EVA’s Dream? 
     第五話 『碇司令と綾波さん』        


 そして舞台は翌日のネルフ本部へと移った・・・
・・・彼は、真っ黒な見たことも無いエヴァの前に立ち、呆然としていた。確かに、彼がこのエヴァを知らないのは当たり前だ。彼としても、どんなエヴァであったとしても、エヴァはエヴァなのだから驚く事は無いだろうと思っていた。しかし実際は、俺を閉口させるには十分な物だった。そのエヴァは色こそは違うが、姿形はエヴァ初号機と同一であったのだ。


「・・・え、こ、これに俺が乗るんですか?・・でも、これ・・初号機?・・・」
「いいえ違うわ、これがあなたがこれから乗るエヴァよ。・・・確かに驚くのは無理ないわ。ボディの色は違えども、形は初号機と寸分違わないんだから。」

浦野テツヤの思考:『初号機と形が同じ=初号機に似せて作った。初号機=暴走が多い。暴走が多い=危険。よって、初号機=危険=俺が乗るエヴァ=止めた方がいい♪』

早急に危険を感じ取った浦野は即行で仮病を使おうとした・・・がっ!!!、
「・・あ、あの〜、リツコさん。ちょっと今日は腹の調子・」
「さ、浦野君、これを早く着て頂戴。着衣後すぐに模擬体でのシンクロテストを始めるわよ。」
「・・・あ、そ、その、」
「あら、どうかしたの?」
怪しい目つきをして、リツコは浦野を睨む・・。
「・・・い、いえ、はい。着て来ます・・・」
そういって、浦野は男子ロッカー室へと消えていった。

「ふ、浦野君、まだまだ甘いわ。」
浦野、リツコに完全敗北

「・・はぁ。」
灰色と白色で組み合わされているプラグスーツを着ながら、浦野はため息を漏らしていた。







 シンクロテスト模擬体にて・・・
「浦野君、気分はどう?」
浦野がやっとのことで肺にLCLを満たして落ち着いた頃に、リツコは声をかけた。
『ええ、まあ、変わりないですよ。』
ちょっと緊張した面持ちで浦野は答える。
「あら、そうじゃなくて、初めてのテストをやってみての気分のことよ。」
『う〜ん、まあ、はっきり言って結構感動してますよ。碇君や綾波はこんなふうに毎日テストしてたんだなあってね。でも、やってみると結構大変ですね。碇君や綾波の苦労が今さらのようにわかりましたよ。』
「まあ、確かに楽な仕事じゃないわね。しかもこれと同じようなテストを何回も繰り返すのだから。」
ちょっと間を置いてから、浦野はリツコに問い掛ける。
『・・あの、ミサトさんはちゃんと仕事してますか?』
「ええ、昨日は徹夜だったらしいけど。徹夜の理由、知ってるんでしょ?」
『はい。俺は一人で留守番してましたけどね。』
「不器用なのよね、ミサトも・・・」
『・・・あんたもだろうが!・・・』
と、突っ込みたくなった浦野であった・・・。




「・・先輩。」
「なに?マヤ。」
「やっぱりこの子、只者じゃなさそうです。見てくださいよこの数値。」
「・・・シンクロ率、69%か。」
「確かに模擬体ですから多少の誤差はあります。でも、今日初めてテストを受ける子で、この数値は・・」
「ちょっと待ちなさい。この子の脳波・・なんでこんなに乱れてるのかしら・・テストに集中してないの?。」
マヤはそれに気付くと模擬体内部の映像を見てみた。
確かに、浦野自身を見てみてもきょろきょろと辺りを珍しそうに見ていたり、LCLの味を確かめて、顔をしかめたり、プラグスーツは体に密着するので、股間が目立ってないかと確認したりと、あまり、というか全然テストに集中してる様子は見られない・・。そして、
「浦野君、ちょっとテストに本気で集中してみてくれないかな?」
と、マヤは思わず声をかけてしまった。
「あ、マヤさんですね?はい、わかりました。やってみま〜す♪」
そこは浦野、結構お気に入りにマヤちゃんからの頼みならばと、気合を入れて、精神集中を試みる。
一方マヤは、 自分の名前を知ってるのに多少驚きはしたが、シンクロ率のモニター画面方が気になり、それを見た。
「・・73・・75・・82・・86・・・・・シンクロ率、91%・・・」
マヤが呆然自失している事に気付いたリツコは、マヤの代わりに、
「浦野君、もういいわ。テスト終了よ。」
と、言った。
・・・・・私語、終焉・・・。







 テスト後、ロッカー付近、自動飲料販売機前・・・
そこにはテストを終えて一休みしている浦野がいた。まだ、プラグスーツの着心地になれていないらしく、体をもじもじとさせながら片手にジュースを持ち、何かを考えているようだ。

「(はぁ〜あ、やっぱ結構テストって疲れるんだなぁ。いや、テストに疲れるって言うより、こんな状況にまだ慣れていないのにチルドレンにいきなり成っちゃったりして、その上まわりから怪しい目で見られて・・・またその上に隅々まで身体検査、模擬体でのシンクロテスト。まあ、そのおかげで碇君と一緒に居られるんだから文句は言えないんだけどね・・・。しかし疲れた・・。

あれ? って言うかさぁ、この世界にせっかく来たのにまともに碇君と話してないじゃん!?。ま、家出中なんだから仕方ないけどさぁ・・あっ、そういえば綾波は顔もろくに見てない・・・・・・。
いったい何をやってるんだ俺は?。あの二人と接触しなくちゃ俺がここにいる
存在意義なんか無いに等しいじゃん!!!。)」

やっとその事に気付いたか、馬鹿者・・・。

「(そういえば綾波はネルフ内に今居るのかな?。今はお昼の時間だし、もしかしたら今日は学校かもしれないんだよなぁ。まぁ、そのぐらいはリツコさんにでも聞けばすぐわかるか。)」

浦野はそう考え、赤木リツコの部屋へ行こうとしたが、その時、エレベーターがこの階で止まった。
そしてそのエレベーターから出て来たのは、女子中学生の服装、透き通るような水色の髪、白く美しい肌、そして、常人にはありえない赤い目をもった少女、綾波レイである。
浦野は一瞬で彼女が綾波レイと言う事を悟った。これほどまでに周りに存在感を与えない、空気のような存在感を持っている少女は彼女ぐらいなものだろう。
そして彼女はまっすぐに浦野の方向へ歩いて来て、立ち止まった。

「こんにちわぁ(^-^y)♪。綾波レイさんだよね?、そうでしょ?。」
本物の綾波を見ていることにちょっと、っていうかかなり感動しながら言葉を出す。

「・・・碇司令があなたを呼んでいるわ。私はそれを言いに来ただけ・・。」
「マジでぇ?、あーあぁ、せっかく綾波さんとゆっくりお話しようと思ったのになぁ。・・ねぇ、それ今すぐ行かなくちゃ駄目?。」

「・・・わからない・・。」
「それじゃさ、もうちょっと綾波さんとお話してからでもいいかな?」
浦野、もう完璧に軟派野郎に変身・・。

「・・あなたと話す事なんて、私には何も無いわ・・」

「(やっぱりこのころの綾波は好奇心ってものがないよなぁ。仕方ない、ちょっと強引にいくか♪)」
浦野、ちょっと気合を入れる。

「いいからいいから、俺にはいっぱい話したいことあるの。いいでしょ?。ちょっと時間くれたってさ?♪」
「・・・・・(・・・なぜこの人は私に必要に迫るの?・・わからない・・・。この人は・・ゼロチルドレン・・名前は浦野テツヤ・・・同じチルドレンだから?・・でもサードの碇君はこれほど必要には接触しては来なかった・・・私が人間と違うから?・・そう、そうかもしれない、この髪、目を見れば普通の人間に見られないのも確か。・・・)」
綾波の中では結論が出たらしい。やっと口を開く。
「・・・・・私はもう行くわ・・」
「え、ちょ、ちょっと、待ってよぉ。」

綾波はそう言うとさっさとエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まる・・が、完全に閉まる前に浦野は手を突っ込んで、扉が閉じられるのを止めた。綾波はその行為にちょっと驚いたらしく、一瞬だけ目を見開いた。
無論、すぐにその表情はいつもの顔へと戻ってしまっていたが・・・

「・・・何?・・」

「ん〜とさ、今が駄目ならまた今度でもいいからさ、近いうちに話そう?・・ね?♪」

「・・・・・・・」
「うん、そんだけ♪。ごめんね、なんか無理やりで。・・んじゃ、またね♪」
そうして浦野は笑顔を浮かべながら綾波と別れた。
『ガシャ・・』
扉が閉まった・・。


そして浦野は、自動販売機前のイスに座り、一つ、ため息をつく。
「・・・ふぅ、さすがに一筋縄じゃ無理か。ま、当然だろうな。碇君でも簡単には行かないんだし、それに、赤の他人の俺なんかじゃぁなぁ・・。ま、根気良くやっていくしかないか。・・・それにしても、声、いや、もちろん顔も・・・かわいかったなぁ・・・f(=^@^=);♪♪♪」

めげない男である・・・。








 同時刻、ロッカー室付近、エレベーター内・・・
一人、エレベーター内に佇む一人の少女、綾波レイ。なにやら深く考え込んでいるようである。

「・・・浦野、テツヤ・・・(・・彼は私の体が珍しいから、本当にただそれだけで必要に迫ってきたの?・・
でも、彼は笑顔だった・・・とても爽やかな・・・・・)」
綾波は彼の笑顔を思い出し、彼の言ったことを思い出す・・・。

『今が駄目ならまた今度でもいいからさ、近いうちに話そう?』・・・

「・・・また、今度・・・・・・」
綾波は小さい声でそれに答えた・・・。







 10分後、ネルフ総司令執務室前・・・
そこには、綾波に言われ仕方なく来てみたはいいのだが、入ろうか入るまいか躊躇している浦野の姿があった。
「(・・・あ〜!、やっぱり入りずらいよ〜!!。でもなぁ、やっぱり入んなきゃ始まんないしなぁ・・・。
多分、俺が何者か調べるつもりだろうけど、あ、でももしかしたら綾波の住まいの話かもしんないし、でも、その理由とかも聞かれるかもしれないしなぁ・・・まぁ、適当に答えればいいか。別に殺されることは無いだろうし・・・・・よしっ!!!、行くぞ!!)」

覚悟を決めたらしい。扉をノックする。

『コンコン・・・』

「ゼロチルドレン、浦野、来ましたー!」
ちょっと大きめの声で浦野は声を出す。
『・・・ガチャ・・入れ。』
重々しい声が扉の横にあるスピーカーから声が聞こえる。
「・・失礼しまーす・・」
そう言い、浦野はその部屋へと入っていった。

『キィ〜、バタン!』

中が静かなせいか、扉を閉める音が嫌に大きく聞こえる・・・。
その部屋は薄暗く、一番奥のほうに、黒っぽい机があり、人が座っていた・・・・。
そう、言わずと知れた、『碇ゲンドウ』、その人である。
浦野はその机に近づいたが、さすがに目の前までは行けなかった。机の数メートル手前で立ち止まる。

「初めまして、今度新しく『ゼロチルドレン』に任命された、浦野テツヤと言います。以後お見知りおきを。」
浦野は場をわきまえたらしく、ちょっと真面目に挨拶をする。

「・・・大体の事は赤木君から聞いている。君が正体不明で、しかもなぜか、一般人には知る事の出来ないネルフのことについて良く知っていると言う事もな。」
「そうですか。」
浦野はなぜか冷静に答えていた・・・。普通、こんな状況の中だったら焦るのが普通だろうに・・しかし、目はまっすぐ碇ゲンドウの方を見据えていた。意外とこういう状況を楽しむ人間なのかも知れない。

「フッ・・、まあそう睨むな。別に殺しはしない。・・君は確かに怪しいが、裏がある人物ではないことは証明されている。」
「そうですか、それなら良かった。(多分、ゼーレとの関連についての事だろうな・・・あとで来る『カヲル君』みたいに、ゼーレに送り込まれて来た人間では無いって事が分かったんだろうな・・でも、その方が余計に怪しくないかな?。まぁ、そこらへんはしっかりと調べられてるのかな、やっぱり・・。)」

「だが、それは今は、と言う事だ。今後君がネルフにとって害となるのなら即刻に君を排除する。それは覚えて置け。」
碇ゲンドウは感情を感じさせない声でその言葉を口から出す。
「はい、わかっています・・・。今日はそれを言うためだけにここへ呼んだのですか?」
浦野も恐ろしく冷静な声で返答する。自分はなぜこれほどまでに冷静でいられるのか?、浦野も自分自身でわけがわからずにいた。

「・・・もう一つ、聞きたい事がある。・・・君がチルドレンになる条件として赤木博士に出した、ファーストチルドレンの事だ・・あれは何のためだ?。」
碇ゲンドウの鋭い目が浦野に向けられる。
「・・・・・・三つ理由があります。まず、彼女が人間だから、誰が何と言おうともね。そして、あなたが考えている事を実行してもユイさんは喜ばないから。最後は、俺は綾波が好きだからです。」
ちょっとかっこいい浦野。
「・・・ユイが?」
初めて、碇ゲンドウが意外な声を出す・・・。

「そうです。」
はっきりと答える浦野。

「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
時だけが静かに過ぎていく・・・・・。
「・・・・・・出て行け。もう用は無い・・・。」
暗く、全てを拒絶するような言い方で彼は言葉を発した。
「それで・・綾波の引越しについて許可は下りるんですか?・・・」

「・・ああ、好きにしろ・・・。」
「・・・それでは、失礼します。・・・・・・司令、失礼かもしれませんが言わせてもらいます。ユイさんを愛
する事が大事なのはわかっています。ですが、少しはシンジ君の事も考えてあげてください。あなたの息子であり、又、司令の大事なユイさんの息子でもあるのですから。
それと、間違っても、シンジは自分を嫌っているとは考えないでくださいね・・碇君はたった一人の父親のあなたをとても好きなんだと思います。ただ、父親に対しての思春期の年頃の気持ちと相重なって、甘え方というのがわからないだけなんですから・・・・・・・俺が言いたい事はそれだけです。では、失礼します。」
最後にそう言うと、浦野は、その部屋を出て行った。

『キィー、バタン』
碇ゲンドウはしばらくゲンドウポーズのまま、ボーっとしていたが、その内、笑みを浮かべた。

「・・・・・・・・・・ふふ、まさか私が、子供に説教されるとはな・・・・。」
彼はそう言うと、久しぶりにテレ笑いをした・・・。もちろん、彼以外にその笑いを知っている人は誰もいない・・・。







 その日の夜20時頃、葛城家・・・
「はぁ、やっと終わった〜。」
そこには、ミサトの部屋以外全室を掃除し終えた浦野がいた。今まであったゴミは全て消え、ピカピカの床が見えている。

「(しっかしさぁ〜、碇君は簡単そうにこの部屋の掃除を終わらしたって何かの小説で読んだけど、このゴミの量は何だよ?。結構俺だって家事全般はこなせるのに・・片付けだけにこんなに時間食っちまった。ったく、あらためて碇君の凄さに気付くよ・・・。あと、ミサトさんのズボラさにもね・・・。)」

しばしの休憩を取りながら、思いにふけっている所で玄関のドアが開く音がする。
 
『ただいまー。・・あれ?、すいません間違えました〜・・・がちゃがちゃ、バタン・・・』
どうやら、部屋がしっかりと片付いていることで、部屋を間違えたと思ったらしい・・そんなミサトを浦野は玄関まで迎えに行く。

「ちょ、ちょっとミサトさん!、家はここでいいんですよ〜!!。」
玄関を開けて、浦野は叫ぶ。

「あ、やっぱり?。私もおかしいと思ったのよねぇ、何回見ても表札は『葛城』だしさぁ♪。」
「もう、自分の家まで間違えないでくださいよ。こっちの方があせっちゃいますよぉ。」

「あははっ♪、ゴミンゴミン♪♪。」
そんなたわいもない話をしながら二人は家に入る。

「・・・は〜、随分とはりきって掃除したものねぇ〜。」
今まで、ダンボールやら雑誌やら新聞やらで覆われていたキッチンの床がピカピカになっているのを見て、ミサトは言う。

「単に散らかってた物を整理整頓しただけですよ。」
「えぇー、それにしてもお掃除上手なのねー。浦野君って家事まで結構こなせるんだぁ♪(ラッキーッ♪♪)」
ミサトは、浦野が居ることによって自分の家が普通の一般家庭並みに綺麗になるだろうと考え、密かに笑みを浮かべていた・・。

「・・あっ、そうだ。ミサトさん、もう晩御飯食べました?」
ミサトの考えていることを少しは感じ取った浦野だが、別にそれでも構わないので気にしないことに決めた。
「ううん、まだだけど・・。あれ?、浦野君は?」

「俺もまだなんです。だから、今から作る所なんですけど、俺の料理で良かったら一緒に食べますか?」
「えぇー!、浦野君、料理まで出来るの?」
ミサトは意外な顔をもう一度しながら彼に言った。

「んぅ〜んと、それほど出来るってわけじゃないんですけど、簡単なものなら何とか・・あんまり期待しないでくださいよ?」
浦野は自身無げに答える。

「オッケーオッケー♪♪♪、お願いするわ。私はエビチュでもでも飲みながら待ってるからさ♪」
ミサとはそう言うと、服を着替えるために自分の部屋へと引っ込んでいった。

「了解しましたぁ♪♪♪」
そんなミサトに久しぶりに作る料理のことを考えて、浦野は楽しげに答えた。







「ごっちそうさま〜♪」
ミサトは満足そうな顔と声で言った。

「お粗末さまでした♪」
そんなミサトを見て、浦野も嬉しそうに言葉を返す。
「いっや〜、本当に美味しかったわよぉ♪。そうね、しいて言えば、『おふくろの味』。」

「あはは、誉め言葉として受け取って置きますよ。」
「やーねぇー、ちゃんとした誉め言葉よ♪。今時『おふくろの味』を出せる人なんて滅多に居ないのよぉ?。・・・あ〜でも、シンジ君にも食べさせてやりたかったなぁ。」
ミサトは急に声を低め、落ち込んだように言った。

「・・やっぱり、まだ見つかって居ないんですか?」
そんなこと当然知っているのだが、一応質問する。この場合、その方が自然だろう。
「そう。諜報部の奴らも本気で捜す気があるのかどうか・・・。」
「(やっぱり少しはアドバイスした方がいいかなぁ?。なんかこのまま沈んだミサトを見ているのもなんかつまんな・・、いや、なんかつらいし・・。)」
そう思ったらしく、浦野はちょっと説教気味に、ミサトにアドバイスを始めた。

「ミサトさん・・ミサトさんは碇君をどんな風に見ているんですか?。ちゃんと彼を家族として見てあげていますか?」
急に大きな声を出されて、ミサトはちょっと面食らっている。しかし、さすがは作戦部長。すぐに言葉を返す。

「な、何なの急に?・・・シンジ君のことをねぇ・・うん・・・そう言われると・・・今はまだ、完璧に家族としては見れていないかもしれないわ、自分から『私たちは家族なのよ』って言った割にはね。・・・ほら、彼って結構内気な性格で、その割にちょっとひねくれてて、それに、私に笑顔も見せてくれない・・・・・多分、彼も私のことを信用してくれてはいないと思うわ。彼が私のことを信用したいと思っているかいないかは別としてね・・・。」
そのミサトの答えに浦野ははっきりと返事を返す。
「・・・碇君は絶対、ミサトさんの事を家族として見たい、信用したいと思っていますよ・・。」

「・・そうかしらねぇ・・・ねぇ、なんで浦野君はそこまで断言できるの?」
一瞬、浦野は答えに困ったような顔をしたが、すぐにミサトの問いに答える。
「実は今日、リツコさんから碇君ってどういう人なのかって少し聞いてみたんです。そしたらリツコさんも、碇君は内気な性格だと言いました。ミサトさんとリツコさんから同意見が出るという事は、彼は根本的に内気な性格だという事がわかります。根本的に内気と言うなら、ここに引っ越してくる以前から内気という事で、友達も多くは無かった。それなら普通、家族に助けを求め、家族を信用しようとするでしょう。しかし、彼は叔父・叔母と一緒に暮らしており、やはり本当の親ほどには彼等を信用する事は出来なかっただろうと思います。
そんな中、碇君は急に実の父親に呼び出されました。自分を家族として見てくれるのかと思えば、非情にも父親は彼を道具のように扱い、家族という目では見てくれなかった・・・。
碇君の中では『自分はいらない子、捨てられた子なんだ』という思いが芽生え、混乱し、前前からそういう思いがあったとすれば、彼はその時、絶望したと思います。何だかんだいっても、碇君はまだ14の子供なんですから・・・。
それで自暴自棄になろうとしていた頃にミサトさんに助けられる。『私と君は家族なのよ』ってね。これはシンジくんにとっては最高の言葉だったと思います。自分は一人、ずっと孤独だと思っていたのに家族が出来る。顔には見せなくても、いえ、碇君自身でさえ分からなくても、その言葉で碇君は救われたんだろうと思います。
でも、家族と言っても所詮は赤の他人。イロイロと問題やすれ違いが生じます。相手のことを理解できなくて、でも自分の事を相手に理解されたくて、今、碇君は四苦八苦しているんだと思います。でも、四苦八苦しているってことは、相手を家族として認めている、と取れます。ただ、まだ相手を理解しきれていないだけでね。でも、やっぱり苦しい。そうなると、もっと自分のこと理解して欲しくて、構って欲しくて、無理な事やわがままな事を言い出します。それが悪い事だ、相手が困ってしまうっていうのが分かっていても自分では止める事が出来ないんですよ。多分、この前の第四使徒との戦闘での命令違反も碇君が言う我がままの一つなんだと思います。
碇君はただ単にミサトさんに甘えたい。それも家族として、それだけを思っていたんだと思いますよ。」

さすがにこれだけ長い事を言って疲れたのか、浦野は言い終わると、注いであった、すでに冷めたお茶を一気に飲み干した。

「・・・・・・・・・・・・・」
ミサトは何も言わない。

「・・・これはあくまでも俺の勝手な考えですよ。俺は単に、今言ったことも踏まえて、家族として碇君のことを考えてやって欲しいんですよ。確かにネルフの作戦部長と言えば、簡単に出来る仕事じゃありません。でも、一度、『私とあなたは家族なのよ』と言ったなら、その事に対しての責任が生じると思うんです。だから家族、いえ、ミサトさんには母親になった気分で碇君の事を考えてやって欲しいんです。それは、ミサトさんにしか出来ない事ですから・・・」
浦野は優しくミサトに言いたいことを伝える。
「・・・・・ありがとう浦野君。でも、私は、あなたの言った事を全て真に受ける程、素直じゃないわ。・・
・だから、もうちょっと自分で考えてから答えを出すわ。・・いえ、そうしなきゃいけないと思うの。」
ミサトはしみじみと浦野が言った事に対して、言葉を返す。

「はい。それが一番正しいと思いますよ。・・・・それじゃ、そろそろ僕は寝ますね。」
浦野はやっと落ち着いた表情で言った。
「ええ。おやすみなさいね、浦野君・・・」
そして浦野はまだ、自分の部屋はまだ出来ていないので碇君の部屋に行こうとした。

「・・・浦野君。」
浦野は名前を呼ばれて振り返る。
「・・はい?」

「・・私は、結構、あなたの事、信頼してるわよ・・・」
ミサトは振り向かずに、背中を見せながら言った。
「・・・今更何言ってんですか♪、俺だってかなりミサトさんの事信頼してますよ♪。」
俺は笑顔で返事をした。

「・・・・・ありがとう、おやすみなさい・・。」
「・・おやすみなさい、ミサトさん・・・。」
浦野はそういって部屋の戸を閉めた。






 38分後葛城家碇シンジの部屋・・・
その部屋のベッドには浦野が天井を見つめて寝そべっていた。
「・・・今日はちょっと、いろいろ喋り過ぎたかな・・・」
そう言うと、浦野は体を仰向けから横になった。
「(・・・でも、結果としては、ミサトさんには嫌われなかったと思うし、碇のヒゲ親父には別に好かれようとは思ってないし・・・それほど問題は無かったと思える・・。あ、でも、碇のヒゲ親父にはこれからマークされるだろうなぁ・・・・・でも、ミサトさんの方は今まで以上に碇君の事を考えるだろうし、より良い結果になるはずだ・・・うん、問題はやっぱりヒゲ親父の方か、でも、あの人に関しては対策のしようが無いんだよなぁ・・・。まぁ、これ以上考えても答えが出るわけでもないしな・・あまり深くは考えないようにしよう・・・。
えーと・・明日は綾波をこっちに引越しさせて、それからイロイロと身の周りの物を買ってこなくちゃなぁ。あっ、って言うか、俺の身の周りの物も買ってこなくちゃなぁ・・。今もってる物って全部ネルフから支給された物だし・・・。よし、決定!!、明日は綾波を一緒に買い物だ!♪!。今度こそは無理やりにでも連れてってやるぅ♪♪♪)」

そして浦野は、明日の綾波との買い物の事を考えながら眠りに落ちる・・・。
世界中の幸せが浦野の顔に集まったような顔をしながら、違う意味で言えば、馬鹿みたいな顔をしながら、明日の到来を眠りながら待っていた・・・。 





                          Written by てつやん




♪♪♪ 後書きor感想のような物♪♪♪

  さて、第五話の完成です。・・・う〜ん、なんかわけわかんなくなって来ちゃった・・・。
すでに小説が一人歩きを始めて、作者の意向を完全無視!って感じ。でも、やっと綾波が出てきてくれた・・。しっかしさぁ、LRSを目標にして書いてるのに、第五話目で綾波が初登場・・・・。それも結構脇役で・・・。こんなスローペースなLRSなんて他に無いんじゃないの?。って最近・・・って言うか結構前から思ってました。うん、とにかくがんばって見ます。やっぱ、主人公がEVA本編に出演してる人じゃないと、結構書きづらいんだよね、これが。まぁ、文才が無いって言うのもあるけど・・・。

次話の予告は、『学校編』とだけ言って置きますね♪。まあ、自分がオーバーヒートしない程度にキャラクターを出して行きたいと思います。

それじゃ、また。



                       by てつやん(vu8m-skn@asahi-net.or.jp


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Received Date: 00.03.26
Upload Date: 00.05.05
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