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新世紀エヴァンゲリオン++

第参話:信じる心


NERV 本部・リツコの私室
リツコとミサトはシンジ、レイ、アスカを呼び出していた。

ミサトが口を開く。
「さて、アスカとレイはこれから一緒に暮らすわけだけど、
その前にアスカに知っておいてもらう事が有るわ。
レイ、シンジくん。いいわね」

「「はい」」

「なんなのよ、みんな神妙な顔しちゃって…」

「アスカ、よく聞いて。レイの事よ。
レイはね、生物学的には純粋なホモ・サピエンスではないの」

「なによそれ、レイが人間じゃないって事?」

「有り体に言えばそういうことね」

そして、レイの秘密を打ち明けるミサト。

だが、カヲルと会ったことがないアスカにはピンと来ない。
「そんな、だって、レイは私達と変わらないじゃない。
そりゃ、目や髪の色はちがうけど、アルビノって…」

そこでリツコが歩み出て声を掛ける。
「レイ」

「はい」

レイの返事を聞くや否やリツコはポケットから銃を抜き、レイに向け発砲した。

パン!!キィーン!!

甲高い音が室内に響き、天井に空いた穴からパラパラと破片が落ちる。

シンジは咄嗟にレイをかばうようにリツコに背を向けレイとの間に割り込んでいた。

リツコはシンジの行動にちょっと驚いたようだった。

レイも目を見開いてシンジを見ている。
「碇くん…私なら…大丈夫なのに…」

「あ…うん、だけど、身体が反射的に動いちゃったんだ…」
自分の行動に戸惑っているシンジ。

「リツコ、あんたも無茶するわねぇ…」
とあきれ顔のミサト。

「ふ…問題ないわ」
リツコはそれだけ言うと、銃をまたポケットにしまう。

そしてそれぞれの思惑を胸にアスカの反応をうかがう。

アスカはリツコが発砲した瞬間、シンジが割り込むのと同時に、そこに見覚えの有る
光の壁が出現したのを見て、唖然としたようにつぶやいていた。
「ATフィールド…」

「そう。今のはレイよ」
リツコが説明する。

「レイが?ATフィールドを?
そう…そういうことなの…」
そしてアスカが探るような目でレイを見ると、レイは居心地悪そうに視線を逸らす。

アスカはミサトに視線を戻すと落ち着いた声で問いかける。
「アタシのいない間に何が有ったの?
アタシの弐号機を乗っ取ったっていう最後の使徒ってのの話もまだ聞いてないし、
第一、なんで最後だって解るのよ。
エヴァは全て無くなったって聞いたけど、何がどうなってんの?」

ミサトがそれに答える。
「そうね。アスカにはまだ話してなかったわね。
機密事項だけど、エヴァのパイロットだったアスカには知る権利は有るわね。
いいでしょ?リツコ」

「ええ、私が話すわ」

そしてリツコは、カヲルの事、人類補完計画の事、リリスとアダムを封印した事、
ゲンドウとユイのこと、エヴァのコアのこと、それらを簡潔に説明する。

その説明の間、アスカはチラチラとレイとシンジを見ていた。
ふたりとも硬い表情をしていたが、シンジの右手がレイの左手をしっかりと握って
いるのにアスカは気付いていた。

リツコの話が終わると、アスカは天井を見上げ、ひとつため息をつく。

「そう、そんなことがあったの…。
弐号機のコアにはママがいたのか…」
(ごめんなさい、ママ、私、気がつかなくって…。
でも、もう、眠りに就く事が出来たのよね。
おやすみなさい…ママ…)

アスカはそのまましばらく考えをまとめていたようだったが、シンジの方を向くと
真剣な表情で問いかける。
「シンジ、あんたは知ってたのよね。全部」

「うん」

「それで、あんたは平気なの?」

「ぼくにとって綾波は綾波だ。それ以外の何者でもないよ。
あの時、綾波が言った『人として生きたい』って言葉を信じてるから。
綾波を信じてるから。
ぼくには特別な力なんて無いから、綾波を護る事なんて出来ないかもしれない。
でも、綾波の心を支えてあげる事は出来ると思う。
だから、ぼくは決めたんだ。
何があっても、絶対に、綾波を信じていてあげるって」
毅然とした態度で答えるシンジ。

「碇くん…」
レイはその言葉に目を潤ませシンジを見つめていた。

そんなふたりを見て表情を和らげるアスカ。
「は、ちょっと妬けるわね、あんた達。
レイ、あんたは幸せ者よ」

そう言うと、レイに歩み寄り、右手を差し出す。
「ま、シンジがああ言うんじゃ、アタシだってこうせざるをえないわよね」

アスカの意図を察し、おずおずと右手を差し出すレイ。
「アスカ…ありがとう…」

アスカは笑顔でその手をしっかりと握る。
「よろしくね。レイ」

そしてシンジを見て言う。
「シンジ、今のあんた、格好いいわよ。
ちぇ〜、ちょっと惜しかったかな〜?」

「えっ?アスカ?」
意味深な発言にうろたえるシンジ。

「バカ、冗談よ!」
アスカは少し赤くなっている。

ミサトとリツコはほっとした表情でそんなやり取りを見ていたが、そこでミサトが
三人に歩み寄る。

「アスカ、解ってると思うけど、レイの事や、今ここで聞いたことは…」

「はいはい、全ては極秘に、でしょ。
世の中、私みたいに理性的で聡明な人間はそうそういないもんね」

「理性的?アスカが?」
ポツリと漏らすシンジ。

アスカは聞き逃さない。
「なによ!なんか文句有るってぇの?」

ちょっと反発してみるシンジ。
「だから、そういう所がどうして理性的なのさ」

「うるさいわね!バカシンジ!!
あ〜っ、ちょっとでも格好いいなんて思ったアタシがバカだったわ!
やっぱりあんたはバカシンジよ!」

そんな三人を見ていたミサトはつぶやく。
「世の中、みんな、バカばっか…か」

「ふふ…」
リツコも微笑みを浮かべていた。


後日、学校で…
あの時から誤解したままのヒカリやトウジ、ケンスケには、アスカの口から
「最後の戦いの時、使徒の親玉・ラスボスね、それにレイが捕まっちゃったってわけ。
それを助け出したのがシンジ。レイはラスボスに取り込まれちゃって、感覚がそいつと
一体化してたから、シンジの初号機がその胸を切り裂いてレイを助け出した時に、
その痛みをもろ感じてたってわけね。
で、ラスボスを倒した後、シンジは裸だったレイを思わず抱きしめちゃったってわけなのよ。
私もミサトに聞いたんだけどね」
と簡潔に説明して、なんとか誤解を解く事が出来たようだ。

「碇くん、ごめんなさい、変な誤解しちゃって。
でも、凄いわね、碇くん。まるでゲームか映画のヒーローみたいじゃない」
と、ヒカリ。

「へぇ、そやったんか」
「うぅ…、そのシーン、撮りたかったなぁ…」
トウジとケンスケは悪びれる素振りも見せない。

「だいたい、レイも省略しすぎなのよ。
あれじゃ誤解して下さいって言うようなもんじゃ…
ってもしかして、レイ、あんた、わざとじゃ…」
そう言ってレイを見るアスカ。

「私…知らない」

とレイは視線を逸らすが、その頬がほんのりと赤くなっているのをアスカは見逃さなかった。

(意外とやるわね、この娘)

そう思うアスカだった。

To Be Continued...

あとがき
なんか、ようやくスタートラインについた感じです。

…って、このペースで、続くわけ?これ?(気が遠くなりそう^_^;)

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