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夜のミサトのマンション
ミサトは自分の部屋で、留守電に入っていた加持からのメッセージを聞いていた。

「葛城、俺だ。
たぶんこの話を聞いてる時は、君に多大な迷惑を掛けた後だと思う。
すまない。リッちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。
あと、迷惑ついでに、俺の育てていた花がある。俺の代わりに育ててくれると嬉しい。
場所はシンジくんが知ってる。
葛城、真実は君と共にある。迷わず進んでくれ。
もし、もう一度会えることがあったら、8年前に言えなかった言葉を言うよ。
…じゃぁ」

机に突っ伏したままつぶやくミサト。
「鳴らない、電話か…」
ミサトの部屋の前
ドアには『仕事中・悪いけど声かけないで』と貼り紙がある。

その前に立つシンジとペンペン。

ミサトは、あの日以来帰宅しても部屋にこもったまま、シンジとも顔を会わせようとしていなかった。

「ミサトさん、今日もこもりっぱなしだ」
アスカの部屋の前
こちらのドアには『許可なく立ち入りを禁ず。勝手に入ったら殺すわよ!』の貼り紙がある。
アスカは、数日前からヒカリの家に泊まり込んでいた。

「アスカ、今日も戻らないつもりかな?」

心配そうなシンジとペンペン。
ヒカリの自宅
ヒカリの部屋でTVゲームに明け暮れるアスカ。

そんなアスカを心配そうに見つめながら、ヒカリは考えていた。
(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっとゲームばっかり…)

「ヒカリ」

突然のアスカの呼び掛けに驚くヒカリ。
「な、なに?」

振り返りもせず、アスカは言う。
「寝よっか」

「…うん」
寂しげな表情でそう答えるヒカリだった。
消灯した室内
ヒカリのベッドにふたり並んで寝ている。

ヒカリが天井を見つめているとアスカが話し掛けて来る。

「ごめんね。アタシ、邪魔かな?」

慌てて答えるヒカリ。
「そんなことないわよ」

「アタシ、勝てなかったんだ、エヴァで。
もうアタシの価値なんて無くなったの。どこにも。
嫌い、大っ嫌い、みんな嫌いなの。
でも、一番嫌いなのは、私。
なんかもう、どうでも良くなっちゃったわ」

そんなアスカを慰めるようにヒカリは言う。
「私は、アスカがどうしたっていいと思うし、何も言わないわ。
アスカは良くやったと思うもの」

その言葉に身体を縮め、アスカはすすり泣く。
(そんなこと言ったって、私…どうしたらいいのよ…)
NERV 本部内・リツコの私室
リツコは祖母と電話をしていた。

「そう、いなくなったの、あの子」

「ええ、たぶんね」

「猫にだって寿命はあるわよ」

「もう泣かないで、おばあちゃん」

「うん、時間が出来たら一度帰るわ。
母さんの墓前にも、もう三年も立ってないし。
今度、私から電話するから」

「じゃぁ、切るわよ」

ピッ

電話を切るリツコ。

「そう、あの子が死んだの…」

そうつぶやくと、机の上の猫の置物に目をやる。
レイの部屋
レイは淡い水色の無地のパジャマを着て、ベッドに仰向けに寝ていた。

(眠れない…)

(どうしたの?私、変)

(あの時、私…命令なら…そうする…、と思った)

(でも、どうして、そう答えるのが、あんなに苦しかったの?)

レイはあの時のエレベーターの中でのアスカとの会話を思い出していた。



長い沈黙を破るレイ。
「心を開かなければ、エヴァは動かないわ」

レイに向き直り反論するアスカ。
「心を閉ざしてる、ってーの?このアタシが!」

アスカの方は向かず、ドアを見つめながら静かに続けるレイ。
「そう、エヴァには心がある」

「あの人形にぃ?」
(何バカなこと言ってんのよ!)という表情で反論するアスカ。

「解っているはずよ」

淡々と言うレイに、アスカは
(そんなこと解らない!解りたくもない!)
と思うが、そうは言わず、バカにしたような口調で挑発する。
「はん!アンタから話し掛けて来るなんて、明日は雪かしらねぇ?」

「…」

レイが挑発に乗らないのを見てアスカは激昂する。
「何よ!アタシがエヴァに乗れないのがそんなに嬉しい?
心配しなくっても、使徒が攻めて来たら、無敵のシンジ様がやっつけてくれるわよ!
私達はなんにもしなくっていいのよ!シンジだけがいればいいのよ!!」

そう一気に畳み掛け、続けて
「あ〜あ、シンジだけじゃなく、機械人形みたいなアンタにまで同情されるとは、
このアタシも焼きがまわったわねー」

そう愚痴っぽく言うアスカに、レイが答える。
「私は人形じゃない」

カッとなるアスカ。
「うるさい!人に言われたまま動くくせに!
アンタ、碇司令が死ねと言ったら死ぬんでしょう?」

「そうよ」
躊躇せず答えるレイ。

(やっぱり人形じゃない!)
そう言おうとしたアスカだったが、ふと思い付き、次の質問をする。
「はん!じゃぁ、碇司令がシンジを殺せと命令したら、アンタ、殺すの?」

その言葉にビクッとするレイ。
即答できない。
表情は見えないが、手がかすかに震えている。

(何?迷ってんの?この女)
アスカは一瞬驚いたような表情になるが、更に追い打ちを掛ける。
「どうなのよ!!」

「…ころす…わ」
絞り出すようなかすれた声で、かろうじて答えるレイ。

パン!!

レイの正面に回り込んだアスカの平手がレイの頬を打つ。

ちょうどエレベーターが止まり、ドアが開くところだった。

「やっぱり人形じゃない!
アンタって人形みたいで、ほんと、昔っから、大っ嫌いなのよ!!」
アスカはレイを罵倒しながらドアを後ろ歩きで出る。

頬を腫らしたレイの目が潤んで見えたのは、アスカの張り手のせいだけだったろうか?
その時はレイ本人にもそれは解らなかった。

「みんな、みんな、大っ嫌い!!」

アスカの叫びを残し、ドアは閉まった。



(碇くん…)

(私、碇くんに会って、変わった。私の中の何かが…)

(それは、とても良いことのように思う)

(碇くんが私を変えた…)

(私を変えてくれた人…碇くんを…殺す?)

レイの身体に震えが走る。それを抑えるように両手で身体を抱きしめる。

(心が痛い…とても恐い…)

枕をギュッと抱え込むようにして、身体を横向きにする。

(でも、あの人はそんな命令はしない。碇くんはあの人の子供だから。
きっと、しないと思う。
だから…大丈夫)


しばらくの間、そのままレイは窓から見える細い月を見つめていた。


(碇くん…)

(碇くんのことを考えると、胸が締め付けられるような、でも、嫌じゃない。
不思議な感じがする)

(これが…『好き』という感情なの?)

レイも伊達に本を読んでいるわけではなく、恋愛感情というものについても知識は有った。
今までは、実感としてそれを感じたことはなかったが。

(碇くん…)

(あの人、弐号機パイロットと碇くんが一緒にいるのを見ると、
胸が締め付けられるような、苦しい、とても辛い感じがする)

(これが…『嫉妬』という感情なの?)

(碇くん…)

(碇くんが私のことを見てくれているのを感じると、くすぐったいような、
暖かいような、嬉しい気持ちになる)

(これが…『恋』なの?)

(私…恋…してるの?)

(私…恋…できるの?)

「碇くん…」

レイは、いつの間にか自分がシンジの名を声に出していたことにも気付かず、目を閉じて、枕を強く抱きしめていた。

新世紀エヴァンゲリオン+

第弐拾参話 「涙」


ゼーレ・リモート会議
ゲンドウ以外のメンバーは全員[SOUND ONLY]のモノリスで出席している。
メンバーの数人が、矢継ぎ早にゲンドウを批判する。

「ロンギヌスの槍、回収は我らの手では不可能だよ」
「なぜ使用した」
「エヴァシリーズ、まだ予定には揃っていないのだぞ」

ゲンドウはいつもの、机に肘を付き両手を口の前で組んだファイティングポーズで言う。
「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」

「『やむを得ない』か、言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」
「最近の君の行動には、目に余るものがあるな」

ピピ・ピピ・ピピ

ゲンドウの電話が鳴る。
「冬月、審議中だぞ」

「解った」
「使徒が現在接近中です。続きはまた後程」

「その時、君の席が残っていたらな」
メンバーのひとりがゲンドウを揶揄するが、ゲンドウは取り合わず退席。
映像が消える。

[SEELE 01]のモノリス。キール議長の声。
「碇、ゼーレを裏切る気か?」
愛車を本部に向かい走らせるミサト
片手で携帯を掛けている。
「あと15分でそっちに着くわ。零号機を32番から地上に射出。
弐号機はバックアップに回して」

「そう、初号機は碇司令の指示に。私の権限じゃ凍結解除は出来ないわよ。
じゃ」

窓から空中に浮かぶ光るリング状の使徒・アルミサエルが見えている。

「使徒を肉眼で確認。…か」

つぶやくミサト。
零号機が射出される

発令所
スクリーンに使徒の進路予想図が投影されている。

女性オペレータのアナウンス。
「零号機発進。迎撃位置へ」

日向が指示する。
「弐号機は現在位置で待機を」

頭上からゲンドウの声。
「いや、発進だ」

驚いて振り替える日向と青葉。
今のアスカの状態で、まともに戦えるわけがない。
「司令!」

ファイティングポーズのゲンドウ。
「構わん。囮ぐらいには役に立つ」

釈然としない日向と青葉であったが、従わないわけにはいかない。
「はい」
ケージから出る弐号機
男性オペレータのアナウンス。
「弐号機、発進準備」

エントリープラグ内で暗い表情でつぶやくアスカ。
「ノコノコとまたこれに乗ってる。未練たらしいったらありゃしない」

女性オペレータのアナウンス。
「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」

アスカはつぶやく。
「は、アタシが出たって、足手まといなだけじゃないの?」

男性オペレータの報告。
「目標接近。強羅絶対防衛線を通過」

「どうでもいいわよ、もう」
吐き捨てるように言うアスカ。

空中に浮かぶアルミサエル。

物陰からそれを監視する、ライフルを構えた零号機とエントリープラグ内のレイ。
発令所
男性オペレータの報告。
「目標は大涌谷上空にて滞空、定点回転を続けています」

日向
「目標のATフィールドは依然健在」

ドアが開き、ミサトが駆け込んで来る。

白衣を羽織ったリツコ、振り向いてミサトをなじるように言う。
「何やってたの?」

「言い訳はしないわ」
ミサトは即答し、オペレータの方を向いて叫ぶ。
「状況は?」

青葉
「膠着状態が、続いています」

日向
「パターン、青からオレンジへ、周期的に変化しています」

その後ろで訝るミサト。
「どういうこと?」

伊吹
「MAGIは回答不能を提示しています」

青葉
「答えを導くにはデータ不足ですね」

伊吹の後ろでリツコが言う。
「ただ、あの形が固定形態でないことは確かだわ」

スクリーンに映ったアルミサエルの映像を見ながらミサトがつぶやく。
「先に手は出せない。か…」
エントリープラグ内のレイにミサトの指示が飛ぶ。
「レイ、しばらく様子を見るわよ」

しかし、レイは何かを感じていたのか、厳しい表情で答える。
「いえ、来るわ」
リング上の形態を保ち定点回転していたアルミサエル
突如動きを変え、光の鞭となって零号機に襲いかかる。
発令所
焦るミサト。
「レイ!応戦して!!」

日向
「ダメです。間に合いません!」
アルミサエルに攻撃される零号機
アルミサエルは零号機のATフィールドを突き破り、その腹部に食い込む。
零号機はアルミサエルを左手で掴むと、右手に持ったライフルを打ち込むが効果が無い。
腹部と左手の接触部からアルミサエルが組織融合し、ミミズ腫れのような跡が広がっていく。
発令所
青葉
「目標、零号機と物理的接触」

ミサト
「零号機のATフィールドは?」

伊吹
「展開中。しかし、使徒に侵食されています」

リツコが驚いたようにつぶやく。
「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と!」
零号機
ライフルを落とし、アルミサエルに押し倒された姿勢。
両手でアルミサエルの身体を掴んでいるが、苦しそうに身悶えしている。
エントリープラグ内のレイ
零号機に呼応するように、腹部からのミミズ腫れが腹部から胸にまで広がっている。

頬を染め、喘ぐレイ。
「う…う…くっ…はっ…」
発令所
伊吹
「危険です。零号機の生体部品が侵されていきます」

「エヴァ弐号機、発進。レイの救出と援護をさせて」
指示を出すミサト。

射出される弐号機

発令所
伊吹
「目標、更に侵食!」
更に侵食を進めるアルミサエル。
レイのミミズ腫れも首筋近くまで来ている。
発令所
リツコ
「危険ね。既に5%以上が生体融合されているわ」

轟音と共に弐号機が地上に出る。

発令所
ミサトがアスカに指示を出す。
「アスカ、あと300接近したら、ATフィールド最大でパレットガンを目標後部に撃ち込んで。
いいわね。
エヴァ弐号機、リフトオフ!」

しかし、弐号機は動かない。

発令所
「出撃よ!アスカ、どうしたの?」
ミサト、伊吹の方を向いて問いかける。
「弐号機は?」

伊吹が答える。
「ダメです。シンクロ率が、2桁を切ってます」

ミサト驚愕。
「アスカ!!」
エントリープラグ内でうなだれているアスカ
涙声でつぶやいている。
「動かない。動かないのよ…」
発令所
日向に指示するミサト。
「このままじゃ餌食にされるわ。戻して。早く!!」

地下へ降ろされる弐号機。

エントリープラグ内のレイ
既に侵食は頬にまで達している。

身をのけぞらせ、喘ぎながらも身体を這い回る異様な感触に耐えるレイだが、その意識にアクセスするモノが在った。
暗闇の中に立つプラグスーツ姿のレイ
何者かの存在を感じて、問いかける。
「誰?私?エヴァの中の私?」
ノイズ
「いえ、私以外の誰かを感じる」
ノイズ
いつの間にか、そこはオレンジ色に染まったLCLの海。
水面に爪先も付けず浮かぶレイの前に、太股までLCLに浸かり顔を伏せたもう一人のレイが現れる。

「あなた誰?使徒?私達が使徒と呼んでいるヒト?」
『私とひとつにならない?』
「いいえ、私は私。あなたじゃないわ」
『そぉ。でもだめ、もう遅いわ。』
レイの腹部からミミズ腫れが広がる。
『私の心をあなたにも分けてあげる。
この気持ち、あなたにも分けてあげる。』
ミミズ腫れが胸から頬にまで広がる

もう一人のレイが顔を上げる
『痛いでしょ?心が痛いでしょ?』
「痛い…。いえ、違うわ。
…寂しい。そう、寂しいのね」
『寂しい?解らないわ。』
「独りが嫌なんでしょ?
私達はたくさんいるのに、独りでいるのが嫌なんでしょ?
それを『寂しい』と言うの」

もう一人のレイが皮肉っぽい笑みを浮かべる。
『それはあなたの心よ。
悲しみに満ち満ちている、あなた自身の心よ。』

水面に水滴が落ち波紋が広がるイメージが、レイの意識を現実に引き戻す。


エントリープラグ内のレイ
ハッと目を見開くと、うつむいた自分の胸元を、LCL との比重の違いでゆっくりと落ちる、
弾力のあるクリスタルのようにきらめく液体の粒に気付く。

それが自分が落とした涙の粒であることに気付くレイ。
「あっ…これが…涙?」

レイは自分の手のひらにゆっくりと落ちる涙を見つめ、更に目を見開いてつぶやく。

「泣いているのは、私…」
発令所
苦しむ零号機の様子に、ミサトは思わず叫ぶ。
「レイ!!」

ゲンドウが口を開く。
「初号機の凍結を現時刻をもって解除。直ちに出撃させろ」

ミサトが驚いて振り向き聞き返す。
「えぇっ…?」

ゲンドウはファイティングポーズを崩さず命令をくり返す。
「出撃だ」

ミサトは憮然とした表情で答える。
「はい」

発進する初号機。

片や、回収される弐号機。
エントリープラグ内のアスカが涙声でつぶやいている。

「なによ…アタシの時は、出さなかったくせに…」
リフトオフする初号機。
ミサトの指示が飛ぶ。
「ATフィールド展開、レイの救出、急いで」

シンジは戦闘モードに入っている。
「はい」
初号機はATフィールドを展開するが、それに敏感に反応するアルミサエル。

エントリープラグ内で振り返るレイ。
「碇くん?!」

アルミサエルの触手が初号機へと走る。

初号機はかろうじて避けるが、パレットガンを破壊される。

零号機のエントリープラグ内
アルミサエルの動きが、自分の想いによるものであることに気付くレイ。
「これは…私の心…。
碇くんとひとつになりたい…」

瞬時に決断するレイ。
「だめ!!」

そして、零号機のATフィールドを反転させる。
発令所
伊吹がモニターを見て叫ぶ。
「ATフィールド反転!一気に侵食されます!!」

リツコがつぶやく。
「使徒を抑え込むつもり?」

叫ぶミサト。
「レイ!機体は捨てて逃げて!」
零号機のエントリープラグ内
レイは自爆装置を操作しながらつぶやく。
「だめ、私がいなくなったら、ATフィールドは消えてしまう」

そうなれば抑えを失ったアルミサエルは容易に初号機を餌食にするだろう。

「だから…だめ」

震える手でレバーを引く。

[ Drive A Mode: D ]
自爆シークェンスがスタートする。
発令所
レイの意図に気付き、つぶやくミサト。
「レイ…死ぬ気?」

伊吹が叫ぶ。
「コアが潰れます!臨界突破!!」
零号機のエントリープラグ内
光の中に寂しげに立ち去ろうとするゲンドウの面影を見るレイ。
オーバーラップして、シンジのはにかんだような笑顔が…。

レイの見開いた目から涙があふれる…。

「碇く…」
強烈な閃光と轟音と共に爆発する零号機。

その映像に呆然とする発令所の面々。
高熱に溶けた土砂に半分埋まった初号機。
そのエントリープラグの中で茫然とするシンジ。

何が起こったのか、何も考えることができなかった。
ただ、考えることを止めることで、自分を保つしかなかった。
発令所
青葉が我に帰り、報告する。
「目標、消失」

ミサトは身体を震わせながらも次の指示を出す。
「現時刻をもって、作戦を終了します。
第一種警戒体制へ移行」

日向が答える。
「了解。状況イエローへ速やかに移行」

ミサト
「零号機は?」

伊吹は沈んだ声で答える。
「エントリープラグの射出は、確認されていません」

ミサト
「生存者の救出。急いで」

「もしいたらの話ね」
冷たいリツコの声。

「!!」
ミサトは目に涙を浮かべ、キッとリツコの方を振り返る。

リツコは白衣のポケットに手を突っ込み、顔を背けて立っていた

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