EVANGELION++ ( Prologue )

One More Final of EVANGELION Plus


ミサトのマンションのベランダにて…
満天に輝く星を見上げながら、レイは考えていた…。

(私の…願い。
…私の…夢?
私…夢を見ていいの?
嬉しい…。
私も夢を見れるのね。
私の夢…。
碇くんと…ずっと一緒に生きてゆきたい。
そう…碇くんと…)

レイはその想いで胸がいっぱいになり、思わずシンジの手をギュッと握り締めていた。

手を握る力を感じたシンジは、自分を見つめるレイの熱い眼差しに気付き、その少し潤んだ美しい紅い瞳につい見とれてしまう。

(綾波…)
(碇くん…)

そのまま見つめ合っていたふたりだったが、シンジは、ふと、リビングが静まり返っているのに気がついた。

嫌な予感に振り返ると、そこには興味津々と目を輝かせてガラス戸に張り付いている友人達と、その後ろでニヤニヤしている大人達がいた。
あまつさえ、ケンスケに至ってはアスカの指示でビデオまで回している。

慌ててレイから離れるシンジ。
「ひっ酷いよ!!黙って見てるなんて!!」

情けない顔で抗議するが、アスカが反撃する。

「も〜!じれったいわねぇ!!
キスのひとつもしてあげればいいのに!」

「えぇっ?」
真っ赤になるシンジ。

レイは瞬時には反応できなかった。
(キス…口付け…好き合った男女がお互いを確かめ合う行為。
…恋人同士の?)
顔に血が昇るのを感じるレイ。

シンジがチラッとレイの方を見ると、レイも顔を真っ赤にしてうつむいてしまっていた。

(うっ…かわいい…)
そんなレイを見て、更に赤くなるシンジ。

「せっかくアタシが教えてあげたってのに!」

だが、そこでアスカがとんでもないことを口走ったので、今度は青くなるシンジ。
「アスカ!?」

「あ…マズ…」
追い打ちを掛けようとして墓穴を掘ったことに気付くアスカ。

一瞬、シーンとなる。

「あら、シンちゃん、意外とやるわねぇ。アスカにも手を出してたなんて」
茶化すミサト。

アスカは慌ててフォローしようとするが、
「や〜ね!キスしてあげれば喜ぶわよって教え…」
「ちっ違います!あれはアスカが!!」
同時に今度はシンジが墓穴を掘る。

「あっ…あんたバカぁ?!どーしてそう気が回らないのよ!このバカシンジ!!」
アスカが怒り出す。

「あら、やっぱり、やっちゃったのね、アスカと。
でも、キスだけだったのかな〜?シンちゃん?」
と、更に引っ掻き回すミサト。

「「えっ?!」」
ハモるシンジとアスカ。

「据膳喰わぬは男の恥、って言うからな」
こちらは加持。

「なっなななに言ってるんですか!そんなことするわけないじゃないですか!!」
「そ〜よ!変な想像しないでくれる!?」
ふたりは反論する。

「ふ〜ん?怪しいなぁ…」
ニヤつくミサト。

アスカはケンスケの方をチラッと見るが、ケンスケはうつむいていて、メガネで表情が読めない。

不安になるアスカ。
今度はレイの方をチラッと見る。

レイはアスカをじっと見つめているが、表面上は無表情に見える。

「はぁ…」
アスカはため息をひとつ付いて、話しはじめる。

「ま、確かにシンジとキスしたわよ。一度だけね。
でも、シンジが好きだからってわけじゃないの。まぁ、嫌いでもなかったけどね。
ごめんね、シンジ。あれ、加持さんへのあてつけだったの。
あの後、アタシ、洗面所に駆け込んだでしょ?
うがいなんかして見せたけど、ほんとはアタシ、顔見られたくなかったの。
自分でもすごく嫌な顔してるって解ったもの。
バカみたいよね。
ごめんね、レイ。シンジのキス、奪っちゃって…。
ごめんね…」

最後の「ごめんね」はケンスケに対してだった。

うつむいて黙り込んでしまうアスカ。


沈黙を破ってシンジが言う。
「アスカ、もういいよ。
ぼくだって、あの時は、意地張ってムキになっちゃってたんだし…」

追うようにレイも言う。
「私も、気にしないわ。
大切なのは、心のつながりだから…。
今、碇くんは、私を見てくれているから…」

(心のつながりのメンテナンスや、その絆を更に強める為に肉体の関係を必要とすることもあるのが、人の弱いところだな)
そう思う加持だが、彼らはまだ14才である。
(若いな…)
微笑ましく感じる加持であった。

ずっと黙っていたケンスケが口を開く。
「そうだね、大切なのは、今。そして、これからってことだよね。
アスカ、もう、そんなこと、気にすることないよ」
笑顔で言う。

「ケンスケ…」
つぶやくアスカ。

そして、明るい表情を取り戻して、はずむように言う。
「うん!ありがとう」

「いいわねアスカ。護ってくれる王子様がいて」
今度はリツコがアスカをからかう。

「な…何よ、その王子様って…」
怪訝な表情のアスカ。

リツコがいたずらっぽい表情で言う。
「あら、眠り姫の目を覚ますのは王子様のキス、
ってのが昔からの相場じゃなくって?」

「なっ!」
真っ赤になるアスカ。
「みっ…見てたの?」

「あの時点ではアスカはまだ弐号機パイロットだったんだし、
保安上、監視カメラは必要だったのよ」

そこで意地悪そうな笑みを浮かべるリツコ。
「録画も残ってるわよ」

「「ええっ?!」」
今度はケンスケとハモるアスカ。

「そんな恥ずかしいディスク、すぐよこしなさいよ!
プライバシーの侵害よ!」
えらい剣幕のアスカ。

ケンスケも珍しく顔を真っ赤にしている。
「うう…撮られる側の気持ちが、初めてよく解ったよ…」
(隠し撮りはもうやめよう…)
と、その時「は」思ったケンスケだった。

(いったい、どんな恥ずかしい絵が撮れてたんだろう?
まさか、あんなことやそんなこと…)
思わず想像してしまうシンジだった。
(うっ!だめだ!
想像しちゃだめだ!想像しちゃだめだ!想像しちゃだめだ!)

シンジの様子に気づいたレイ。
「どうしたの?碇くん?
鼻血、出てる…」

「えっ!いや、何でもないんだよ。
ははは…」

慌ててごまかすが、ミサトは見逃さない。
「うんうん。シンちゃんも、おっとこの子だもんね〜」

「ちょっと、バカシンジ!なに想像してんのよ!
もぉ、信じらんない!!」


そんな騒ぎが夜遅くまで続く、ミサトのマンションであった。


And this is a prologue of EVANGELION++.

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