『新世紀エヴァンゲリオン』〜 longing for different future 〜

〜第2章〜『家族の輪郭』 第21話『闇からの生還』



シンジは身体の周りをATフィールドで囲いディラックの海を漂っていた。
シンジは瞳を閉じ、ただその時を待っていた。
もうすぐ現れるもう一人の『自分』を――。
ピクリと眉が動く。
感じた――
ゆっくりと、それでいてハッキリとした声で語りかける。

「シンジ...」

話しかけた相手――『シンジ』から僅かに感情が伝わってきた。
その感情は驚き――
シンジは落ち着いて、再度呼びかけた。

「シンジ...」

今度はハッキリと『シンジ』の戸惑いの感情が伝わってくる。

「落ち着いて聞いてほしい。もうすぐアスカが使徒...レリエルに攻撃を仕掛ける。その時、キミには...ディラックの海に飛び込んでほしい...」

拒絶とも戸惑いとも取れる『シンジ』の反応に薄く笑みを浮かべる

種は蒔いた...
後は...

そう、彼が『この場所』に現れるのを待つだけだった。



遠くとも近くともいえる場所で、初号機はディラックの海を漂っている。
闇なのか光なのかも解らない空間――
シンジは初号機に近づいて行くと、初号機に乗っている『シンジ』に向かって声をかける。

「シンジ...」

遠くで自分を呼ぶ声を聞いた『シンジ』はモニターでその方向を見る。
初号機の前には辿り着いたシンジは、モニターを通じて自分を見ている『シンジ』を『視』ている。

『シンジ』はハッキリと戸惑っていた。
いや、呆然としているようだ。
かつての自分を思い出し、シンジは内心でクスリと笑う。

『き、君は?......』

彼の呟きが聞こえた。いや、自らの意思で『聴』いたと言うべきだろうか。

「...僕は......」

シンジは微笑みながら言葉を返した。
口からではない、頭の中から声を発した

「僕は碇シンジ......キミだよ......」

戸惑いつつも『シンジ』が答えてくる。

『......もう一人の僕?......』

シンジともう一人の『シンジ』は会話を交わす。

『もう一人の僕...
 僕の中にいるもう一人の僕。
 でも...なんなんだ...
 この感覚は?
 いつもと違う!?
 目の前の僕は彼じゃないの?』

彼の心の声が『聴』こえる。
だから、シンジは頷いて答えた。
かつて自分がそうされたように、彼にも同じ態度で答える。

「そう、キミが考えているもう一人の『僕』じゃない......キミの中にいる『碇シンジ』ではなく、キミの目にも映る、正真正銘の『碇シンジ』さ」

『?』

よく分からないと首を振る『シンジ』に、微笑みは消し、真面目な表情で言葉を紡ぐ。

「キミは自分が変わったと思ってないか?」



その頃、地上では着々とサルベージ計画が進められていた。
シンジが闇に消えてすでに16時間近くが経過しようとしていた。。
仮にシンジが生命維持モードに切り替えていたとしても、計算的には限界が迫っているだろう。
急がなくてはならない。
次々とUN軍の戦闘爆撃機が夜空を舞っていく。
無論、残存するエヴァ2機にはレイやアスカが搭乗し作戦に参加している。
リツコが落ち着いた声音で2人に呼びかける。

「アスカ、レイ、準備はよくて?」

モニターに映る2人の顔は緊張で強張っているものの、先程までの暗く沈んだ感じは消えている。

「大丈夫よ...リツコ」

「...準備できてます」

2人からもしっかりとした返事が返ってくる。
シンジを助けられると信じ、精神的に疲れてはいたが、その疲れを感じさせずに事にあたっている。
そんな2人の様子を発令所の後ろでミサトが渋い顔を浮かべながら眺めている。

あの子達は知らない...。
これがどういう作戦なのか分かっていない。
2人とも知ってるの?
この作戦で――シンジ君を永遠に失うかもしれないのよ...。

今にも叫び出したい欲求に駆られる。
だが、現実問題として、他に方法が無かった。
仮に見つかったとしても、今からでは到底間に合わない。

シンジ君...無事でいて...。

たとえ目標が天使の名を持つ神の使いであっても――神に相対しているとしても、今のミサトには神に祈る事しか出来なかった。

「投下開始......」

リツコの指示でN2爆雷が次々と投下される。

「「ATフィールド...全開!!」」

2人の掛け声と共に二色の巨人がATフィールドで使徒に干渉する。
激しい光と爆音と共に、虚数空間の中で爆発が起こる。
しかしそれだけだった。
闇は尚そこに漂っている。ゼブラ模様の影はピクリとも反応を示さない。
いや、数瞬遅れて、禍々しい光を放つ球体が闇の中心から天に向って放たれた。
そして、球体はUN軍の爆撃機の上空で幾筋もの流星と化す。
流星はまるで自らの意思を持っているかのように、次々爆撃機を貫いていく。
第3新東京市上空で幾つもの花火が闇夜を照らす。

「な、何で!?」

驚愕するアスカ。
リツコの話では使徒を破壊できるはずだった。

「そ、そんな......無傷だなんて......」

リツコの頬を冷たい汗が伝う。

「シ、シンジ君!!」

ミサトも思わず叫び声を上げた。

「碇...くん......」

レイの身体を治まったはずの震えが再び襲っていた。



虚数空間内部ではシンジともう一人の『シンジ』の会話は続いていた。
シンジは微笑んで言葉を投げ掛ける。

「キミは知らない。なぜキミだけが過去を繰り返すのか、なぜ世界を救えなかったのか......その答えが知りたければココに来るといい......僕が力を貸すよ」

『......』

だが『シンジ』は動かない。
迷っている。
そう、あの時の自分と同じように――
だから、少しだけ後押ししてやる。
優しく微笑むと言葉を投げ掛ける。

「......さあ...」

『......』

エントリーブラグがイジェクトされる。
シンジはゆっくりとエントリープラグの周りにATフィールドを張った。
LCLがゼリーのように塊になって辺りに漂う。
もう一人の自分がプラグから出てくる。
あの時と同じように『シンジ』の瞳は真っ直ぐに自分に向けられていた。
怯えの様子はない。

そう...それでいい。

シンジは微笑むともう一人の『シンジ』手を差し伸べる。

『シンジ』がその手を掴んだ瞬間――世界は真っ白になった。

光が収まるとそこにはシンジしかいなかった。

「がんばれ...もう一人の僕......」

一人呟くと初号機のプラグの中に入っていく。
操作してプラグを再度挿入する。

「さあ、行こう...」

シンジは誰に言うとも無く一つ呟くと、EVAを通常モードに切り替えゆっくりと目を瞑る。
そして、己の深層心理に問いかけるかのように心の中で呼びかける。

母さん......

目を瞑ったシンジの意識は深く深く落ちていく。
不意にシンジは誰かに頬をなでられたように感じた。
誰かに抱かれているような......暖かな感覚に身を委ねる。

『もう、いいの......』

誰かが語りかけてくる。
シンジは無意識に頷いていた。

『そう、よかったわね......』

にっこりと微笑む女性。
そして――光が溢れ出した――



突然の振動が第3新東京市を襲った。
地が揺れ、地が割れ、地が裂ける――

「なっ...何が起こったの!?」

アスカが引き攣った表情で訴える。
その間も、闇の表面に大地ごと亀裂が走り、幾つもの陥没を引き起こす。
その大きなうねりは徐々に闇全体を覆っていった。



「状況は? どうなってるの?」

発令所ではミサトが素早く日向に問いかける。

「わ、わかりません...」

「全てのメーターが振り切られています!」

日向の戸惑った声に続き、マヤが焦りを含んだ声で報告する。

「な、何が起きたと言うの?」

リツコも戸惑いを隠せずにいる。

「!! まさか...シンジ君?」

作戦は失敗したのだ。それは間違いない。
だが、この現象は間違いなく現実のものだ。
ミサトはかつて見たシンジのあの現実とは思えない力を思い出していた。

「そんな...ありえないわ! 初号機のエネルギーはゼロなのよ!」

そう言いつつも、リツコもミサトの直感と同じ想像を思い巡らせていた。

彼女が目覚めたの?
それとも...シンジ君の力?

何が原因かは分からない。
だが、初号機の力である可能性は捨てきれないのだ。



ゼブラの影が大きく揺らぎ始める。
そして――
使徒の影に1本の大きな亀裂が走った。
その亀裂から1本の腕が影を突き破って生えてくる。
鮮血が飛沫となって大地に降り注いだ。
裂け目は徐々に広がっていく。
真っ赤に染まった腕の向うに2対の光が生まれる。
光は段々とその全貌を明らかにした。
――それは目だった。
初号機の頭部――その目が爛々と輝いているのだ。

ヴォロロロロォォォォ!!

初号機の雄叫びが第3新東京市を振るわせた。
使徒の影全体に亀裂が走る。
裂ける――裂ける――裂ける。
遂に内から使途を裂きながら初号機の顔が現れた。

ヴォォォウロォォォン!!

血飛沫が舞い、初号機から再び咆哮が上がる。
その雄叫びはまさに獣のそれであった。



弐号機の内部ではアスカがかすれた声で呟いていた。

「わ、私...こんなのに乗ってるの...」

加持の言葉が思い出される。

『...エヴァは、このアダムから作られたものだ』

アダム――
アスカの瞳には七つ目の仮面をつけた巨人の姿が映し出されていた。

「うっ!」

アスカは口元を押さえ吐き気を懸命に堪える。
そして俯いたままガタガタと震える事しか出来なかった。



発令所のメインモニターには雄叫びを上げる初号機の姿が映し出されていた。

「なんて物を...なんて物をコピーしたの...私達は......」

リツコの顔面は既に蒼白になっていた。
そんなリツコを冷静な目でミサトが見つめている。

エヴァがただの第一使徒のコピーじゃない事は分かる...。
ネルフは使徒を全部退治した後、エヴァをどうするつもりなの?

ミサトは己の思い描いた想像を振り払うかのように瞳を閉じると、再びモニターに視線を戻すのだった。



宙に浮く使徒の影はゼブラ模様ではなく己の血で真っ赤に染まっていた。
その溢れ出した血で大地までもが、まるで絵の具をぶちまけた様に赤一色になっている。
遂に使徒の影が崩壊する。
大量の血を振り撒き大地を裂きながら、初号機が遂に地面に降り立った。
使徒の血は雨のように地面に降り注いでいる。
血雨が降り止んだ後に残されたのは、全身を返り血で染めた真紅の初号機だけだった。



「シンジ君! 大丈夫! シンジ君!」

ミサトが叫びながらプラグのハッチを開ける。
そこには笑みを浮かべたシンジがいた。

「シ...シンジ...君......」

思わずシンジに抱きつき泣き出すミサト。
ミサトの頭を優しく撫でながら、ゆっくりとその身体を抱きしめ返すシンジ。
その後ろには、真紅の瞳に涙を溜めながら微笑んでいるレイがいた。
シンジはニコリと微笑み返すと落ち着いた声色で、しかしハッキリと言葉を紡いだ。

「ただいま......綾波」

「お...かえり...なさ...い...」

レイは涙で擦れた声で、だが喜びに満ち溢れた声で言葉を返すのだった。



暗闇の中に声が響き渡る。

「遂に我等が父が帰ってきました...」

暗闇の中、影は1つしかない。

「そして...見つけました...」

誰に語るでも無く、呟き続ける影。

「もう少しで成就します...」

暗闇の中、微かに光が発せられた。
暗闇に光ったのは影の真紅の瞳だった。

「今暫くお待ちください...母上...」

影はそう呟くと薄く笑った。






第2章 終了記念の『キャラクター座談会』


アスカ:ハァ〜〜。なんか本編はすごい事になってるわね。

ミサト:そうね。何か新しいキャラも登場してるようだし...。

アスカ:確かに...そうね。イヤな奴が出てきたわ。

 マナ:もしかして、それって私のことかな〜?

ミサト:うわぁっっ! ちょっとぉ〜いきなり出てこないでよ! 驚くでしょ!!

 マナ:あはっ。でもでもぉ〜、シンジってさーやっぱかっこいいよね♪

アスカ:アンタバカァ〜!? シンジの何処がカッコイイってのよ!

ミサト:あれぇ〜? その割に本編ではシンちゃんにドキドキしてるようだけど?

アスカ:う、うっさいわねぇ!! バカシンジなんて、男のクズよ! クズ!!

 レイ:碇くんの悪口を言わないで!

ミサト:あらあら、レイは相変わらずシンちゃん一筋ね。...誰かさんにもその素直さを分けてあげたら?

アスカ:うっさいわよ! このビア樽三十路女が!!

ミサト:ぬぁんですって!!!

アスカ:なによ! やる気?

ミサト:やらいでかぁ!!!

 マナ:(ケンカしている2人を見ながら)あのぉ〜進行しなくていいんですか?

 レイ:いいの...あの2人はほっといていいわ。それより...あなた誰?

 マナ:へ!? えへへへ〜〜。名前は霧島マナ! それ意外は...内緒。

 レイ:そう...。何故?

 マナ:そ、それは...。ま、まあ、それはこっちに置いといて...シンジが二人いるけど...何でか知ってる?

 レイ:...知ってるわ。でもここじゃ、それを言っちゃいけないの...。

 マナ:あ、そうなの...ざぁんねん。せっかく教えてあげようと思ったのにぃ〜〜っ!!

 レイ:それはあなたが関係してるから?

 マナ:へっへぇ〜。ま、そうなんだけどね。ま、言っちゃいけないんだったらしょうがないよね。

 レイ:でも、作者はその辺の事書かないつもりらしいわよ。

 マナ:ええぇっっ!! なぜ? どうして? why!?

 レイ:話が外伝みたいになるから...。

 マナ:なるほど...。でも〜作者って、なんで省こうとするのかな? 本編が分からなくなるかもよ。

 レイ:さあ...そのへんはうまく調整するんじゃない。ま、読者の反応によっては書くかもとは言ってたけど...。

 マナ:じゃあ、みんなが読みたいって言えば?

 レイ:...書くかもね。

 マナ:でも、そうなるとさ、本編での私の出番はどうなるの?

 レイ:さあ、別の役回りがあるんじゃないの?

 マナ:そう。あ〜よかった。もうシンジとラブラブできないかと思うと心配で心配で...。

 レイ:...あなた...出なくていいわ。

 マナ:ええぇっっ!! なぜ? どうして? why!?

シンジ:あ、あの......。

 マナ:ああっっ!! シンジぃ!!! 私に会いにきてくれたのね!! うれしい!!!

 レイ:(怒) ...あなた、邪魔!

 マナ:ええぇっっ!! なぜ? どうして? why!?

シンジ:あのぉ...2人とも...話をしてもいいかな?

 マナ:(コクン)

 レイ:(コクン)

シンジ:ええっと...作者がそろそろシメて欲しいんだって...。

 マナ:ええっっ!! もう!! 私もっと話したかったのにぃ!!

 レイ:じゃ、さよなら。

シンジ:あ、綾波...それはまずいんじゃ...。

 レイ:いいの...私は3人目だから......。

シンジ:それって、本編とは何の関係もないんじゃ...。


Please Mail to 葵 薫
( aokao_sec@yahoo.co.jp )

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