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新世紀エヴァンゲリオン++

第七話:努力と…


昼休みの学校の屋上
お弁当を広げるいつもの面々。

「最近は綾波さんも碇くんの作ったお弁当なのね」
ヒカリは、いつもは購買のサンドイッチだったレイが、このところシンジやアスカと同じ内容のお弁当を持って来ている事に気付いていた。

ちなみに、トウジの弁当は学校が再開されてからずっとヒカリが作って来ていた。
ケンスケは…相変わらず購買のパンである。不憫な奴(;_;)。

「ええ、碇くんが作ってくれるの」
と、嬉しそうなレイ。

「ま、シンジの取り柄ったら、これくらいだもんね」
アスカはそれが当然のような顔をしている。

その言葉にカチンと来るトウジ。
「か〜っ!おまいら女やろ?
自分の分は自分で作るとか、誰かに作ってやろうとは思わへんのか?
ヒカ…委員長をちいとは見習ろうたらどないや?」

その時、アスカの目がニヤリと笑いを浮かべたのを見てヒカリは冷や汗をかいていた。
(もぉ!トウジってば、バレちゃったじゃない!!)

「ふぅ〜ん、プライベートでは、そう呼んでるんだ」

アスカの鋭い突っ込みが入るが、レイは先ほどのトウジのセリフに考え込んでいて聞いていない。

(私、碇くんが作ってくれたお弁当を食べられて、すごく嬉しかった。
碇くんも私がお弁当を作ってあげたら、嬉しい?
私にも、お弁当、作れる?)

そう思ったレイは、おずおずとシンジにたずねる。
「碇くん、私も碇くんにお弁当作りたい。
料理、教えてくれる?」

もちろんシンジに断る理由など無いので、笑顔で答える。
「うん、いいよ。ぼくも綾波の作ったお弁当食べてみたいし」


シンジたちのマンション
その夜から、シンジはレイに料理を教えながら夕食を作ることにした。
お米の研ぎ方から始まり、包丁の使い方、火の使い方など、基本的な事から順番に教えていった。

レイは元々手先が器用なようで、包丁さばきもすぐマスターし、何日かするうちには、簡単な料理なら作れるようになっていた。


「綾波、上達早いね。
これならすぐにお弁当もひとりで作れるようになるよ」

「ありがとう。碇くんの教え方、解りやすいから…」

お揃いのエプロンを着け、ふたり仲良くキッチンに並んで夕食の準備をするシンジとレイを、ダイニングテーブルから頬杖をつきながらぼ〜っと見ているアスカ。

(レイの嬉しそうな顔ったら…。あんな表情、昔のあの娘からは想像も出来ないわね)

(シンジもデレデレしちゃって、あら?
あ〜あ、ちょっと手が触れ合ったくらいでふたりとも真っ赤になっちゃって…。
初々しいって言うか…)

(あ!ほら、おっことした。
ま、今のはどっちもどっちだわね。
意識しすぎなのよ。
かわいいわねぇ、ふたりとも)

(…ちょっと、なに黙って見つめ合っちゃってるのよ!
アタシがここで見てるってのに!?
こっちまでドキドキしちゃうじゃない!)

なんだか点描の輪っかが飛んでるのが見えたような気がしたアスカだが、さすがに見てる方も恥ずかしくなって来たので、茶々を入れる。

「こうして見てると、アンタ達って、まるで、新婚さんね」

「なっ、なに言ってんだよ!アスカ!」
アスカの言葉に、予想通り真っ赤になるシンジ。

だが、レイの反応がアスカの予想と違っていた。

(新婚さん?夫婦?碇くんと私が?
そうなったら、嬉しい…。でも…)
両手で胸の真ん中辺りをキュッと押さえ、うつむいてしまうレイ。

その今にも泣き出しそうな、切なげな表情に驚くアスカ。
「ちょっと、レイ、どうしたの?アタシ、なんか悪い事言った?」

「いえ、そうじゃないの…そうじゃ…。
ごめんなさい、私…」

そう言うと、レイはその場を逃げ出すようにキッチンを飛び出し、自分の部屋にこもってしまった。

その場に残されたシンジはどうしたらいいのか解らず、助けを求めるような目でアスカを見る。
「アスカ…」

「なんか、まずいこと言ったみたいね、アタシ。
ちょっと見てくるわ」

「うん、たのむよ」


レイの部屋
コンコン

「入るわよ?レイ」

返事は無かったが、アスカは一呼吸置いてドアを開け、レイの部屋に入ると後ろ手にドアを閉める。

レイはベッドにうつぶせになって枕に顔を埋めている。

「どうしたの?レイ…」
ベッドの脇にしゃがみ、レイをのぞき込んで心配そうにたずねるアスカ。

「アスカ…ごめんなさい、心配かけちゃって…」

顔を枕に埋めたままのレイが、くぐもった声で答える。

「私…私…。今、とても幸せなの。
とても幸せなのに、幸せ過ぎて不安になるの。
私、今でも幸せなのに、これ以上の幸せを、求めても、いいの?」

そして、レイは顔を上げるとアスカを見る。

「碇くんと、夫婦になれたら、どんなに幸せか…。
でも、私には…。
赤木博士は可能性は有ると言ってくれたけど、
100%保証されたわけではないし…」

「それって…子供のこと?」

「ええ…」

「シンジはそのこと知ってるの?」

「いえ、多分、知らないわ。
碇くんにはまだ言わないでおいて欲しいと、赤木博士には言ってあるし、
私からも言ってないから」

「そう…」
アスカはそう言って少し考えてから口を開く。

「あのさ、今から結婚なんて考えるのも早いと思うけど、結婚って子供を作るとか、
そういう事だけじゃないと思うのよね。
子供なんかできなくったって、ふたりで支えあって生きていく。それが夫婦ってもんでしょ?
ようするに、アンタがシンジとの結婚を夢見るなら、ただ待ってるだけじゃダメ。
もし、もし万が一子供を作れないとなったとしても、それをシンジが知っても、
それでもアンタと一緒に生きて行きたいと、シンジが思うならいいじゃない。
シンジの心をそれくらい強く掴まえておけるように、もっともっといい女になるように、
自分を磨く努力をしなくちゃ。
夢は、希望は、自分自身で叶えるものよ」

「私…そんな夢見て、いいの?」

「何言ってんのよ!生まれはどうあれ、この世に生まれて来たからには、
誰だって幸せになる権利は有るのよ」

「アスカ…ありがとう」

「ほら、日本には『カエルだ〜って、オケラだ〜って、アメンボだ〜って、
みんなみんな、生きているんだ、友達なんだ〜』って歌も有るじゃない」

「カエル?両生類無尾目…。
オケラ?直翅類ケラ科…。
アメンボ?半翅類アメンボ科…。
アスカ、私って…」(十二翅類リリス科?)

「…ゴメン、例えが悪かったわ…」

アスカのバツの悪そうな顔に、思わず顔がほころぶレイ。

レイのその表情を見て安心したアスカは、元気良く立ち上がると言う。
「さ、シンジが心配してるわよ。
行きましょ!」

「うん、ありがとうアスカ。
私、努力する」


夕食の準備が整ったダイニング
ふたりを待っていたシンジは、レイが部屋から出て来たのを見てほっとする。
「綾波、もういいの?落ちついた?」

「ごめんなさい、心配掛けてしまって。
お夕食の準備も途中だったのに…」

「え?ああ、いいよそんな事。
もうほとんど出来てたんだし。
さ、食べよう。冷めちゃうよ」

「うん…」
(碇くん、やっぱり、優しい…)

レイはそう思うと、少し恥ずかしそうに笑顔を浮かべて言う。
「私、努力するから…」
(そして、いつの日か、私…)

シンジはレイを元気づけようと、笑顔で答える。
「うん、綾波なら、努力すればすぐだよ」
(そんなに自分でお弁当を作りたかったのか…)

そう言って微笑み合うふたりを見て、
(なんか、話が噛み合ってないんじゃない?)
そう思うアスカだった。


To Be Continued...

あとがき
なんか、ほとんど『週刊エヴァ++』になってますが…(いつまでもこのペースでは続かないはずだけど…^_^;)。

ケンスケ、なかなか出番が無いですね。アスカ&ケンスケがメインのネタも有るんで、そのうち書く事になるとは思いますが…。

ヒカリ&トウジ…密かに仲が進んでいるようですね。実は彼等の中で一番進んでたりして(具体的には何も考えてませんが…^_^;)。

それにしても、『結婚〜子供』ネタはもっと後にしておこうと思ったのに、アスカったら余計な事言うから…。まっ、いいか。

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