。彼女は「今」の自分たちと直でつながっている仲間だったから。

 ベルリンの空港は風花が舞っていた。2015年ころには完成予定だった新国際空港は、使徒戦とその後の混迷による遅延のため、昨年開港したばかりだった。

 だが、ICEにのり、内陸部へと走ると、風花は本格的な雪となっていた。平野部は枯れ草色からやがて白一色へと変わっていた。

 一時間半ほどで短い旅は終わった。途中、キップのチェックに車掌が来たらどうしようかと、内心シンジは不安だったが、とりあえず微笑んでキップを見せるだけで事足りた。

 ドイツの冬はすぐに暗くなる。だが駅を出ると、つもった雪とイルミネーションで駅前の情景は明るく見えた。

「日本とはずいぶん違うね」

「雪...とても、きれい」

「なんか、綾波みたいだ」

(白い色。わたしと同じ)

 レイはそっと手をのばす。手のひらに触れて、やがて溶け出していく結晶。あまりにはかない感触。

(冷たい...これがわたし?)

「行こう、アスカたちも待ってるよ」

 そう言いながら、シンジは携帯を取り出した。暖かい声。

(いえ、溶けだしたのはわたしの心

 この人と生きるために、ヒトになったわたしの心)

 

 それから、アスカの案内で二人はドイツ観光を楽しんだ。古都ドレスデンはセカンド・インパクトの時に大戦時にも匹敵する被害を受けたが、輝きを取り戻していた。冬枯れの中、マイセンの郊外を散策した。シンジのリクエストで、ゲヴァントハウスでは第九を聴いた。そして、今日は今年最後の一日。

 アスカのおごりで遅めのディナーを済ませて、気がつけば午後11時40分。とりあえずシンジとレイの宿舎まで送っていくことを引き受けたアスカだったが−−

「ヤバイわっ。あと15分しかないじゃない」

「えっ?街中で新年を迎えるのもヘンはないと思うけど...にぎやかで楽しいんじゃない?」

「あんたバカあ?ドイツではねえ...どーでもいいわ。とにかく、あんたたちのホテルに案内なさい!連れてかないと、殺すわよっ」

 宿舎まではすぐだった。すでにストリートには酔徒が群れていた。早足だったので、軽く人にぶつかったりもしたが、「Alles klar!」の一言で済んでしまった...ようだった。その言葉がどんな意味か、シンジにもレイにもわからなかったわけではあるが。

「セ〜〜〜〜〜〜フ!!」

 アスカが転がり込むように宿舎のフロントにたどりつく。11時52分。駅前のにぎやかな区画と住宅街のちょうど境目にあるゲストハウスだった。

 

【ここが初出。書いたのは2002年ころ、ドイツにいた時のことをふと思い出して書いたものです。この後、アスカと合流してからを描いて、自分が見聞したドイツのクリスマスとか大晦日とかの情景を組み入れてにぎやかすつもりだったんですが、未完。ストーリー性なしで、ほんとのショートショートならあと10行くらい足せばいけるか?】

 


2010.7.9.

 そのまた十年前−−

<繰り返し、お伝えします...>

 場末の食堂。テレビには喪服姿のアナウンサー。

<...が崩御されました>

 老いた酔漢が、呻くような声をあげる。

「暑かったな、あの日は−−」

 聞く者はない。やがて男は、不味そうに定食に箸を運ぶ痩躯の青年に絡み始める。

「それがどうだ、皆のうのうと我が世の春なんぞ謳歌してやがる」

 ちらりと青年は酔漢に陰険な目線をくれるが、すぐに定食の焼き魚に戻った。

「学生さんだろ、あんた。今時の若いもんは、苦労を知らない。何が平和だよ。何百万人死んだと思ってんだ。オレの兄貴は、三人とも南方で玉砕したんだ」

 ドン、と酔漢はテーブルに拳を叩きつけた。青年の卓上の味噌汁がこぼれる。

「それは犬死にでしたね」

 顔色一つ変えずに青年がぼそり、と言った。

<...年末から、成分輸血を続けていましたが...>

 冷え冷えとした緊張が店の中を走った。酔漢の目が殺気をおびた。

「あんた、もう一回言ってみな」

「聞こえませんでしたか?犬死にでしたね、と言ったんです」

 次の瞬間、強烈な張り手が青年を襲った。

「この野郎!」

 

 後かたづけをしながら、店の主がため息混じりに青年に言う。

「六分儀さん、いくら何でも、あんな物言いはするもんじゃないよ」

 青年は沈黙でもって答えた。

「オレの親父もそうだった。フライパンより重いものなんて持ったことない食堂の親父が、乙種合格でな。満州で逃げ遅れて、ソビエットの落下傘部隊に捕まって、それっきりさ...」

 青年は無表情に言葉をしぼりだす。

「死は何も生みませんよ」

 それだけ言って、青年は財布ごとカウンターに置くと、店を後にした。

 

「ったく、強情な男だな」

 店主は見ていた。テレビで流される過去の映像−−燃え上がるトウキョウを、死屍累々たるオキナワを、地獄の劫火のヒロシマを、天主堂の焼け焦げたナガサキを、青年が陰惨な情念のこもった目でじっと見つめていたことを。

「ケッ、これで昭和も終わりかよ...」

 

【初出:オリジナル綾波展BBS。「エヴァ歳時記」風に見ると...ま、言うまでもないですね。Frame by Frameでユイと冬月・ゲンドウが出会った年を描いた後で、そのまた十年前、とやろうかと思ったけど、場違いな感じがしたんでお蔵入りになった断片です。】

 


2010.7.9.

 わたしを見て。ずっと見ていて。

 

 アスカがいつもそう思ってたのは知ってる。けれど、同じ言葉を綾波から聞くなんて、予想してなかった。

 たった一人の綾波。だから、僕は即答した。もちろん、綾波だけをずっと見ているよ、って。

 

 後ろをふり向かないで。あの場所には、何もないから。あってはいけないから。

 

 そう。僕も同じ気持ちだ。「二人きりの世界」とか、冷やかされるけど、二人の絆があって、初めて僕たちでいられる。

 あの場所には、何もない。全てが終わったあと、僕たちを必死でみんなが守ってくれた。監視はつづいているけれど、静かな日々だ。

 

 何を見てるの?

 

 君の横顔を。恥ずかしがりながら、つけるようになった白銀のピアスが、透き通るような肌に映えているから。

 高校に入り、新しい仲間もできた。みんな、ガールフレンドの話をしたり、にぎやかだった。中には、僕なんかに声をかけてくれる女の子もいた。

 もちろん、僕は交際をことわった。「ごめん」とだけ言って。

 

 他の女の子は、眼に入らなかった。

 

 本当だ。文字通り、見えないんだから。

 

 何かの本で、失認症という言い方を見たことがある。ものが認識できなくなる病気。僕は、それにかかっているのだった。「顔」がわからない。名前は頭にある。だけど、顔の部分が空白で、記憶に残ってくれないんだ。

 そう、僕は綾波だけを見ている。

 

【ここが初出。書いたのは2007年あたりか。脳科学の本か何かを読んでいて思いついた。しかし、ごらんの通りアイデア倒れです(苦笑)。ストーリーの展開が思いつかなくて。パブリックドメインですゆえ、接ぎ穂していただければ素敵。】

 


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