(…遠足…、…見学を目的として行う日帰りの校外指導のこと…。)

真夜中、ベッドの中にうずくまる少女。

(…私には…関係のないこと…。)

瞳にかかる前髪をそっと撫でる。

(……私…、…行きたくないの?)

少女はタオルケットを頬までたくし上げた。

(………ナゼ、…そう…思うの?」



(う〜ん、こんなものかな?)

明日の遠足の弁当の準備に余念のない少年。時は夜の12時。アスカもミサトも
熟睡の時間である。

(これ位作っとけば、アスカも文句、言わないよね?)

色とりどりのメニューが並ぶテーブル。

(僕もそろそろ寝ようかな。)

エプロンを外しながらテーブルの一角を見つめる少年。

そこには野菜中心のメニューばかりが並んであった。

(…別にお節介じゃ…ないよね…。)


















「センセ、明日は遠足やな。」

ジャージに身を包んだ健康そうな少年が口をひらく。

「うん。」

「シンジ達は沖縄旅行行けなかったしな。」

こちらはキラリと光る眼鏡が印象的な少年。

「うん。」

「そうよ、沖縄は行けなかったけど、明日こそは楽しませてもらうわよ。」

茜色のロングヘアーが眩しい少女がここぞとばかりに宣言する。

「シンジ、明日のお弁当は腕によりをかけて作んなさいよ。」

「アスカ?」

それまで会話に加わらなかったお下げの少女が首を傾げる。

「なに、ヒカリ。」

「遠足の日まで碇君にお弁当作らせるの?」

「とーぜん、もちろん私だって作れるけど。」

ドーンと胸を張るアスカ。

「なら、明日はアスカが作ってよ。」

珍しく突っ込みを入れる細面の少年。

「うっ。」

「作れるんでしょ?」

「い、いいのよ。私は…………………そうね……もっとちゃんとした時に作るから。」

考えた割に答えになっていないことにアスカは気づいていない。

「遠足はちゃんとしてないの?」

「うるさいわねえ、男はウダウダ言わずに女の言うことに従ってればいいのよ。」

シンジのしつこい追撃に開き直るアスカ。

「…でも。」

今までの攻勢はどこへやら、一気に守勢に立たされるシンジ。

「デモもストライキもないの、分かったわね、シ・ン・ジ。」

最後の方はドスをきかせ、シンジのおでこをツンツンと人差し指で叩く。

「……ハイ。」

「声が小さい。」

「ハイッ!!」

背筋を伸ばして応えるシンジ。



「センセも大変やな。」

「そうそう、哀れなりシンジ。」

「碇君かわいそう。」

思い思いに感想を述べ合う三人。

「ところでさ…。」

ヒカリがモジモジしながら言葉を紡ぐ。

「…あの、鈴原は…お弁当どうするの?」

「ワシか?……そうやな、誰も作る人おらんから、コンビニででも買うつもりや。」

ホッとする表情をするヒカリ。

「……そう、じゃあ、私、その、鈴原の分も作って…こようか?」

言い終わると真っ赤な顔を隠すようにヒカリは俯いた。

「ええんか、イインチョ。」

「……うん。」

「そうか、ほんま嬉しいわ、おおきに。」

「……別に…大したこと…ない。私の分…作るついで…だし……。」



「ヒカリも素直じゃないわね。」

二人の会話を耳にしていたアスカがこぼす。

「惣流も同じだろ。」

ケンスケがボソッと呟く。

「ぬあんですって!!相田、もう一回言ってもらおうかしら。」

牙を剥くアスカ。

「わ、悪い、惣流。でもいいよな、弁当の当てがある奴は。俺なんて誰も
作ってくれないよ。」

ケンスケの諦めの言葉にシンジが口をひらく。

「もしよかったら、ケンスケの分も作ってこようか?」

「いいのか、シンジ?」

「うん、だって二人分も三人分も一緒だしね。」

瞳をウルウルさせ、シンジの手を握りしめるケンスケ。

「スマン、シンジ。」

「ちょ、ちょっとシンジ、そんな奴の分まで作る必要ないわよ。」

慌てて口を挟むアスカ。

「…だって。」

「惣流。」

眼鏡を妖しく光らせるケンスケ。

「作ってもらう分際でそんなことを言う資格はお前にはないのだよ。」

「そうや、そうや。」

加勢するトウジ。

「う、うるさいわねえ。ま、今回は引き下がってあげるわ、感謝しなさい相田。」

ピシッと指さすアスカ。

アスカは早くも明日の弁当の中身に想いを巡らせていた。

(明日は三人分の弁当か…、ま、いいか。…………………綾波?)

シンジの目に一人の蒼髪の少女の姿がとまった。

ガヤガヤと騒ぐ一団から一人ポツンと離れて席にすわり、窓の外を眺めるレイ。

(……綾波は明日の昼御飯…どうするんだろ。)





某月某日 快晴

今日は壱中における数少ないイベント、遠足の日である。

二年生全員で芦ノ湖湖畔に繰り出した。

「よ〜し、ここで昼飯にする。」

引率の教師が宣言した。

「は〜い。」

生徒たちは我先にと良い場所を確保しようとする。

シンジ達も例外ではない。

「ヒカリ、ここがいいわ。」

アスカは芝生が綺麗で、木の陰になっている絶好の場所を探し出した。

「そうね。」

「鈴原たちは?」

「ワシはエエで。」

「俺もいいよ。」

「僕も。」

「じゃあ、昼御飯の用意をしましょ。」

五人はシートを広げ、準備をし始めた。



レイはクラスメート達の喧噪をただ遠くから眺めていた。

(…みんな…楽しそう……。)

(……外で食事をとることがなぜ、楽しいの?)

思い思いにグループを作り、昼食を囲み談笑しているクラスメートの姿を
見つめる。

(………そう、親しい人同士で昼食をとることが楽しいのね…。)

(…………私には……関係ない…。)

沈んだ表情で、レイは人気のない公園のベンチに腰を下ろした。



(…そうだ、綾波…。)

シンジは弁当を並べながら気づいた。

「ごめん、ちょっとトイレに行って来るね。」

走り出すシンジ。

(綾波、どこいるんだろう。)



カバンから固形食を取り出し、口に放り込むレイ。

(……いつもと…同じ味…。)

(…でも今は……食べたく…ない。)

(……どうして?)

一口食べただけで残りをカバンに入れる。

(…今日の私…いつもと違う気がする…。)



「綾波?」

顔を上げるレイ。

そこにはぎこちない微笑みを浮かべたシンジがいた。

「…なに、碇君。」

さっと頬に赤みがさすレイ。

「…綾波…一人?」

見たままでであるが、わざわざ確認するシンジ。

「…ええ。」

「…昼御飯、食べた?」

「……ええ。」

一口とはいえ食べたことには変わりないので肯定するレイ。

「…じゃあ、もうお腹…一杯なんだ。」

落胆の表情で呟くシンジ。

「……………………いいえ。」

「えっ。」

「……お腹…空いてる。」

「…どうして?昼御飯食べちゃったんじゃ……。」

「…………………。」

「……ご、ごめん。何か気に障ったこと言ったかな。」

「…いいえ。」

「…そう。」

そのまま会話が途切れる二人。

芦ノ湖から吹いてくる柔らかな風が二人を包む。

シンジの、そしてレイの髪が優しく揺れる。

(…言わなきゃ、今言わないでいつ言うんだ。頑張れ碇シンジ。)

風に後押しされたかのようにシンジが口をひらく。

「…綾…波?」

「…何?」

「あの、その、ええと……。」

必死に言葉を紡ぎだそうとするシンジを見つめるレイ。

「……お、お腹…空いてるなら、僕の作ってきたお弁当…食べない?」

レイは一瞬大きく目を見開いた。

「…肉とか魚とか入ってない料理ばかりだから…。」

「…いいの?」

「え。」

「…私が食べても…いいの?」

「も、もちろんだよ。だって、綾波のために、…その、作って…きたんだし…。」

耳まで真っ赤になるシンジ。

「…だからさ、一緒に食べよ。」

恥ずかしそうに頷くレイ。

並んで歩き出す二人。



「遅かったじゃない、シンジ…って、ファーストぉ?」

アスカは意外な人物の登場に驚いた。

「うん、綾波も昼御飯食べてないっていうから。」

ハッとして、シンジを見つめるレイ。

(…さっき、昼御飯食べたって…言った…はず。)

「心配しないで。」

シンジはレイに小声で囁く。

「いいよね、みんな。」

「もちろんいいわよ。」

「ここ座れや。」

「入んなよ、綾波。」

アスカと同様に驚いていた三人だったが、快く同意した。

「なんでファーストなんか連れてきたのよ、シンジ。」

一人不満顔のアスカ。

「別にいいじゃないか。」

「よくないわよ、なんでファーストなんかと一緒にお弁当食べなきゃなんないのよ、
あ〜あ、白けちゃうわ。」

アスカは軽く冗談のつもりで言ったのだが、レイはそう受け取らなかった。

「…わたし…、やっぱりいい。…ごめんなさい、碇君。」

そう言うと、身を翻しレイは走り去った。

「あ、綾波。」

慌てて追いかけるシンジ。

それを呆然と見送る約四名。



「アスカ、言い過ぎよ。綾波さん傷ついたわよ、きっと。」

「そうや、今のは惣流の言い過ぎやで。」

「俺もそう思うよ。」

「な、なによ、あんたたちまで、軽いジョークよ、ジョーク。」

(あんな嫌みくらいで傷つくの?“あの”ファーストが。)

普段のレイからは考えられない反応に当のアスカが戸惑っていた。



レイは見晴らしの良い丘の上に来ていた。

真上を見上げるレイ。そうしないと涙が出てきそうだったから。

(…なぜ…?)

(…せっかく碇君が…誘ってくれたのに…。)

(…ナゼ…逃げ出したの?)



『ガサッ』

後ろを振り返らずに口を開くレイ。

「…碇…君?」

「うん。」

「…どうして?」

「…綾波が心配だったから。」

「…………。」

シンジからはレイの表情は見えない。

「さ、戻ろうよ、綾波。」

「…………。」

「アスカのことなら心配いらないよ。あの言葉だって本心から言ったわけじゃ
ないよ、きっと。」

レイはシンジの心遣いがとても嬉しかった。しかし、一度閉ざされたレイの心は
簡単には開かなかった。

「…碇君。」

「なに、綾波。」

「…私を…一人にして…。」

決して本心ではないのだが、この言葉しか今のレイには見つからなかった。

「…でも。」

「…お願い…、…一人になりたいの。」

「……そう。」

シンジの後ずさる足音が聞こえ、そして気配がなくなった。



とぼとぼとアスカ達のいる場所へ歩くシンジ。

しかし、シンジは何か引っかかるものを感じていた。

(今日の綾波、いつもと違う気がする。)

(何かあったのかな?)

ピンとひらめくシンジ。

(ひょっとして……。)

シンジはきびすを返すとレイの居場所に向かった。



(…そう…、…私は……一人…。)

(…一人でいるべき…存在…。)

(…まわりとは…関係を持たない…存在…。)

(……だって…、…私には…何もない…もの…。)

胸がキリリと痛む。

(…でも、……一人は…………イヤ…、………寂しいの?私…。)

突然目の前が暗くなる。

レイの顔が温かいもので覆われた。

(何?)

「綾波。」

シンジが手のひらでレイを目隠ししていた。

「…なぜ、…こんなことするの?」

「綾波に見せたいものがあるんだ。」

「…なに?」

「目をつぶっててくれる?」

レイは返事の代わりにコクンと頷いた。

シンジは目隠しの手を離すと、レイの前に回り込みその両手を優しく握った。

「そのまま、前にゆっくり歩いて。」

レイは目をつぶったまま、シンジに言われたとおり恐る恐る歩く。

「足元に気を付けてね。」

ときどき後ろを振り返りながら目的の場所を確認するシンジ。

シンジの導くままに歩くレイ。

かれこれ五分位歩いただろうか。

ふと、シンジの手の感触が消える。

シンジはレイの後ろに回り込み、その華奢な両肩にそっと手をおいた。

「目を開いていいよ、綾波。」

ゆっくりと目を開くレイ。

目の前には一本の立派な大木があった。

「………。」

「これを綾波に見せたかったんだ。」

キョトンとするレイ。

「ほら見て、ここには木はこの一本しかないよね。」

レイがあたりを見回しても、確かに木はこの一本きりである。

「綾波はこの木が寂しいと思う?」

「………分から…ない。」

「そこを見て。」

シンジの指さした先には、木の蜜を吸うカブト虫の姿があった。

「上を見て。」

レイが見上げる。

「ヒタキの巣だよ。」

巣の中で、雄鳥と雌鳥がじゃれあっている。

「どう、この木は寂しいと思う?」

「…………寂しく…ない…と思う。」

「…僕もそう思うよ。」

シンジは後ろからレイの手を優しく握る。

「一人じゃないよ、綾波。」

ハッとし、振り返るレイ。

そこには照れくさそうに微笑むシンジがいた。

「確かに一人は楽だよね。相手も傷つかないし、何より自分が傷つかないから。」

(…………。)

「昔の僕もそうだったよ。」

「でもね、それじゃダメなんだって気が付いたんだ。」

「一人でいても何も変わらないし、そして自分の可能性の芽を摘んでしまう
ことになるから。」

「…可能性?」

「…そう、人にはそれぞれ可能性があるんだよ。他人と触れあうことによって、
例えばほら、仲間や友達ができたり、その…恋人が…できたり…するんだよ。」

真っ赤になりながら言葉を紡ぐシンジ。

「……私にも…できる…の…?。」

モジモジしながら尋ねるレイ。

「もちろんだよ綾波。それに一人は楽しくないしね。」

「綾波は自分のこと一人だと思っているかもしれないけど、そうじゃないよ。」

「父さんや、リツコさん、ミサトさん、アスカもいるし、洞木さん、トウジ、
ケンスケ……、……それに……その……僕も……いるしさ。」

照れながらもシンジはじっとレイの瞳を見つめた。

「綾波は一人じゃないんだよ。…それに一人には…決してさせないよ。」

涙が一気にこみ上げるレイ。

「ど、どうしたの綾波?」

(またなにかマズイこと言っちゃったかな。)

「…嬉しいの。」

「えっ。」

「…ありがとう、碇君。」

レイはシンジの胸にコトンと身体をあずけた。

(えっ!!)

突然のレイの行動に全身が硬直してしまうシンジ。

「…あ、綾波。」

シンジはレイの両肩に手をおき、レイを離そうとする。

しかし、レイは両手をしっかりとシンジの背中にまわし離れようとしない。

「…すこしだけ…。」

「えっ。」

「…すこしだけ…このままで…。」

シンジの胸の中から、レイの消え入りそうな願いが聞こえた。

「…うん。」

(…綾波…、寂しかったのかな。)

シンジもそっとレイの身体に手をまわす。

(…私…一人じゃないのね?)

レイは遠足に来て、やっと自分の居場所を見つけたような気がした。



「シンジ〜。」「センセ〜。」「綾波〜。」「綾波さ〜ん。」

遠くからシンジ達を呼ぶ声がした。

「…綾波。お迎えが来たみたいだよ。」

シンジはレイの肩にそっと手をおいた。

「…ええ。」

名残惜しそうにシンジから離れるレイ。

ちょうどシンジ達を発見するアスカ。

「こんなところにいたのね、まったく。」

ぶつぶつ言いながら近づいてくるアスカ。

「ゴメン、アスカ。心配かけちゃって。」

「ま、いいわ。今回は私にも責任あるしね。」

アスカがずいとレイににじり寄る。

怯えの表情が浮かぶレイ。

「ファースト。」

「…な…に。」

「さっきは、その、悪かったわね。」

「…え?」

アスカの意外な行動を理解できないレイ。

「だ〜か〜ら、私はアンタに謝ってんのよ。わかってんの?」

「…え、ええ。」

「ほら、さっさとお弁当食べるわよ。」

そう言うとアスカはレイの左腕に自分の手を組んで強引に歩き出す。

レイは不安げな視線をシンジに向けるが、シンジは柔らかい笑みを浮かべていた。

(大丈夫だよ。)



「でも、アスカ、よく素直に謝ったね。」

レイとアスカの後を歩きながら切り出すシンジ。

「ふ、ふ、ふ。」

「どしたの、ケンスケ。」

「シンジ、お前はここにいる三人に感謝しなくてはならんのだぞ。」

突然高飛車になるケンスケ。

「そうや、特にイインチョにはな。」

「委員長?」

シンジは意外な表情でヒカリを見つめた。

「ヤダ、そんな大したことじゃないわよ。ただ、アスカに“綾波さんに謝らな
かったら絶交よ”って言っただけなんだから。」

「…それって。」

唖然とするシンジ。

「な。」「そうやろ。」

小声で同意を求める二人。

「…うん、とりあえずありがと、委員長。お陰であの二人も仲良くなって
くれたし。」

「そうね、でも…。」

ニヤリと笑うヒカリ。シンジの背後に不気味な笑みを浮かべた男達が陣取る。

「綾波さんと碇君との間に何があったのか、興味あるわ。」

「えっ……。」

「そうだぞシンジ。お前、あの“綾波”に何したんだ?」

「…な、何もしてないよ。」

「嘘こけ、お前のシャツから綾波の匂いがプンプンしよるで。」

シンジの動揺を見透かしはったりをかますトウジ。もちろん短時間抱き合った
だけで、匂いなどうつるわけがない。

「…え、ええ〜!!」

見事にトウジの策略にはまるシンジ。

「…センセ、ほんまにそないなことしたんか?」

「ホントか。く〜、惜しいシャッターチャンスを逃がした。」

「ふ、不潔、不潔よ、碇君。汚らわしいわ。」

結局シンジは、三人に根ほり葉ほり追求を受けることになった。



アスカに半ば強引に連れられるレイ。

しかし、決して嫌な気持ちを抱いているわけではなかった。

(……暖かい、……何?この充足感。)

アスカの横顔に目をやる。

(……弐号機パイロット……、…この人は…私の…何…?)

(…仲間…?友達…?)

(……私には…分からない……………、…けど…。)

後ろを振り返るレイ。

そこには楽しそうにじゃれ合う三バカトリオとそれを叱りつけるヒカリの姿。

(…恋人は…、)

「…碇君なの?」

心の中の台詞が口に出てしまうレイ。

「…どうしたの、綾波。」

「……いいえ、なんでも…ないの。」

頬をバラ色に染めるレイ。

「やっぱりなんかあったやろ、白状せいシンジ。」

シンジを羽交い締めにするトウジ。

「苦しいよ、ホントになんにもしてないってば。」



そうこうしているうちに、シンジ達は自分たちの場所に戻ってきた。

「さ、入ってよ、綾波。」

「……ええ、……お邪魔…します。」

「ああ、もう、まどろっこしいわね。ほら、さっさと座って。」

アスカが強引にレイを座らせる。位置はシンジの左隣。

「……あ、ありがと。」

「どういたしまして。さあ、飲む、じゃなくて食べるわよ、コップまわった?」

「OK。」

ケンスケが指を立てる。

「自由時間はまだまだあるんだから。飲んで、食べて、遊んで、歌って、とにかく
なんでもありよ。」

首を傾げるシンジ。

「それってちょっと違うん…。」

「お黙り!!」

シンジを一喝するアスカ。

すごすごと引き下がるシンジ。

「じゃあ、みんないい。」

あらためて確認するアスカ。そして……、

「乾杯!!!」

「「「「乾杯!!」」」」

「…かん…ぱい。」






(…そう…まだ私には…時間が残っているわ。)



                                                                          
         《完》








Please Mail to Safety <gakuyo@ceres.bios.tohoku.ac.jp>



【作者後書き】
 malさん、綾波補完委員会のみなさん、そしてこの小説を読んでくれたみなさん、
どうも初めまして。生活密着型小説の得意な(しか書けない)Safetyと申す者です。
この小説では、孤独でいることが普通であるレイが、遠足という行事を通して、一人
でいることの寂しさ、そして他人と関わりを持つことの重要さに目覚めていく過程を描
いたつもりです。ちょっと閉じこもり的な性格の自分への反省という意味も込めて書い
てみました。この小説を読んで何かを感じとっていただけたのならありがたいです。

P.S.
なんでもいいので是非感想を下さい。よろしくお願いします。

mal委員長のコメント:
R.E.I(Innocent Red Eyes)他あちこちに暖かい投稿作品を書いておられる
Safetyさんについに綾波補完委員会も書いて頂きました!(^^)
いやーわたし生活密着型小説(ほのぼのともいうか?)大好きなんですよぉ
(シリアスも・・ですが(^^;)シンジの暖かい言葉が浸みます、ヒタキの巣で
ラピュタを思い出したのはわたしだけではあるまい(^^;
Safetyさんまた暖かい作品、書いて下さいね(^^)

Top Page Contributions  

Received Date: 98.5.23
Upload Date: 98.5.24
Last Modified:
inserted by FC2 system