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新世紀エヴァンゲリオン++

第壱拾参話:その手は何の為に…


シンジはいつものあの場所に居た。
初号機のエントリープラグの中に…。

(また、あの夢だ…)

そして、右手にカヲルの存在を感じる。

(ああっ、駄目だ!!これは、夢だ!夢なんだ!!)

右手に力がこもり、肉がひしゃげ、骨が砕ける感触がシンジの心を切り裂く。

(夢なのに!夢なのに!!…ちくしょう!どうして、またカヲルくんを…)

血に染まった自分の手を見つめる。

そうして、しばらくそのまま、シンジは呆然と暗闇の中に佇んでいた。

そんなシンジの前にぼんやりとカヲルの姿が浮かび、その姿に気付いたシンジは顔を上げる。

(カ…カヲルくん…)

シンジの目に安堵の色が浮かぶ。

だが、カヲルは悲しげな表情を浮かべ、シンジに語りかける。

(シンジ君、君が覚えていてくれる限り、僕はここに留まることができる。
 そして僕はそれを望んでいる。
 君達の未来を確かめたいんだよ。
 たとえ僕の存在が君を苦しめることになっても…。
 すまない…シンジ君…)

そう寂しげに言うと、シンジに背を向け去って行こうとするカヲル。
その姿がスウッと薄れて消えてしまう。

(待ってよ!カヲルくん!!
 …暗い…ここはどこなんだ…カヲルくん!どこへ行ったんだよ!!)

だがその暗闇からは何の返事も帰ってこない。不安がつのる。

(カヲルくん!ぼくをひとりにしないでよ!!カヲルくん!!)

その時シンジは急に辺りが柔らかな光に包まれるのを感じた。

(なんだ?…暖かい…これは…まるで…)

自分の体が浮き上がって行くような感じがする。

『…くん……か……りく……いかりくん…』

急速に意識が現実へと引き戻され、目を覚ますシンジ。
すると、目の前に心配そうなレイの顔が有った。

「碇くん…大丈夫?」

意識がはっきりすると、シンジはパジャマ姿のレイがシンジの上半身に覆い被さるような姿勢でシンジの頭を抱きかかえるようにしているのに気がついた。

「あ、綾波…」

自分の胸に当たるレイの柔らかな胸のふくらみの感触を急に意識してしまうシンジ。

レイはシンジの頭を抱いていた腕を外し、上体を起こしてシンジを見つめて心配そうに問いかける。
「…どうして…泣いてるの?」

シンジはレイの言葉で自分が涙を流していることに気付き、慌てて手でそれを拭い、誤魔化すように訊ねる。
「あの、どうしてここに?」

非常時に備え、お互いにドアロックの暗証番号を教え合ってはいたが、今までレイがシンジの部屋に勝手に入ってくることはなかったので、シンジはなぜレイがここにいるのか解らなかった。

レイもシンジの問い掛けに戸惑った様な表情を見せる。

「わからない…。
 急に目が覚めて…碇くんが助けを求めているような…そんな気がして…。
 胸が…締めつけられるような感じで…ここに来ずにはいられなかったの。
 そうしたら碇くんが苦しそうにしていたから…。
 ごめんなさい…勝手に入って来てしまって…」

「そうか…じゃぁ、あれは綾波だったんだね」
(ぼくを包み込んでくれたあの暖かい光は…)

「?」

シンジは上体を起こし、ためらいがちに話しはじめる。
「…夢を、見たんだ…」

「夢?」

「そう、カヲルくんの夢だったよ。
 今でも時々見るんだ」

そう言うとシンジは自分の右手をじっと見つめる。

「ぼくは、この手で、カヲルくんを殺してしまったんだ。
 みんなは彼は使徒だったから仕方なかったって言うけど、
 ぼくにとってはカヲルくんはかけがえのない友達だったんだ。
 だから忘れられない、忘れちゃいけないんだ。
 その罪は一生背負って行かなければいけないんだ」

レイはそう言ってうなだれるシンジの右手をそっと両手で包み込み、
シンジを元気づけようと必死に言葉を紡ぐ。

「碇くん…この手は…彼の血に濡れて…罪にまみれているのかもしれない。
 でも…碇くんはその同じ手で…私を救ってくれた…。
 私にとってはこの手は…正に救いの手だったの。
 それに…それに…この手で作ってくれる碇くんのお料理やお弁当は、
 私を…私達を…幸せな気持ちにさせてくれる。
 だから…だから……。
 …ごめんなさい。
 私…碇くんの苦しみを、少しでも和らげてあげることができればいいのに…。
 私には…何もできない…」

シンジの苦しみを自分の苦しみに感じているかのような、そして自分にはシンジの心を救うことができないのかという焦燥が混じり、辛そうな表情のレイ。

だがシンジは、自分の目をその少し潤んだ美しい紅い瞳でじっと見つめ必死に語りかけるレイの、その手から伝わる温もりに心が安らぐのを感じていた。

「綾波、何も出来ないなんて、そんなことないよ。
 今、こうやってぼくの手を包み込んでくれているきみの手は、
 ぼくの手だけじゃなくって、心までも包み込んでくれているような感じがするよ。
 なんだか…安心できるんだ」

シンジの言葉に、少し表情を和らげるレイ。
「そう…良かった…」

「『生と死は等価値』か…カヲルくんが言った言葉だけど、
 破壊も創造も、そして誰かを救い、護る事も、
 この同じ手で行う事が出来るってことなのかもしれないね…」

(辛いけど、ぼくは、きみのことを忘れはしないよ…カヲルくん)

「碇くん…」

シンジは柔らかな笑顔を浮かべると言う。
「綾波…ありがとう…もう大丈夫だよ」

優しい瞳でシンジを見つめ、無言でコクリと頷くレイだった…。


レイが部屋に戻るのを見送った後、シンジはダイニングで冷たい麦茶を飲んでいた。

(綾波、どうしてぼくが夢にうなされてるのがわかったんだろう?)

ボンヤリとそんなことを考えているうちに、猛烈な眠気が襲って来た。

「ふぁあ…、やっぱり眠いや。朝まで時間有るし、もう一眠りしよう」

先程の疑問も眠気の前に忘却の彼方へ押しやられてしまった。


翌日・NERV 本部内・リツコの私室
リツコはもう5ヶ月目に入ってたが、お腹の方はまだそれほど目立ってはいない。
禁煙はちゃんと続けているようで、デスクの上には灰皿の代わりにガムやらキャンディやらが入った小さなバスケットが置いてある。

デスクに向かってキーボードを叩くリツコの後ろには、コーヒーカップを片手にしたミサトが立っていた。

リツコはディスプレイから目を離さずにミサトに説明する。
「既にレイとシンジくんのゲノムマップは完成しているわ。
 これによればレイはユイさんとよく似た表現型を持っているけど、
 それは遺伝子型が同じだということではないの。
 MAGIでのシミュレーションではレイとシンジくんを交配させた場合、
 ヘテロ接合性の減少率は…」

リツコの説明に眉をひそめ、嫌悪感を露にするミサト。
「交配?人間なのよ?」

リツコはミサトの不機嫌そうな声に椅子を回転させて体ごと振り向くと、その特徴的な眉を片方だけ持ち上げて答える。
「遺伝子工学では一般的な用語よ」

ミサトはいまいち納得できない様子だが話を促す。
「ま、難しいことはいいわ、結論は?」

リツコは薄めに淹れたコーヒーを一口すすると、カップの中をのぞきながら答える。
「あのふたりの親縁係数は約1/13。
 普通分母は2の累乗になるんだけど、レイは加工された遺伝子を持っているから、
 さすがに妙な事になってるわね。
 いとこ同士の場合は1/16だけど、仮に1/8(異父兄弟)で子供を作った場合でも、
 必ずしも遺伝障害が出るわけではないわ。
 いずれにしろ100%安全と確認できたわけではないから、
 今ふたりの遺伝情報を元に MAGI にシミュレーションさせてるわ」

「ふぅん、要するに『大丈夫そうだけど、ある程度心配は残ってる』ってわけね」

(科学者って、どうしてもっと簡単に言えないのかしら?)
ミサトはそう思いながら質問を重ねる。

「で、どのくらいで結果が解るの?」

「2月から始めて現時点での進捗状況は約20%…まだ暫く掛かるわね」

リツコの答えに驚くミサト。
「MAGIでもそんなに時間掛かるの?!」

「もちろんフルで使えればもっと早いけど、これは正式な仕事ではないし、MAGIは多忙なのよ。
 過密スケジュールの隙間を縫って複雑なシミュレーションをこなさなければならないんだから、
 そんなに簡単ではないのよ。
 それにレイの細胞の加齢シミュレーションも同時に行ってるし。
 でも、どうやらレイの15歳の誕生日には間に合いそうね」

「あら、リツコ、何か企んでるの?」

ミサトが探るような目つきで見ると、心外そうな表情で答えるリツコ。

「人聞きの悪い。誕生プレゼントよ。ささやかな、ね。
 もちろん、いい結果が出れば、だけどね」

その答えにミサトは真顔になる。
「いい結果であって欲しいわね」

「そうね…」
慈愛に満ちた表情で自分のお腹の辺りに視線を落として答えるリツコだった。



しばし沈黙が流れたが、リツコが顔を上げ、口を開く。
「ところでミサト、アスカにレイの秘密を話した時のこと、覚えてる?」

ミサトは右手を顎に当て、その肘を左手で掴むポーズで答える。
「ん?リツコがレイに向けて銃をぶっ放した時のこと?」

「そう、あの時、シンジくんがレイをかばうように割り込んだでしょ?」

「ええ、私も驚いたけどね」

「驚くのはまだ早いわ」

「え?どういうこと?」
怪訝な表情を浮かべるミサト。

「あの時の記録を分析してみると、シンジくんが私たちの間に割り込んだ時、
 既にレイはATフィールドを展開してたのよ。
 でも、シンジくんは何も無いかのようにレイのATフィールド内に入り込んでいた」

「レイがATフィールドを緩めたんじゃないの?」

ミサトの問いに、リツコはキーボードを操作して、ディスプレイに何かのデータを表示させる。

「計測記録によればそれは無いわ。最初から銃弾を弾き返すくらいの強度を保っていたわ」

ディスプレイをのぞき込むミサト。
「どういうこと?」

「MAGI は判断を保留してるわ。実験してみる必要があるかもね」

「実験?」

「そ、明後日のレイの定期検診の時、シンジくんも一緒に来てもらいましょ」
そう言って携帯電話を手に取るリツコだった。


レイの定期検診の日
一緒に来るように言われたシンジは、レイに付き添って来ていた。

学校はまだ春休み中だが、レイは本部に来る時はいつも制服を着るようにしているようなので、シンジも付き合って制服で来ていた。

指定された検査棟までの通路を歩きながら、シンジはレイに訊ねてみる。
「一緒に来いって言われたけど、今日は何をするんだろう?何か聞いてる?」

「いえ、聞いてないわ」

「そう…」



受け付けで教えられた検査室に着くと、リツコとミサトが待っていた。

リツコはチェックシートを挟んだクリップボードを片手に足を組んで座ったまま顔を上げる。
「ふたりとも来たわね。
 まず、レイはいつもの検査を、シンジくんも通常の検査を受けてもらうわ」

「「はい」」

「シンジくん、そんなに緊張しなくっていいから。
 実験はその後よ」



一通りの医学検査の後、ふたりは体中に種々の計測用のセンサーを貼り付けられて立っていた。

リツコが指示する。
「レイ、半径1mほどの円筒状ATフィールドを作ってみて」

「はい」

レイが自分を中心に円筒状の壁をイメージすると、肉眼ではなんの変化も無いように見えるが、リツコの前のディスプレイ上に画像処理された円筒状のATフィールドが表示される。

リツコはデータをチェックしながらレイに指示を出す。
「少し強度を強めて」

「はい」

「OK、ちょっと照明を落としてみるわね」

リツコが照明の照度を落とすと、レイの回りにボンヤリと輝くオレンジ色の壁が現れる。

リツコは満足そうに頷くと、更に指示を出す。
「そのまま維持して、目をつむっていてちょうだい。
 ミサト、ちょっとそれを触ってみて」

「え?私?」
ミサトはちょっと腰が引けている。

「そう、大丈夫よ、レイがその気にならなければ、害は無いわ」

「え、ええ」
恐る恐るそのオレンジ色の壁に触れるミサト。

「へぇ、ここに空気の壁が有るみたい。面白いわね…」
先程は尻込みした事も忘れ、ペタペタとそれを触り回している。

「そ、じゃ、今度はシンジくん。
 同じように触ってみて」

「はい」

そう答え、光の壁に右手を伸ばすシンジだが…。

「あれ?…通り抜けちゃいましたけど」

シンジの手は、そこにはまるで何の障害も無いかのようにすり抜けてしまう。

「うそ、だって、私には、ほら…」

ミサトがシンジと同じ場所に手を伸ばすが、光の壁に遮られ、中までは届かない。

「シンジくん、その手に何かを感じる?」

「え…ええと…」
自分の手に精神を集中させるシンジ。
「壁の中は、何だか温かい感じがします。それ以外は、特に…」

「そう。レイ?」
リツコは今度はレイに問いかける。

「はい」

「あなたは今、何を感じている?」

レイは目をつむったまま、ためらいがちに答える。
「……碇くんを…感じます…」

微かに震えるように揺らめく光のカーテンの中で、目をつむって立っているレイの頬はうっすらと紅潮している。

シンジが不思議そうに手を動かすと、その動きに合わせてレイは身体をピクッと震わせ声を漏らす。
「んっ…」

リツコの耳元でミサトが囁く。
「ちょっとちょっと、リツコ、これって、なんか、ヤらしくない?」

リツコも同じものを感じていた。
「そ…そうね(汗)。この辺にしておきましょうか。レイ、もういいわよ」

ATフィールドの光が消えると同時に、
「…はぁ…」
と小さく息を漏らすレイ。
まだ少し頬が赤く、瞳も潤んでいる。

シンジもそんなレイの様子にドギマギしていた。
(綾波…どうしたんだろ?)

そんなふたりを見て複雑な表情で顔を見合わせるリツコとミサト。

「あ、ええと、今日の実験はこれで終わりよ」

リツコが口を開き、照明を戻すと、ふたりの身体に貼り付けたセンサー類を手早く外しはじめる。

「ふたりとも、協力ありがとう、お疲れさま」

シンジがリツコに訊ねる。
「あの…何だったんですか?今の実験」

「ん…今はちょっと教えられないわ。
 まだ仮説の段階に過ぎないし。
 でも、今日のデータを解析して仮説が実証されれば、
 いずれ教えてあげられると思うわ。
 ふたりとも医学検査は問題なし、まったくの健康体だし何も心配は無いわ。
 帰っていいわよ」

「あ、はい。行こうか、綾波」

「…ええ」



ふたりが帰った後、ディスプレイに向かい考え込んでいる様子のリツコに、ミサトが訊ねる。

「今の、どういう事なの?」

リツコは MAGI から報告された検査結果のレポートに目を通していた。

「シンジくんからは特別な反応は何も検知されなかったわ。
 そして、レイのATフィールドの強度も、揺らぎは有るもののほぼ一定だった。
 考えられるとすれば…そうね…ATフィールドは『心の壁』…。
 そしてレイのATフィールドはシンジくんに対しては透過なのよ。
 つまり、レイはシンジくんに対して完全に心を開いているということね。
 でも、いくら好きな相手でも、あんなに無条件に受け入れられるものなのかしら?
 いえ…シンジくんに拒絶される事を、無意識のうちに恐れているのかもしれないわね。
 だから自分も、けっしてシンジくんを拒絶したりはしない」

「そういうことなの…。
 シンジくんしかいないものね、あの娘には…。
 かわいそうな娘ね…」
ミサトはしんみりとした表情になる。

「でも、かわいいわ…。
 あんな娘にそこまで想われるなんて、シンジくん、幸せ者ね」
リツコは微かに笑みを浮かべている。

真顔で答えるミサト。
「ふたりとも、幸せになって欲しいわよ、ほんとに」

「そうね…。どうなの?あのふたり」
振り向いてミサトに訊ねるリツコ。

肩をすくめてお手上げポーズのミサト。
「全然進展してないわね。
 シンちゃんも、キスくらいしてあげればいいのに…」

リツコは口の端に笑みを浮かべる。
「シンジくんは奥手そうだものね。
 レイはどうかしらね?
 あの娘がリードする姿ってのも、全然想像できないけど」

そう言いながらディスプレイのデータを見ていたリツコの表情が引き締まる。
「それにしてもあの時のレイ、あの娘、明らかに性的興奮を感じていたわね」

「あ、やっぱり?」
ミサトは先程のレイの様子を思い出した。

「ええ、この5番のグラフ、リビドー値のこの動き、その兆候を示しているわ」

「ATフィールドって、そういうもんなの?」

リツコはミサトの方を向くと、手に取ったカップからコーヒーを一口すする。
「さぁ?でも、非常に興味深いデータが得られたわね」

「あのレイがねぇ…。
 でも、あの娘ってまだ…」
少し悲しげな表情を浮かべるミサト。

「そうね、まずは、それを解決してあげなきゃね」
リツコはそう言いながら、キーボードを操作し、別の計測データをディスプレイに表示し、それに見入る。

(それにしてもこの8番から12番までのパターン…エヴァとの A10神経接続と…。
 いえ、15番までを考慮するとダミープラントでの記憶移植シークエンスと似てるわね。
 これは…もしかすると…)

新たな糸口を見つけたリツコが思考の海に沈むのを見て、ミサトは肩をすくめるとそっと部屋を出て行くのであった。


本部からの帰り道
夕日に照らされた坂道を、ふたりは並んで歩いていた。

「今日の実験、何だったんだろうね?」

シンジの問い掛けに、立ち止まってじっとシンジを見つめるレイ。
「………」

そして、そんなレイの様子に戸惑うシンジ。
「??どうしたの?綾波?」

レイは視線をシンジの手元へ落とし、小さな声でつぶやくように言う。
「……手…」

「え?」
思わず聞き返すシンジ。

「手…繋いでくれる?」

レイの意外な言葉に、シンジは戸惑いながらも手を差し出す。
「あ…う、うん」

その手にそっと手を重ねるレイ。
「碇くんの手…とても…気持ちいいの。
 だから…私…こうしていたい」

「あ、綾波…」
(もしかして、あの時、気持ち良かったの?)
シンジはあの時のレイの様子を思い出し、急になんだかいけない事をしているような気分になってしまい、複雑な気持ちが表情に出てしまう。

そんなシンジの様子に、レイは不安げに訊ねる。
「…迷惑?」

「そんなことないよ!
 ぼくだって、綾波とこうして歩けるのは嬉しいよ」
慌ててそう言いながら、
(そうだよ、手を繋いでるだけなんだから、別にどうと言うことないんだよ)
と自分に言い聞かせるシンジ。

「そう?良かった…」
そう言って少し頬を染め、うつむき加減に前を向くレイ。

プラチナプルーの髪は夕日を受けて淡く輝き儚げな美しさを際だたせ、その少しはにかんだような表情を浮かべた愛らしい横顔に、シンジは思わず見とれてしまう。

(綾波…ほんとに…可愛いなぁ…)

繋いだ手の柔らかな感触と温もりに、顔に血が上り胸が高鳴るのを感じるシンジだった。


夕日が手を繋いで歩くふたりの影を坂道に長く投影していた…。


To Be Continued...

あとがき
今回はちょっと長くなってしまいましたが、今後の展開の要となる重要なエピソードです。

ちなみに、シンジの部屋はレイ達の部屋と線対称になっていて、レイは元ミサトの部屋にシンジが使っていたベッドを持ち込んでいて、シンジは壁ひとつ隔てた部屋に畳に布団を敷いて寝ています。

ミサトは出番がなかなか有りませんが、一応保護者としてチルドレンの生活を把握しています。


ぜひ、あなたの感想をこちらまで>[ kusu3s@gmail.com ]

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