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ぱたぱたの(六)

Written by XXXs

ここは NERV技術部内のマヤの仕事部屋である。
作戦が無い時はマヤはこの個室で仕事をしている。機密事項を扱うことの多い技術部のスタッフは全て個室がもらえるのだ。

使徒が来なくなった今、定期訓練以外で発令所が使われることはなくなってしまった。

「ああ…先輩…どこへ行っちゃったのかしら…。
 あら、メール?…!!緊急度A?」

端末の画面の隅に点滅する着信インジケータを見て慌ててメールを開いてみるマヤ。

『リツコです。
 実験中の事故により、初号機のコアに閉じ込められてしまったの。
 あなたの助けが必要だわ。
 添付のデータを MAGI に渡してサルベージ計画を立案させて。
 くれぐれも極秘でね。特にユイさんには。
 あなただけが頼りなの。お願い…』

「せ…先輩…どこに行っちゃったのかと思ったら、そんな所に…。
 解りました。不肖伊吹マヤ、必ずや先輩を助けてみせます!!」

端末の前でガッツポーズを取るマヤだが、壁を隔てた通路には…。

ぱた…ぱた…

「甘いわよ、リッちゃん」(ニヤリ)

とゲンドウ笑いを浮かべるユイの姿が有った。


その頃、レイとシンジは…
レイの部屋で…

「どうかな?それ、はじめて作ってみたんだけど…」

「うん…美味しい…これ…好き…」

ぱたぱた…

(あ、この羽の動かし方は、ほんとに喜んでるんだ。
 綾波は気付いてないみたいだけど、羽の動かし方でどう感じてるのか解っちゃうから可愛いな)

「良かった、気に入ってもらえて。沢山作ったからどんどん食べて」

「うん、碇くんも…」

「うん、いただくよ。あ、それ、とってくれる?」

「…これ?…はい」

「ありがとう。これも美味しいよね」

「…ちょっと、しょっぱい…」

「ご飯のおかずにちょうどいいんだ。
 ミサトさんは酒の肴にちょうどいいって言うだろうけど(苦笑)」

「これは…どう作るの?」

「じゃ、後で作り方教えてあげるよ」

「うん…ありがとう…」

ぱたぱたぱた…

ふたりだけの平和な夕食時を過ごしていた。


再びマヤにカメラを戻そう…
メールに添付されたデータを調べるマヤ。
「このデータ…これって、先輩の趣味なのかな?う〜ん、ま、いっか」

って、なんとなく不安だが、マヤに任せておいて大丈夫なのだろうか?(^_^;)

仕事そっちのけで早速準備を整えたマヤは、これまた特権コードを発行してMAGI の CPUtimeを占有。極秘のサルベージ作戦を敢行した。

「お願い、成功して!」
必死に祈るマヤ。

コアが赤く光り、人影が現れる。

「せ…先輩…」

ぱたぱたぱた

「く…ふふふふふふ…やったわ!!成功よ!マヤ!!帰って来たわよ!」

ぱたぱた…ぱた…

「って、あれ?おかしいわね、羽…じゃないわ。これ…尻尾じゃない!!
 しかも狐の?ああっ!耳まで生えてる?!な…なんで??」

リツコのこんな情けない顔はめったに見られないが…かわいい(*^_^*)。

「先輩…可愛いっ!!」
ガバッと抱きつくマヤ。

「かわいい!かわいい!かわいいっ!!」
思わずスリスリスリと頬擦りしてしまう。

「ちょちょちょっと、マヤ、落ち着きなさい!
 一体どうしてこんな事に?あのデータ、ちゃんと使ったんでしょうね?」

「(はっ!)あ、ごめんなさい。
 えっと、ええ、先輩のメールに添付されてた奴ですよね?
 その通りになってますけど?」

リツコがよくよく自分の身体を見直してみると、確かに計画通り若返ってはいたが、どう見てもミドルティーンの身体つきだ。どうやらシンジ達と同年代まで若返ってしまったようだ。
しかも、羽根ではなく金色の毛並みの狐の尻尾と耳付きで。

「ああっ!胸もペタンコ!!(;_;)
 なんて事、これじゃ、あの人にせまるにしても…
 はっ!まさか、ユイさん?!しまった!!やられたわ!」

バシュ!

その時、内側からロックしてあった筈のドアが開き、ユイが入って来る。

ぱた…ぱた…ぱた…

「ふふふ…リッちゃん、可愛いわよ」

「あ、ユイさん…」
悪戯を見つかった子供の様に身を縮こまらせるマヤ。

「くっ…く…うくっ…ふ…ふぇえええ…」
悔しさと情けなさの混じった、なんともやるせない気持ちに、泣き出してしまうリツコであった。


その頃、レイとシンジは…
「さ、明日のお弁当の下ごしらえも出来たし、ぼく、そろそろ…」

「お風呂…」

「えっ?」

ぱた…ぱた…

「お風呂、入る?」

「いっ、いや、ぼくは…」

「羽…手が届かなくって、うまく洗えないの…」

「そ、そう…」

「だから、手伝ってくれる?」

ぱた…ぱた…ぱた…

(うっ…そんな、そんな目で見られたら…断れないよぉ)
「う、うん。いいよ」

(にこっ)「良かった…」

ぱたぱたぱた…

をいをい、ちょっち平和じゃなくなってきたぞ(^_^;)。


本部内通路
ぱたっぱたっぱたっ
と楽しげに羽を動かしながら、満面の笑みを浮かべて歩いているユイ。

「ぐすっ…すん…」
素肌に白衣を羽織っただけのリツコがその後をとぼとぼと着いて行く。

「…先輩…」
そのリツコの背中に気遣わしげな視線を向けながら、一番後ろを歩くマヤ。

その時、ちょうど前方からミサトがやってきた。
「あら、ユイさん…??あれっ?その娘は?
 どこかで会ったような………って、アンタ、リツコぉ?!」

サルベージの際に地毛になってしまった金髪に、太く黒いまゆ毛と目元の泣き黒子。
狐耳と尻尾が生えているが、その少女は紛れもなくリツコの面影を見せていた。

目を剥くミサトから逃れるようにユイの影に隠れたリツコは、なさけなさそうに上目遣いでミサトを見ると、コクリとうなずく。

それにしても若い、若すぎる。おまけに可愛い。裏切られた気分だ。
ミサトの心に理不尽な怒りが沸き上がる。

「リツコぉ〜!なんてずるい!!
 女の友情は所詮そんなものなのね!
 裏切ったのよ、私の気持ちを裏切ったのよ!!」

酔っぱらってんのかミサト?アルコールは入ってないようだが。

「ミサトぉ…それはないでしょ…。
 予定ではマヤくらいの肉体年齢のはずだったのに…」
と言いながら、チラリとユイを見る。

「ふふ…」
ユイは楽しげに目を細めてリツコを見返す。

「ひっ」
思わず身をすくめるリツコであった。

気持ちが落ち着いたのか、ミサトはしげしげとリツコを眺める。
「ふ〜ん?似合うじゃない?その耳と尻尾。アンタらしいわよ。
 ぷっ…くくく。ぎゃはははは!!」

「くっ!ミサト…覚えてらっしゃい…」
うらみがましい目でミサトをにらみつけるリツコ。

「あ〜ん?ミサト、何騒いでんのよ?」
今度はアスカが現れた。未だにリツコを探して本部内をうろついていたらしい。
「ところでさ、リツコ見なかった?ちょっと用があるんだけど」

そう言うアスカに「くっくっく」と息を切らせながら目の前の金髪黒眉の少女(狐耳しっぽ付き)を指差すミサト。

「へっ?はぁっ?!うっそぉ!!これ、リツコぉ?!
 でも、なんでそんなに若返っちゃったの?
 前から怪しい怪しいと思ってたけど、やっぱ、リツコって、
 狐の妖怪だったの?!でも尻尾は9本無いわね??」

「くっ!アスカ…覚えてらっしゃい…」

(あっ!やば…リツコには頼むことがあったのに…)
「や、やだ、冗談よ。似合ってるわよ、それ。可愛いじゃん!」

全然フォローになってない。

「アスカちゃんも羽が欲しいんですってね」
ユイが優しい笑顔で声をかける。

「えっ?え、ええ…そうなんですけど…」
さすがのアスカも、シンジの母親の前だと思うと緊張するらしい。

「そう、シンジの気を引きたいのね」
柔らかな表情に、優しい声…。

「…はい。アタシ…このまま黙って引き下がるなんて、出来ません…」
珍しく素直なアスカ。

「ふふっ、可愛いわね、アスカちゃん。
 いいわ、手伝ってあげる…」

「えっ?ホントですか?!」
パッ!と明るい笑顔になるアスカ。

「もちろん!じゃ、早速、行きましょうか?初号機のケージへ。
 あなたたちも…あら?」

ユイが振り替えると、ミサトもマヤも、ついでにリツコも姿を消していた。

「やぁねぇ…せっかくみんな補完してあげようと思ったのに…」

お茶目なユイであった。


その頃、レイとシンジは…
お風呂場にて…

ちゃぷちゃぷ…((C)野見山 & masa-yuki ^_^;)

詳細はヤバいので自主規制(^_^;;)。


リツコの個室に逃げこんだ三人。
「恋は盲目って言うけど、アスカってば恐いもの知らずね。
 今ごろどんなことになっているやら…。
 あら、これもダメね。サイズが…(T_T)」

リツコは着る物を探していたが今の自分の身体に合う物が見つからない。
普段タイトな物を好んでいただけに、少しぐらいサイズが違ってもそれなりに見えるルーズな物の持ち合わせが無かった。

そもそも、尻尾が生えてしまっている為、パンツもはけない。

「Oバック…有ったかしら?」
ゴソゴソとロッカーを漁るリツコであった。

「アスカ、ごめんなさい、私、何もできない…」
アスカを置いて逃げ出してしまった罪悪感に打ちひしがれるマヤ。

ミサトは勝手にコーヒーを入れてくつろいでいる。
「ところで、リツコ、その身体、どうするつもり?」

「そぉねぇ…せっかくだから、シンジくんにでも迫ってみようかしら?」

ぱたぱたぱた

と、ふさふさのしっぽが嬉しそうに左右に揺れている。
リッちゃん、立ち直り早いね(^_^;)。

「で、でも…シンジくんにはレイちゃんがいるし、先輩には私が…」

「そうね。レイと張り合う気なら、やっぱ尻尾はあと8本必要でしょ」

「…あなた達…(-_-#)」


その頃、初号機ケージでは…。
ぱたぱたぱた…

「ふふふ…これでシンジは私が…って…な…何これ…コウモリの羽根?
 いっ…嫌ぁああああああ!!!!」

「くすくすくす…似合うわよ、アスカちゃん」

って、そりゃアンタの方が似合うわ!!ユイさん!!(>_<;)


To Be Continued ?

あとがき
何ちゅーか、本中華。<古い(T_T)

久々に「ぱたぱた」を書いてみたら、何か、ノリが変っちゃってるし…(;_;)。
元々電波物故、ご容赦ください。
って言うか、レイの出番が少な過ぎ!申し訳ない。

アスカファンとユイファンの皆さまにも…ゴメン(^_^;)。

でも、これで無事なのはミサトとマヤだけに…。


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