春の訪れ

Collaborated with XXXs and mal





季節のない、この街 だったけど

すこし 風はやわらぎ

樹木に 緑が ほころび出す

照りつける 太陽も

溶けたように 光線を ゆるめる

気候は すこしずつ 戻ってると いうことを

なんとなく 思い出す


「はぁ〜 やっぱり春なのかしら ねむ〜い」

「あったかいのよね〜 暑いんじゃなくてさ」

「お布団が恋しいわ〜」


すこし 早く来た 教室

なんとなく ひとり 窓の外を 眺めて

透きとおった 空の色と

ほころんだ 空気の中

ゆっくりと 眠気を 誘われて・・・・



「くちゅん!」


・・・・・・・


「くしゅ、くちゅん!」

・・・あ、あれ?・・・

「くちゅん!!・・ん、んん・・・」



振り返ると・・・蒼い髪の少女が

小さな手で、顔を覆っている。

よく見ると

目元も、くしゃくしゃにして

いつも まっすぐな 紅い視線も

ぼんやりと 溶けている ようで


おもわず、小さな 声で


「だいじょうぶ?」


彼女は 真白な ハンカチを とりだして


「ん・・・くしゅっ」


大丈夫じゃ・・・ないよね


「風邪? なら無理しない方が・・・」

「くしゅ・・・ちがう・・・と思う・・・」


なんだか 不安げな その表情に

ぼくも だんだんと 心配になって


「保健室、行った方がいいんじゃない?」

「・・・いい・・・私・・・帰るから・・・」


そう言って 彼女は

そそくさと 帰っていった


「綾波・・・大丈夫かな?」




「くしゅ・・・」



私・・・どうしたの?

頭の芯が・・ズッシリと重い・・・

目が・・痒い・・・

しきりに・・くしゃみが出る・・・


これは・・・もしかして・・過剰免疫反応?

免疫機能に・・障害が・・でているの?

・・・私の身体・・・もう・・・ダメなの?


・・・寒くないのに・・身体が震える・・・胸が苦しい・・

・・どうして?・・恐い?・・・そう・・私・・恐いの・・

今までは・・どんな怪我も、病気も、恐くはなかったのに・・・


・・・・・・

私の身体・・・そして・・こころも・・・

・・どうなってしまったの?・・

・・・・・・


もう・・代わりは・・無いのに・・・

・・私の身体・・・崩れてしまうの?・・・

・・・無へと・・還る時が・・来てしまったの?・・・

・・・死・・本当に・・居なくなってしまうこと・・


・・嫌・・・そんなの、嫌!!


まだ、私、みんなと一緒に居たい・・・

・・・碇くんと・・一緒に・・居たい・・・


赤木博士に、診てもらわなければ・・・



「んっ、くちゅん!」




綾波・・・大丈夫かな?・・・

彼女が見せた 不安げな表情

初めて見る その表情に

不安が つのっていく


カチカチ・・・


綾波・・まだインターフォン 直してないんだな

もしかしたら、寝ているのかな?

だったら・・じゃましないほうが・・・・



「くちゅん!・・・碇くん?」



わ!びっくりしたぁ・・

いつの間にか 後ろに彼女が立っている

その手に 5箱パックの

ティッシュと スーパーの袋を下げて


「ぐしゅ・・どうしたの?」

「その・・・お見舞いに、来たんだ。・・・綾波が、心配だったから・・・」

「・・そう・・入って・・・」



部屋に入ると、ぼくは

気になってた事を 聞いてみる


「あの、大丈夫なの?身体・・・

風邪じゃないみたいって、言ってたけど・・・」


「くしゅ・・

赤木博士に診てもらったの・・・

花粉症というアレルギーの一種だって・・・

伝染性は無いから学校へは行っていいって・・・

お薬、もらった・・・」


「じゃ、たいしたことないんだね?・・・良かった・・・」


「くちゅん!

・・・うん、ありがとう・・・」


彼女は そう言って

潤んだ紅い瞳で ぼくを見つめる



少し・・安心して・・あらためて見ると・・・

いつもより・・小さく見える彼女・・・

腫れぼったい目が・・何かを訴えているように・・・

なんだか・・とても・・魅せられて・・・

その・・赤くなった鼻も・・・かわいくて・・・


「あ、あやなみ・・・」

「・・碇くん?」


彼女はトロンとした目で・・ぼくを見ている・・

赤い瞳・・赤い頬・・赤い鼻・・そして赤い唇・・・


「・・かわ・・いい・・な・・」

「・・え・・」


いつのまにか・・ぼくと・・彼女の・・

視線が・・・からまって・・

二人の・・顔が・・

静かに・・近づいて・・・

彼女は・・そっと・・目を閉じて・・

心持ち・・顎を・・上げているようで・・・

そして・・くちびるが・・触れ・・



「ん・・くちゅん!」(ゴチ!)

「あがっ!」


いてて・・ひどいよ、綾波・・・

ヘッドバット食らわすなんて・・・


「あ、ごめんなさ・・・くちゅん!・・ぐしゅ・・」




翌日


あれ?・・・何だろう?・・・

鼻が・・・むずむず・・してくる・・・


「っくしょん!・・ふ・・っくしょん!」


「な〜によシンジ、アンタも風邪ぇ?

・・・そういえば、昨日、レイのお見舞いに行くとか言ってたわね。

まさか、お見舞いにかこつけて、風邪が移るような事してたんじゃないでしょうね?」

「なななな何言ってんだよ、アスカ、そそそんな事・・・っくしょん!」

「ふ〜ん?うろたえ方が怪しいわね・・・っくしゅん!・・あれ?」

「アスカ? あなたまで・・まさか・・・不潔よぉ!」

「ちょっと、ヒカリィ!? 何・・・くしゅん!・・何よこれ・・っくしゅん!」


ぼくだけじゃなく、アスカまで?

これが、花粉症ってやつなのか・・・

セカンドインパクト以前は

かなり流行ってたらしいけど

セカンドインパクト以降は

ほとんど発病者はいなかったらしい


「くちゅん!・・」


あ、このくしゃみは、綾波だ・・・

振り返ると 鼻を赤くして

目を潤ませた 彼女が

鞄を持って 立っている

「ぐしゅ・・碇くん、おはよう・・・っくちゅん!」

「あ、おはよう・・・っくしょん! はは・・・ぼくも花粉症になっちゃったみたいだ」

「碇くんも?」

「アスカもだよ」

「そう・・・っくちゅん!」

「・・・くしょん!」

「・・・くしゅん!」



その日から 教室の所々で

クシャミの声が絶えない日が しばらく続いた。

これが ぼくたちの 初めての

春の訪れの 思い出


・・なんか・・情けないけど・・・






「くちゅん!」


「あ、レイ、今年も始まった?きみはいつも一番早いからね」

「っくちゅん!・・・もぅ、毎年毎年嫌になっちゃうわね。シンジもそろそろよ」

「うん、ま、こればっかりは、しょうがないよ」


・・・今年も・・・春が・・・やって来たんだな・・・


「レイ・・覚えてる?・・・初めてきみが花粉症になった時・・・

ぼくがお見舞いに行った時のこと・・・」

「え!?・・えぇ・・・・」

くす・・また・・赤くなった・・・



でも・・そんなきみが・・

「ほんとに・・・かわいいよ・・・」



「もぉ、シンジったら・・・っくちゅん!」








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XXXsのあとがき
この季節、花粉症の人間に、ムードを期待するのは、無駄無駄無駄無駄ぁあ!!
って感じ?(^_^;)
でも、ほんと、アレばっかりは、なった人間じゃないと解らんよね、あの辛さは…。
ひどい時は頭痛までしてくるもん。

malのあとがき
そぉ!!花粉症にムードなんかあるかぁ!!・・・といいつつよりムードを増す編集を
してしまった。なんだかな〜〜アヤナミストの煩悩爆発というか(^^; 
でもホント、きついよねぇこの時期。だんだん目の前ふらふらしてくるわ、頭ぼんやり
してくるわ・・・片手にティッシュは離せないし(^^;
東京に出てきたら花粉症(ただのアレルギー鼻炎らしいけど)出なくなったmalでした(^^;

一応解説(^^;:
この作品、FLY ME TO THE MOONの伝言板でXXXsさんが花粉症という発言をされ、
malが「レイが花粉症だったら・・・かわいいかも(^^;」と返して本作冒頭を書きまして(^^;
「誰か続けて!」と言ったらば、XXXsさんが本作品ほとんどを書いて下さいました(^^)。
そして改めてmalがムードを増す編集した・・・という次第です(^^; こーいうのも面白い(^^)

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Received Date: 98.4.11
Upload Date: 98.4.13
Last Modified: 98.4.15
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