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新世紀エヴァンゲリオン++

第五話:世界中でぼくだけでも


2016/02/17(水)
昼休み、学校の屋上でお弁当を広げるいつものメンバー。

「ヒカリ、明日、2/18 って、ヒカリの誕生日よね。おめでとう」
アスカがヒカリに話しかける。

「うん、ありがとう、覚えててくれたのね、アスカ」
と、嬉しそうなヒカリ。

「ま、親友だしね」
と照れ臭そうなアスカ。

「へぇ、そうだったんだ…。おめでとう、洞木さん」
と、こちらはシンジ。
「ぼく、知らなかったよ。ケンスケやトウジは知ってたの?」
とふたりに問いかける。

「も、もちろん、わいは知っとった」
ちょっと顔が赤いトウジ。

「ふふん、オレのデータベースは完璧だよ」
と得意げなケンスケ。

だが、アスカがその失言を見逃すはずが無い。
「ちょっと、ケンスケ?
そのデータベースってやつ、後でじっくり見せてもらいましょうか?」
ギロリとケンスケを睨むアスカ。

(ま、まずい…)
青くなるケンスケだが、もはやどうにもならない。


合掌。


「ま、それはそれとして、パーティーとか、やらないの?」
とアスカ。

「ええ、うちはいつも家族で祝ってくれるから…」

「ふ〜ん、そうなんだ…。
あ、じゃぁ、この週末にでも、私達で誕生パーティーやらない?」
と提案するアスカ。どうもパーティーをやりたいらしい。

「でも、アスカ、週末はぼくたち、引っ越しだけど…」
と、シンジ。

「引っ越しなんて、あんた隣の部屋に移るだけじゃない。
レイだって荷物少ないし、1日有れば充分でしょ?」

「ぼくたちはそうだけど、ほら、ミサトさんが…。
アレ、1日じゃ、絶対終わらないと思う…」

「う〜ん、そうかぁ…」

「アスカ、いいわよ、パーティーなんて。
気にしないで。
12/4 のアスカの誕生日もお祝いしてあげられなかったんだし…」
と、ヒカリ。

「あの頃は、アタシ自身もそれどころじゃなかったしね…。
ま、しょうがないか。ごめんねヒカリ」
あの頃を思い出したのか、ちょっと表情に陰りの浮かぶアスカ。

「いいからいいから」
アスカに気にさせまいと、明るい表情で言うヒカリ。
実を言うと、ヒカリはバレンタインの日にトウジの家に手製のチョコレートケーキを持って行ったのだが、その時トウジは既に誕生プレゼントを用意していて、ヒカリの作ったケーキにローソクを立てて、一足早い誕生パーティーをふたりだけで…はなかったが(トウジの妹もいたので)済ませていたのであった。
やるなぁ、トウジ。

「ところで、碇くんは誕生日いつだっけ?」
そこでヒカリはシンジに振る。

「え?…あ、ぼくは、6/6 だけど…」
と答えながら、シンジはまずい予感がしていた。
(そういえば綾波の誕生日って…)

「そう、覚えとくわね。綾波さんは?」
案の定、ヒカリは次にレイに振る。

「「あ」」

事情を知っているシンジとアスカが思わずハモり、ふたり共しまったという顔になる。

「誕生日?…私…知らない」

寂しげにそう答えるレイに、シンジが慌ててフォローする。

「あの、綾波はさ、ちょっと事情が有って、その…」

三人の態度に、まずい事を聞いたらしいと気付いたヒカリは深追いしない。
「ごめんなさい。何か事情が有るのね。
でも、解ったら教えてね。
私もお祝いしてあげたいから」
と、優しい笑顔で言う。

「ええ、ありがとう。洞木さん」
そう答えるレイだが、やはりその表情は寂しそうであった。

シンジはそんなレイを見て提案する。
「やっぱり、誕生日が解らないなんて、寂しいよね。
リツコさんに聞いてみれば解るかもしれないよ。
今日、帰りに本部へ寄ってみようよ」

「赤木博士に?」

レイは、バレンタインの一件で、リツコにちょっとわだかまりが有るらしい。

アスカはヤレヤレという感じでレイにハッパを掛ける。
「ウジウジしててもしょうがないでしょ?
知ってそうなのはリツコぐらいなんだし、聞くだけ聞いてみたら?」

「そう…そうね」
と、レイも決心したようだ。


夕刻・NERV 本部内リツコの私室
「あら、シンジくん、いらっしゃい。今日はレイも一緒ね、どうしたのかしら?」
とリツコ。
なぜかミサトも一緒にいる(サボりだな)。

「っと、その前に…あの、何か有ったんですか?
さっき、途中で合ったマヤさんがぼくの顔見て変な顔してましたけど…」

普通ならミサトが茶々を入れるところだが、今、レイの前で子供の話題はまずいと判断したミサトは、今日はおとなしくしている。

「なんでもないの、気にしないで。
で?何の用かしら?」
と慌てて話しを逸らすリツコ。

「え?ええ、実は…」
釈然としない物を感じながらも、シンジは話し始める。



「それで私のところへ来たってわけ?」
とリツコ。

「レイの誕生日ねぇ…」
とミサト。

リツコは少し考えて、こう言う。
「誕生日、母親の母体から産み落とされた日。
でも、レイの場合…。
そうね、空気呼吸を開始した日と定義すれば、初めて LCL タンクを出た日かしらねぇ…。
でも、それは今の…三つ目の身体が…って事になるのかしら?
それならあの零号機が自爆した日になるわけだけど…。
それとも最初の身体が…って事になるのかしら?
こっちは記録が残ってないんだけど…」

「う〜ん」
と考え込む一同。

シンジが口を開く。
「でも、なんか違いますよね、それって…」

「それじゃ、どうするの?あ〜、もう、好きなように決めればいいんじゃない?」
とアバウトなミサト。

「そんないいかげんな…」
とあきれ顔のシンジ。

するとそこで、昼休みから自分の誕生日という物について、ずっと考えていたらしいレイが口を開く。
「誕生日、人が生まれて来た事を祝う日。
私が、人として生まれた日。
それは、きっと、あの日。
碇くんが、私の心を、人の心と認めてくれた日。
私、あの日に、人として生まれたの。
だから、私、あの日を誕生日にしたい…」

「綾波…」
(そうか、そうかもしれないな…。
それに、あの日は、ぼくにとっても大切な日だ…)
そう考えるとシンジはレイに賛同する。
「うん…そうだね、それがいいかもしれないね」

「あの日って?」
ミサトがたずねる。

「あの、ターミナルドグマでの、アダムとリリスを封印した日の事ですよ」

「そっか…ええと…何日だっけ?」
とミサト。

「2015/12/25よ」
リツコが即答する。

「それって、クリスマスじゃない!」
驚いたようなミサト。

リツコは眉をしかめて責めるように言う。
「あきれた、今頃気が付いたの?
いつも胸にクロス着けてるくせに」

「あ、あはは、これは父の形見だしぃ、別にキリスト教信者じゃないしぃ、
あのころはそれどころじゃなかったしぃ…」

ゴニョゴニョと弁解するミサトを尻目に、リツコがたずねる。
「でも、いいの?レイ?
普通、そんな日が誕生日だなんていやがるものよ。
みんな、自分を祝ってくれないもの」

「ぼくが祝ってあげます」
と言い切るシンジ。
「信じてもいない宗教の救世主の誕生日ではなく、綾波レイの誕生日を。
世界中でぼくだけでも、綾波を祝ってあげます。
でも、綾波はどう?それでいい?」

コクリとうなずくレイ。
「私、碇くんが祝ってくれるなら、それだけでいい…」

「はいはい、ご馳走様。
じゃ、決まりね。レイの誕生日は 12/25。
生まれ年は 2001年になるのかしら?」
リツコに問いかけるミサト。

「そうね。2001/12/25 生まれという事にしましょ。
戸籍や住民票も作っておかないといけないし」

「って、リツコ、あんたまだ作ってなかったの?」
あきれ顔のミサト。

「今までは必要なかったもの。でも、これからは必要ね。手配しておくわ」


こうして、レイの誕生日は自らの意志で決められたのであった…。

To Be Continued...

あとがき
ヒカリの誕生日が 2/18 だという事に気付き、寝かせてあった誕生日ネタを慌てて書き上げました。
なんか、声優の誕生日がそのままキャラの誕生日、って設定らしいけど、林原めぐみの誕生日はユイの誕生日らしいですね。

全然意識してなかったんですが、あの最後の戦いの日って、月齢から計算すると、奇しくも?期せずして?予定調和?、偶然にもその日は 12/25 だったんですねぇ。

私は宗教は嫌いなんで『エヴァ+』は極力宗教色&オカルト色を排してSF風味で仕上げたつもりだったんですが、所詮は神の掌の上で踊っているのに過ぎないのかも…(;_;)。

秋月さんからのご指摘により『早生まれ』の概念を忘れていた事に気付き、ヒカリの生まれ年を修正しました。
ついでに、レイの生まれ年もシンジたちと同学年でも不自然ではないように 2001年に変更しました。

以下覚え書き。歳順。
カヲル2000/09/13
アスカ2000/12/04
シンジ2001/06/06
ケンスケ2001/09/12
レイ2001/12/25
トウジ2001/12/26
ヒカリ2002/02/18

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