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綾波補完委員会・競作企画参加作品

  

「夜空に願いを・・・」              作:yosi

 

 

これは、ミサト宅にアスカちゃんとシンジ君が、まだ一緒に住んでいた頃のお話し。

 

 

「・・・はぁ。まったくアスカのわがままにも困ったよなぁ。

 こんな夜に『シュークリームが食べたいから、すぐ買ってくるのよ!』だもんな。

 う〜ん、やっぱり売り切れか。

 仕方ない、向こうのコンビニに行ってみよう。」

 

 

 

 

「肉を使ってないお弁当はないの?」

 

「すみません。もう売り切れちゃったんですよ。

 いつもの『栄養バー』なら、ありますけど。」

 

「・・・そう。でも、今日は買わないわ。」

 

 

 

 

「・・・ダメか。ここにも無かった。生菓子は夜、入荷しないのかな?

 仕方ない・・・確か、この先にもう一軒コンビニがあったよなぁ。」

 

 

シンジは、アスカの厳命によってコンビニを探し歩いていた。

こんな夜に、シュークリームもヘチマないものだが、そんなわがままを

断り切れないのが、彼の良いところでもある。

しかも、ただのシュークリームではない。

カスタードクリームとホイップクリームの2層になっていて、当然ビックサイズのものだ。

左の頬が心持ち赤いのは、『夜中にお菓子食べると太・・』と余計なことを

言いかけて、アスカに叩かれたせいであろう。

 

 

 

 

「肉を使ってないお弁当はないの?」

 

「ええと、今残ってるのは、牛丼弁当と三食そぼろ弁当だけですね。

 あとは・・・冷凍食品ならいくつかありますよ。」

 

「・・・ダメ。電子レンジ、持ってないもの。」

 

 

レイは、夕飯を買うためにコンビニを探し歩いていた。

ほぼ毎日コンビニ通いをしているため、バイトの店員達からは『青い髪の天使』と

噂されている。

普段は、固形栄養食しか買わないのだが、今日は違っていた。

昼間、学校でシンジにこう言われたためである。

 

  『・・・もうちょっと、ちゃんとした食事じゃないとダメだよ。

   身体に悪いと思うよ・・・あ、綾波のこと心配だし・・・」

 

 

そういうわけで、レイはお弁当を探していた。

彼女にとって、『もうちょっとちゃんとした食事』はコンビニ弁当くらいしか

思いつかなかったのである。

”自分で食事を作る”、”外食する”というのは彼女の理解の範疇外にあった。

 

 

 

 

「・・・ずいぶん遠くまで来ちゃったな。

 あのコンビニで売ってなかったら、あきらめよう。

 これだけ探したんだもの。でも、アスカ、わかってくれるかなぁ。」

 

 

 

 

「・・・もう一軒だけ・・・」

 

 

 

 

 

 

二人の家から、ずいぶん離れた場所。

徒歩でも20分はかかる距離である。

 

 

「・・・よかったぁ。やっと見つかったよ。

 これでアスカに怒られなくてすむかな。」

 

シンジは、安堵のため息をつくと、シュークリームを持ってレジに向かう。

 

 

「綾波っ!」

 

「!」

 

「こんな遅くにどうしたの? ここって綾波の家からも

 結構遠いんじゃない?」

 

「・・・い、碇君・・・ホントに碇君?」

 

 

レイは、やっと見つけた『いなり寿司弁当』を手にしたまま、呆然としていた。

お弁当を見つけたとたんに、シンジに会えたことが信じられなかったのである。

それは、彼女にとっては偶然ではなく、必然と感じられた。

 

 

「それ、今日の晩ご飯なの? 昼間言ったこと気にしてくれてたんだ。

 ・・・でも、そんなんじゃ・・・

 よ、よかったら、今度、僕がご飯作ってあげようか?」

 

「・・・・・」

 

「嫌かなぁ・・・変なこといってゴメン。」

 

二重のショックを受けたレイは、俯きながらもなんとか言葉を紡ぎだした。

 

「・・・そんなことない・・・私、碇君のご飯が食べたい・・・」

 

 

 

 

「とりあえず、レジ行こっか。」

 

二人はそろってレジに行き、別々にお金を払った。

コンビニを出てもまだレイは、わずかに頬を染めて俯いていた。

 

 

そんなレイを見て、シンジは思った。

 

 

 

「遅いから、家まで送っていってもいいかな?」

 

こんなことまで許可を求める疑問形で話すシンジは、はたから見ると

情けなかった。

が、しかし、レイにとってそれは至高の言葉であった。

 

 

「・・・・・」

 

「やっぱり、嫌だよね・・・ゴメン。でも、女の子一人じゃ心配だし・・・」

 

「・・・お願い・・・するわ。」

 

 

 

 

コンビニから、レイの家までの帰り道。

昼間なら距離も周囲の景色などで気にならないが、夜の単調な道は静寂に満ちていた。

しかも、レイはコンビニを出てからずっと黙ったままである。

耐えきれなくなったシンジは、レイに何か話しかけようと考える。

 

「星、きれいだね。」

 

「えっ。」

 

「星だよ。今までじっくり夜空を見るなんてこと無かったし。」

 

 

そういわれてレイも夜空を見上げる。

戦いが終わって、徐々にビルも再建されつつあるが、まだ街の光は弱かった。

 

「そう。・・・私は時々見るわ。」

 

「綾波って、お月さまが似合うよね。なんか、静かな輝きって感じがしてさぁ。」

 

「・・・何を言うのよ。」

 

「ゴ、ゴメン・・・

 でも、平和になって良かったよね。もうエヴァに乗らなくてもいいし。

 僕たちにも未来があるんだって気がするんだ。」

 

「・・・未来・・・」

 

「そう、未来が。って、何かキザだよね。ハハハ・・・」

 

 

 

 

一人で歩けば長い道のりも、二人で歩くと短く感じられる。

 

やがて、レイの住むマンションが見えて来た。

 

レイの頭の中では、シンジの言った言葉がメリーゴーラウンドのように回っていた。

 

 

いったいどんな本を読んだのか、レイの思考は大きく筋道をはずれていった。

 

 

二人は、レイのマンションに着いた。

深夜のシンデレラにも終わりを告げる時が来る。

 

「じゃ。おやすみ。」

 

 

「あっ。碇君。あ、あの。」

 

 

「ん? なに?」

 

 

「・・・ありがとう。」

 

 

「いいよ。気にしなくてさ。」

 

 

「碇君っ! わ、私の下着を洗ってくれる?」

 

「別に良いけど。じゃ、明日にでもうちに持っておいでよ。

 乾燥機もあるから大丈夫だよ。それじゃ、また明日ね。」

 

 

 

 

そして、彼女は一人、部屋の中で至福の笑みを浮かべる。

 

 

 

 

そして、少年は一人、暗い夜道で困惑の表情を浮かべる。

 

 

女性の下着を洗うことに何の違和感も、不思議も持たないシンジであった。

 

終わり      

 

 

 


yosiさんへ感想メールを送って下さい!

Received Date: 97.11.20


yosiさんのコメント:
特急で書き上げたものです。ミステリータッチはいつもより弱いですが、
落ちはまあまあでしょうか。ラブラブな話しってどうも難しい。

mal委員長のコメント:
yosiさんに突発的に(^^;、競作作品投稿していただきました!!
ありがとうございます!!綾波サイトに限らず(^^;投稿なさってる方ですが、
「愛の形」シリーズ(Freedom in Dreamlandの愛のN2地雷劇場(^^;コーナーです)
は爆笑!!、あーいうのをミステリータッチというのでしょうか?
この作品もラブラブなんだけど、ヒネリが効いてますね
『お味噌汁作って下さい』でめぞん一刻思い出したのはわたしだけか?(^^;
よろしければまたなにか書いてくださ〜〜〜い

常連の方に一言、yoshさんでなくてyosiさんだから(^^;

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