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新世紀エヴァンゲリオン++
第八話:作る喜び、食べる楽しみ
- 昼休み
- いつものようにみんなでお弁当を広げる。
今日はレイが初めてひとりで作ったお弁当をシンジとアスカに持たせていた。
シンジはお弁当箱を開いて、レイの作ったお弁当をしみじみ眺める。
(綾波が作ってくれたお弁当か…)
真ん中に小梅が乗ってるご飯。
ちょっと焦げ目の付いた不格好な卵焼き。
ちゃんと形になってるタコさんウインナー。
星型に型抜きしたニンジンとホウレン草の炒め物が見た目のバランスをうまく取っている。
(うれしいな、一所懸命作ってくれたんだな…)
そう思ってレイを見ると、レイは少し緊張した面持ちでシンジを見つめている。
(なんか、こっちまで緊張しちゃうな…)
シンジはまず卵焼きを食べてみる。
形はともかく、シンジの好みからすると少しうす味だが、おいしくできている。
次にご飯を一口食べてみる。
少し固めのご飯だったが、これはシンジの好みであった。
シンジは先ほどから自分のお弁当にも手を付けずにじっとこちらを見ていたレイに笑顔で言う。
「綾波、おいしいよ。うまくできてるね」
その言葉にレイは緊張が解けたのか頬を緩めると、手元のお弁当に視線を落として口元にかすかに笑みを浮かべる。
(よかった…。碇くんがおいしいって言ってくれた…)
そしてシンジに笑顔を返して言う。
「ありがとう。碇くんが教えてくれたから…」
「うん、でも、作ったのは綾波だから、
綾波の気持ちがこもってるから、
余計においしいのかも知れないね」
「碇くん…」
お弁当を食べるのも忘れて見つめ合ってしまうふたり。
「アンタ達って、どうしてそうすぐに周りが見えなくなっちゃうの?
今なんかも、L2F(Love Love Field)全開で不思議時空発生してたし…。
仲がいいのも結構だけど、周りのことも考えなさいよね!」
アスカの言葉にハッと我に帰り、赤くなるふたり。
「あ、ご、ごめん」
そう言ってお弁当を食べはじめるシンジと、それを見て自分もお弁当に箸をつけるレイ。
「ま、初めて作ったにしちゃ、うまくできてるわよね。
おいしいわよ、レイ」
「ありがとう、アスカ」
「あのさ、これからは交代でお弁当作らない?
ぼくが作ったお弁当をおいしいって食べてもらえるのも嬉しいし、
綾波がこれからどんなお弁当を作ってくれるのかも楽しみだし…」
と、シンジ。
(作る喜び、食べる楽しみ…。
その両方を交互に味わえるのね…素敵…)
そう思い、賛同するレイ。
「ええ、そうね。そうしましょう」
そこにヒカリが口をはさむ。
「交代でお弁当を作り合うって、いいわね。
でも、アスカはどうするの?
アスカはお弁当作らないの?」
「えっ!アタシ?」
急に自分に振られて驚くアスカ。
「だって、ほら…」
ヒカリは蚊帳の外状態で黙々とパンをかじっているケンスケにチラッと視線を投げかける。
「え、アタシは、別にぃ…」
(だって、今更、シンジに料理習うなんて、できないわよ…)
いまいち煮えきらないアスカだった。
- その夜
- 仲良く夕食の準備をするシンジとレイを見ながら、アスカは考えていた。
(料理か…今まで考えてもみなかったけど、楽しいのかな?
このふたりは『ふたりで』料理するのが楽しいんじゃないの?
あ、でも、今朝、レイはひとりでお弁当作ってたけど、なんだか楽しそうだったな…。
…そうか、きっと、おいしいって食べてもらえるところを想像しながら作ってたのね)
アスカはヒカリの家でバレンタインのチョコを作った時のことを思い出していた。
(そうだ!ヒカリに教えてもらえばいいんだわ!)
アスカはそう思い立つと自分の部屋に戻り、携帯を手に取った。
- 後日
- 昼休みに入り、いつものように購買へパンを買いに行こうとするケンスケを呼び止めるアスカ。
「ケンスケ、ちょっと…」
そう言うとケンスケにお弁当の包みを渡す。
「え?これ、オレに?」
「いつもシンジやレイに作らせてばかりじゃ悪いから、
今日からアタシも当番制でお弁当作ることにしたんだけど、
ちょっと量間違えて多く作りすぎちゃったのよ。
もったいないから、アンタにあげるわ」
「サンキュー。オレ、うれしいよ、アスカ」
「うん…。
じゃ、良く味わって食べるのよ!
残したりしたら、ただじゃ置かないからね!」
「残したりするわけないだろ、せっかくアスカが作ってくれたのに…」
「だから、余ったんだって!」
そんなふたりを暖かい目で見守る友人たち。
だが彼らを見る目は他にも有った。そしてその視線は決して暖かい物ではなかった。
「おい」
「ああ、ケンスケのやつ、ついに弁当まで…」
「このところ新作(言わずと知れたアスカ達の写真のことである)の頒布も無いしな」
「今や奴の背任は明らかだ」
「ああ、いよいよ計画の発動の時は来た」
「裏切り者には相応しき死を…」
ここに『U.K.S.I』(裏切り者ケンスケ粛正委員会)が発足したのだった。
ケンスケの命運や如何に?(合掌)
- あとがき
- 今回はなんだか苦労しました。
これというオチが浮かばないぃぃ…。はっ!そうか!!別に落とさなくってもいいんだ!!
『今ごろ解ったの!?』
危うく、本来の目的を忘れるところでした(^_^;)。
というわけで、今回はヤマ無し・オチ無し・イミ…は有るか。
レイが作った初めてのお弁当、どうということのない日常の中の幸せ。それを書きたかったんです。
後半、なんだかアスカの話になっちゃいましたけど(^_^;)。
次回は遅れ馳せながら、ホワイトデーネタです。