EVA’s Dream? 
      第四話 『葛城家』        

 ジオフロント内ネルフ専用駐車場・・・
「・・おっせ〜・・・」
青いルノーの前で一人の少年、いや、青年とも見える男が小さく呟いた。
「(ここで待ってて頂戴ってリツコさんは言ってたけど・・・遅いぃ。やっぱり、同居の事とかでもめてるのかなあ・・・)」
と、その時、ハイヒールの靴音が遠くから聞こえて来た。
『・・・コツッ・コツッ・コツッ・コツッ。』
その靴音はその青年の前で止まり、音は一人の女性の声に変わった。
「あなたが浦野テツヤ君ね?」
この問いに男はこう答えた。
「そうですよ・・初めまして葛城ミサトさん、これからよろしくお願いします。」
これが、二人の初めての対面であった。


 十二分前、赤城リツコ博士研究室・・・
部屋の中には葛城ミサト、そして、この部屋の主人である、赤木リツコが向かい合って座っていた。その光景は珍しいものではないが、ミサトは愕然とした表情をしており、いつもの見慣れた光景ではないことをその顔から知る事が出来た・・・。
「・・・マジ?」
「本当よ。」
「・・な、何で私が?っつーか、それ以前になんでその・・浦野テツヤって子は私の事を知ってるのよ!?」
「・・・それらの事についてははっきり言われたわ。『俺はネルフでの一般的な事なら大体知ってます。でも何故知っているかは、あなたの事を信用してないから言えません。』ってね。彼があなたを選んだ理由が知りたいんなら彼に直接聞いて頂戴。あなたにならその理由を教えてくれるかもしれないから。」
「はあ?・・何で私になら教えてくれるかもしれないのよ〜?」
ミサトはいかにもわからなそうな声を出して、リツコに答えを求めた。
「あなたねえ・・・。彼は信用してないから私には話せないと言ったのよ。なら、信用してる人間になら話すって事でしょ?」
「ええ、まあそうだけど、でも私が信頼されてるわけないじゃない。会った事も無いんだから。」
「あなた、信頼してもいない人の家に同居させてくださいなんて、普通の人間が言う
と思うの?」
「・・・ヴーん・・・。」
ミサトはもっともな疑問を投げかけたつもりだったが、もっともな返答をされてしまい、もはや黙るしかなかった。
「・・それじゃ、いいわね?」
「う〜〜〜ん、でも〜、あたしん家はもうシンジ君がいるし〜、もう空き部屋もないのよね〜。」
最後の悪あがきをするミサトであったがそれさえも旧友である赤木リツコ博士博には無意味なことであった。
「彼の生活費は十分すぎる程ネルフから出るし、あなたに対しての特別手当も十分に出るわよ。それがあれば、今ローンで払ってる車の修理代とたんまり溜まった居酒屋のツケも払えるんじゃない?」
「!?!?!?・・・り・つ・こ・ちゃ〜ん♪、それを先に言ってくれなくっちゃ〜。仕方ないわね〜。このあたしが引き取ってあげましょう!」
ミサトの反抗心も欲には勝てなかったらしい。あっけなく了承してしまった。
「・・・あなたって、本当に扱い易いわ・・・。」
最後に、リツコのあわれみとも思える言葉が、彼女の口からこぼれた・・・無論、その言われてる方の彼女の耳には届かないように・・・。


 ルノー・アルピーヌ・A-301、車内・・・
「(エヴァの世界か・・・。確かに、未来的な建物だよな〜・・・。そう言えばミサトさんの運転って有名だけど、今何キロなんだろ?確かに早いは早いけど、これぐらいならなんとか我慢できる・・・俺って凄いかも♪)」
浦野はすでに観光気分で、自分の世界に入ろうとしていたが、ミサトに声をかけられて急遽、現実に戻った。全く、のんきな男である。
「浦野君。」
「・・ん?あ、はい、何でしょう。」
「さっき、『初めまして』って言ったわよね。」
「ええ、それが何か?」
「初めましてって事は初対面よね。にも拘らず、何で君は私達の事をよく知ってるのか、簡単に説明してくれないかしら?ほら、家ではシンジ君に一応説明しなくちゃならないし、それにネルフの中ではなるべく身分を証といた方がいいと思うしね。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・やっぱり、教えられない・・か。」
「・・・今、葛城さんに言えるのは・・・俺はこの世界の人間じゃない、って事だけです。・・・すみません。正直に言うと、自分でも今の状況に混乱してるんです。自分の考えがちゃんとまとまったら、全てを葛城さんに言うので・・・もう少し、待ってもらえませんか・・・。」

浦野、同情心を狙う・・・。
「・・・この世界の人間じゃない、か・・・。とても信じられるような話じゃあ無いわね・・・けど・・・ま、一応は信じるしかないか。」
「葛城さん・・すみません、本当に。」
浦野、心の中でニンマリ♪。
「いいからいいから、そんなに謝ってばっかじゃ駄目よ。もっと前向きに考えなくちゃ!・・それから、私の事はミサトって呼んでちょーだい♪」
「ありがとうございます、ミ・サ・ト・さん♪」 
「「・・・プッ・・あははははは・・・」」
お気楽な連中である。意外とこの二人は性格が似ているのかも知れない。
「・・・あ、あと、碇君への説明は俺に任しといてください。」
「え、いいの?」
「ええ。碇君とはいい友達になりたいんで、その方が都合がいいんです。」
「そう、わかったわ。・・・それじゃ、今日は浦野君の歓迎パーティーといきますか!」
「マジすか?」
「マ・ジよ〜ん♪・・そうと決まれば、たらたら走ってないで飛ばすわよ〜〜〜!!!」
言っておくが、只今の速さ・・・180キロ・・・。これでたらたらなのか・・・。
「えぇ!?ちょ、ちょっと待っ・・・うぎやぁ〜〜〜!!!」
ご愁傷様です、チ〜ン・・・。


 葛城家玄関前・・・
「さ、ここが私の家よ。」
ミサトは明るく声を発したが、対する浦野はヤバイくらいに顔が青い。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちょ、ちょっと大丈夫?車酔いでもしたの?」
「・・・いえ、大丈夫です、それより、早く、入りましょう。(い、いったい何キロで走ってたんだ・・200キロを越したとこまでは覚えているけど・・・確か、宙にも浮いていたような気が・・・葛城ミサト、恐るべし・・・)」
普通の車が宙に浮くか?、ま、それは置いといて。
『ガチャ・ガチャ・・』
扉は開かない。
「あれ?・・鍵、閉まってる。シンジ君もう寝ちゃったのかしら・・」
ミサトは面倒臭そうにバッグからカードキーを取り出す。そこで浦野は、碇君は今、家出中って事を思い出したが、
「(この事は話さない方がいいじゃないかな?確か、この家出が結果的に碇君とミサトさんの信頼関係のUPに繋がるはずだし・・・。)」
と思ったらしく、黙っている。
「さ、どうぞ、あがって頂戴。」
「あ、お、お邪魔します。」
「ちっちっち♪、違うでしょ!ここはもう、あなたの家でもあるんだから、『ただいま』でしょーが。」
お決まりのセリフ・・・
「・・た、ただい・」
『ギャギャギャギャー!』
「・・ペ、ペ、ペンペン!ペンペンだ〜♪(^-^)」
ここでペンぺン初登場。
「う、浦野君ってペンペンの事まで知ってるの!?」
さすがにペンペンのことまで知っていたとは思わなかったのか、ミサトは素っ頓狂な声を出す。
「もっちろんですよ〜!かなり有名ですよ〜ペンペンは!!!うわ〜、かっわい♪」
浦野はしばし、ペンペンと執拗にじゃれあっていたが、その内、その様子をじ〜っと見つめ続けているミサトさんに気がついた。
「??・・・どうかしましたか?」
「あ、いえ、なんでもないわ。(浦野君ってこんな顔もするんだ〜。こんな子どもっぽい笑顔されると普段は大人っぽい分、意外だわ・・。・・・まるであいつみたい・・・。)」
「?・・あっ、それより、碇君はどうしたんでしょうね。」
「そうよね・・・、ちょっとシンジくーん、シンジ君ったらー・・・。」
浦野の予想どおり、出てくる気配は無い。
「・・・・・いませんね。」
「どうしたのかしら、こんなに遅くなるなんて・・・。」
「んー、友達の家にでも、泊まり掛けで遊びに行ってるんじゃないんですか?」
「そんな、シンジ君はまだこっちに来たばっかなのよ。内気で人付き合いも下手そうなのに、そんな友達がすぐに出来るはずないわ・・・。」
「そりゃそうですよね・・・そこがまた可愛いんですけど・・・」
思わず本音が出る浦野・・・
「???・・・・・ごめんなさい浦野君、私ちょっと、その辺を探しに行ってみるから・・・歓迎会はまた今度って事で・・・」
「あ、いいですよ。それより、早く行ってあげてください。」
「ええ。それと悪いけど、夕食は買い置きがあるから適当に自分で作って食べちゃってね。」
「はい、わかりました。・・ミサトさん!、」
浦野は走って行こうとするミサとを呼び止める。
「ん、何?」
「もし見つけても、あまり怒らないでやってくださいね。碇君は今が一番微妙な時期ですし、碇君なりに今は・・・とても悩んでますから・・・。」
浦野、次は印象UP狙い・・・
「・・・・・わかったわ。それじゃ、ちょっち行ってくるわね。」
ミサト、ちょっと浦野を見直す。浦野、心の中でニンマリ♪。
『ギャギャギャ!』
「行ってらっしゃい!」
そしてミサトが玄関を出て、エレベーターへと走っていくと同時に、
『ぎゅるるるううう』
お腹が鳴る。
「はは、・・・さて、ペンペン。夕食、一緒に食べようか?」
『ギャッギャッ!』
そして、夕食を作ろうかと思ったが、予想通り、インスタント食品とレトルト食品しかなかったので、20分も掛からずに、この世界で初めての夕食は終わってしまった。


葛城家、碇シンジの部屋・・・
彼は、その部屋を十二分に詮索し終えてから、碇シンジが愛用しているであろうベッドに横になった。
「碇君の匂いがする・・・」
と、綾波が言うべきセリフを言いながら、満面の笑みを浮かべている。
『・・・(ニヤニヤ・・)・・(ニヤニヤ・・)・・(ニヤニヤ・・)・・・』
傍から見るとちょっと、いや、かなり怪しい。

浦野テツヤの思考・・・
『はあ、明日は朝からネルフ行きかあ。確かにネルフにも興味はあるけど、やっぱり学校でのラブコメの方が・・・ムフフ。』

言っておくが、こいつにはすでに、って言うかとっくの昔に、この世界に対する疑問は無い!!!

作者からのお詫び:すいません。こいつ、馬鹿なんです。
             (こいつ=浦野テツヤ。浦野テツヤ=作・・者・・。)

『ん〜でも、俺が乗るエヴァってどんなんだろ?起動実験はネルフ松代支部でやるって言ってたけど、参号機みたいに使徒くっついてて暴走とか・・・ははは、まさかなあ・・・。あ、そういえば、あのエヴァって構造は少ししか違わないけど起動する確率は何故か普通のエヴァの何十倍も低いって言ってたよなあ。いろんなチルドレンを試しても駄目だったって言ってたし。・・・ま、変に起動して暴走するより、起動しないで暴走しない方がいいかもなあ。まあ、テキト〜に行きますか!ま、そうと決まったら、おやすみ〜£・・・(すやすや・・)・・(すやすや・・)・・』

  In Europe・・・
「・・また、ダミーか・・・」
そこには、その男一人だけ。何年も前に廃棄されたようなボロボロの工場内で彼はそう呟いた。その工場は屋根が今にも抜けそうで、彼の周りでは使われなくなった古い機械達が静かに眠っている・・・
「全く、今回は結構自信あったんだがなあ。」
と、いかにも残念そうに彼は言葉をもらす。その時、彼の携帯が広い工場内で無情に響いた。
『pipipipipi・・・pipipipipi・・・pipipi』
三回目のコールで彼は電話を取り、話しだす。
「もしもし?」
『私だ。』
『誰だよ!』と、突っ込みたくなったが我慢し、彼は話し出した。
「これはこれは碇司令、今日はどういったご用件で?」
『例の調査の方はどうだ・・。』
「今も調査中ですよ・・たった今、97件目のダミー工場に出くわした所です。」
『そうか。まさか、君の手腕をもってしても未だ探せないとはな。』
「部下にも探させていますが、奴さん、随分と秘密主義な性格らしくてね。・・・ですが司令、今日のご用件はそれだけでは無いでしょう?」
『ふっ・・ああ、そのとおりだ。・・・例の物を速急にこちらへ送り届けてくれ。』
「そろそろだなと思ってましたよ。しかし、速急にとは随分そちらも大変なご様子で。」
『何事にもトラブルは付き物だ。今回はそれが多少大きかっただけの事・・。』
「・・浦野テツヤですね・・・」
『・・・・・余計な詮索はしない方がいい。私は君を高く評価しているのだからな・・・。ガチャ・・ツー・・ツー・・ツー・・』
「『余計な詮索』、か。悪いが、こっちはそれでメシを食ってるんでね。」
『例の物を速急に・・日本へ・・』
そこで、一人の女性の顔が思い浮かぶ・・・。
「・・・葛城、元気にしてるかな。」
そして彼は、そこの工場を後にした・・・。





                                 Written by てつやん




♪♪♪ 後書きor感想のような物♪♪♪

 あけましておめでとうございます。・・・いや、言い訳はいたしません。めちゃくちゃサボりまくってました・・・怒っちゃやん♪

他の人とは比べ物にならんほど不定期だけど、一応続けています。そんなに怒らないで、
「しかないな、こいつぅ♪(=^・^=);」
lってな感じで優しく見守ってください♪

「お前、俺らをなめてんのかぁ!!こんな駄作を読ませといて超ウルトラ不定期だとー!!二度と顔見せるんじゃねー!!!」
と怒られてもあやまるしかできません。本当にお許しください。特に mal 委員長には本当にすいませんですた。
「あ、そんな気にしなくてもいいよ。そんなに重要な小説じゃないから。」
と言われるのも結構グサッっとくるんですが、ま、とにかく、一応ですが連載は続けていますので、はい、

では失礼いたします。2000年も宜しく申し上げます。

                     by てつやん (vu8m-skn@asahi-net.or.jp)


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Received Date: 00.03.20
Upload Date: 00.05.05
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