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新世紀エヴァンゲリオン++
第九話:欲しいモノは…
(ホワイトデー・前編)
- 2016/03/11(金)放課後
- 校門を出たところでシンジはレイとアスカに言う。
「綾波、アスカ、今日は先帰ってよ。
ぼくたち、ちょっとゲーセン寄ってくから」
「そう…」
少し寂しそうな顔をするレイに、シンジは心が痛んだが、
「なるべく早く帰るから」
そう言うと、ケンスケ、トウジと連れ立って駅の方へと歩いて行った。
名残惜しそうにその後ろ姿を見ていたレイにアスカが声を掛ける。
「レイ、今日はしょうがないわよ。月曜日、ホワイトデーでしょ。
大方あいつら、プレゼントとかどうするか相談するつもりなんでしょ?」
「ホワイトデー?」
「あら、アンタ、バレンタインデーは知ってても、ホワイトデーは知らないってわけ?
ホワイトデーってのはね、バレンタインデーのお返しに、男の子から女の子に
クッキーとかキャンデーとか、それにプレゼントを添えたりして贈る日なのよ」
アスカはバレンタインの時にヒカリからセットで教えてもらっていた。
「そうだったの…」
「そ、3倍返しとかよく言うらしいけど…。
ま、あいつらのお小遣いじゃ、たいした物は期待できないわよね。
もっとも、こういうのは気持ちの問題だから、高価な物ならいいってわけじゃないけどね。
…どうしたのレイ?」
レイは何か考え込んでる様子だった。
「…どうして『ホワイト』デーって言うの?」
もっともな疑問である。が、アスカには答えられなかった。
「しっ知らないわよ!そんな事!!
さっ、帰るわよ!」
- その頃
- その3人はゲーセンへの道すがら、アスカの予想通りその件について話していた。
「ホワイトデーのプレゼント、ケンスケはもう決めたの?」
「ああ、バッチリさ。とっておきのを用意してあるよ」
「へぇ、準備いいなぁ。何にしたの?」
「ふふふ…知りたいか?でも教えない」
と、不気味な笑みを漏らし、眼鏡を光らせるケンスケ。
「そ、そう?」
ちょっと引いてしまうシンジ。
「じゃ、トウジは?」
「え?わいは、その、なんだ…。日曜日、本人に選んでもらうわ」
「それって、デートって事?」
「ん、ああ、まぁ、そうとも言うな」
最近はもう開き直った感のあるトウジである。
「やるなぁ、トウジ」
「そういうシンジはどうするんだよ」
「うん、まだ、決めてないんだ。
どんな物がいいのか良く分からなくって…。
一応、自分でクッキー焼こうとは思ってるんだけど…」
「へぇ、自分で焼いたクッキーか…。
それだけでもいいんじゃないのか?
シンジはそういう特技が有るからいいよな」
「特技ってほどのもんでもないよ。
でも、やっぱり、プレゼントは何か別に用意したほうがいいよね」
「そりゃ、誰だってプレゼントをもらえるなら嬉しいさ。
女の子の欲しいものなんて良く分かんないけど、アクセサリーとか小物でいいんじゃないのか?」
(オレのはちょっと違うけどな)
と思いながらも、一応助言してみるケンスケ。
「う…うん…、何か考えてみるよ…」
(綾波はどういう物をあげたら喜ぶかな?)
その後、一応ゲーセンまでは行った3人だが、シンジはゲームに身が入らず、ずっと考え込んでいた。
(考えていてもしょうがないか…。明日、いろいろ探してみよう)
とにかく街へ出てあちこち回れば何かいいものが見つかるかもしれない、と考えるシンジだった。
- 翌日の土曜日
- アスカはレイを連れてヒカリの家へ遊びに行き、シンジはレイへのプレゼントを探しに街へ出かけて行った。
とりあえず、女の子が好きそうな物が有りそうなファンシーショップに寄ってみるシンジ。
(うう…入るの恥ずかしいなぁ…、やめようかなぁ…)
店の前を何回か素通りするシンジ。
(逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!!)
ようやく覚悟を決めて店内に入ってみると、案の定女の子の友達連れとか、カップルしかいない。
(恥ずかしいよぉ…。ああ、アスカにでも一緒に来てもらえばよかったなぁ…)
などと、本人が聞いたら怒り出しそうなことを考えるシンジ。
それならトウジみたいに、レイと一緒に来なさい!っての!!
実はトウジもヒカリの誕生日のプレゼントを買う時に同じような恥ずかしさを経験し、
(そや!男一人で来るから目立ってもぉて恥ずかしいんや!)
という事に気付き、今回はヒカリと一緒に買いに来ることにしたのだった。
閑話休題。
結局シンジはそこでは落ち着いて物を見ることができず、そそくさと出て来てしまう。
次に雑貨屋やアンティークショップに寄ってみる。
(綾波って、どういう趣味なのか、いまいち分からないんだよな…)
引っ越してきてからのレイの部屋は、小奇麗ではあったがあいかわらずシンプルで、飾り気が無いのをシンジは知っていた。
(そうだ、いつも本読んでたな…)
と、本屋にも入ってみるが、
(綾波って、いつもどんな本読んでるんだろ?
考えたら、ぼく、綾波のこと、全然知らないんだ…)
今更ながらそんな事に気がついて少し暗くなるシンジだったが、それでも少しでもレイに喜んでもらえる物を、と考えてあちこちお店をのぞくが、結局シンジにはプレゼントを決めることが出来なかった。
(どうしようかな?…まだ明日一日あるし、もう一度探しに…来ても同じか…。
そうだ、綾波に何が欲しいか聞いてみよう)
その時は名案だと思ったシンジだった…。
- その夜
- ダイニングで夕食後のお茶を飲んでいる時、シンジは思いきってレイにたずねてみる。
「あ、あの、綾波は、プレゼントもらうとしたら、何をもらったら一番嬉しい?」
(あんたバカぁ?一日歩き回って、結局決められなかったわけ?
しかも、普通、本人に直接聞く?…ま、シンジらしいけど…)
アスカはあきれかえってしまい、言葉も出ない。
すると、レイはもじもじしながら、小さな声で答える。
「…碇くん…」
「えっ!」
「ブッ!ごほっごほっ!」
赤くなるシンジと、飲みかけのお茶にむせて咳き込むアスカ。
「けほっ!…ちょっと、レイ!アンタ、何言ってんのか解ってんの?」
「え…」
ついそう言ってしまったレイだったが、シンジとアスカの反応にそのセリフの意味深さに今更ながら気付き、真っ赤になってうつむいてしまう。
「私…別に…そんな事…」
(そんな事ってどんな事だよぉ!)
ますます真っ赤になるシンジ。
「そうじゃなくって…その…私…」
レイはうつむいたままだったが、ちょっと様子が違うのにシンジとアスカは気が付き、居住まいを正して続く言葉を待つ。
「私…欲しい『物』なんて、何も無い…。
欲しいモノは…時間。
碇くんと、一緒にいる…時間。
…ただ…それだけで、いいの…」
「綾波…」
(そうか…ぼくって、なんで、こうバカなんだろう!?)
「ゴメン、気がつかなくって…」
一瞬暗くなりかけるシンジだったが、
(ダメだ、暗くなっちゃダメだ、暗くなってる場合じゃない!)
と思い直し、提案する。
「それじゃさ、明日は一緒にクッキー焼こうか。
クッキー焼くのはぼくも初めてなんだけど、一緒に作り方覚えようよ」
その言葉にレイは顔を上げ、嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「…うん…ありがとう」
(アンタ達、それじゃいつもと変わんないんじゃないの?)
と思うアスカだったが、レイの嬉しそうな顔に、何も言わないでおくことにした。
- 2016/03/13(日)
- アスカ&ケンスケの一日早いホワイトデー
「あんたバカぁ!?なんで、女の子へのプレゼントがカメラなのよ?
もうちょっと気の利いたモン考えられなかったの?
まさか、そっち側の世界にアタシを引きずり込もうって魂胆じゃないでしょうね?
それに、これ、結構高いんじゃないの?」
(ちょっとしたアクセサリーくらいでよかったのに…)
そのカメラは普通のタイプより一回り大き目ではあったが、画像をディスクに保存するだけでなく、プリンタ内蔵でその場でプリントもできる、昔のポラロイドのようなタイプだった。
高機能な分お値段も張り、確かに中学生にポンと買えるような代物ではない。
「まぁ、そう言わないで受け取ってくれよ。
確かに安い物じゃないけどさ、それ、アスカの写真で稼がせてもらったお金で買ったんだから、お返しでもあるんだ」
ケンスケはそう言いながら、
(もちろん、ぼくの世界を少しでも知ってもらいたいってのが本音だけどね)
と心の中でつぶやいていた。
「そ…そんなに儲かったわけ?
…ま、アタシの写真だから、当然ね」
ちょっと複雑な心境のアスカであった。
「じゃ、これはいただいておくわ。
でも、まさかアンタ、今でもアタシの写真売ってるんじゃないでしょうね?」
「まさか!今はもうそんなことしてないよ!」
「ホントでしょうね?」
ジロリとケンスケを見据えるアスカ。
「ほんとだよ。だってオレ、今は、アスカのこと、独り占めしたいから」
自分で言ってて照れてしまい、赤くなるケンスケ。
アスカはもっと真っ赤な顔をして口をパクパクさせている。
(よくそんな恥ずかしい事言えるわね!…嬉しいけどさ…)
内心そう思うアスカだったが、出てくる言葉はいつもの調子だった。
「ふ、ふん!…ま、信じといてあげましょ!」
- あとがき
- って、なんでまたアスカの話しになっちゃうの?(潜在性アスカ様症候群?;_;)
今回も苦労したなぁ…。何か、無駄に長くなっちゃって、一度書いたやつをリセットしたり…。
結局、第拾話で書くエピソードと合体させちゃった。
次回は、次こそは LRS を目指します!!乞うご期待!!