今日もまた

澄みきった蒼い空

雲ひとつとてなく

今にも降り落ちてくるような蒼

ひとこえ 空に声を上げても

そのまま 声は羽を生やして

そのまま 蒼に吸いこまれて

見えなくなるまで 遠く とおくに

飛び去り 消えてしまいそう

そして ちいさな 音のかけらが

ふりあおいだ 白いひたいに

ささやくように つぶやくように

わたしに こつんと おちてくる

そんな気のする 遠い蒼空・・・・





「・・・いい・・・天気・・・・」

目を細め、窓から蒼空を見上げる少女

ぼーっとしてるのか、一心にみつめているのか

その表情は、動こうとはしない

「ほん・・・と・・・」

いい天気であるなぁ

「いい・・・・・て・・ん・・・・・・・・き・・・・・」

窓辺に、ぽてん、と座り込む白い肌の少女

細められた目はさらに細く・・・って、あれ?

「す・・・・・・・・・・・」

もしかして?

「くーーー・・・・・・・・・」

寝ちゃったよ、おい(^^;

・・・とにかく、Phase 1の続きである(^^;




   Eva What?

          - Phase 2 -   居候来襲




ばたばたばたばたばたばたばたばたっ・・・・

台所をかけ抜けるスリッパの音。
この家には、ここに寝ている少女のほかは、二人・・・といっても
一人は足音などたてるわけがないから(^^;、もうひとりの快活な
少女の方であろう。

「このうどん娘っ!!!」

なんつー呼び方だ(^^;、そんなに白いごはんを食べられなかったのが
悔しいのだろうか?

「どこ行ったのよっ!、今日はわたしが洗濯するから洗うものあったら
 出しといてって言ったでしょっ!!」

良き心がけである。こんなに天気のいい日のお洗濯は、人によっては
大変気持ちの弾むことなのだそうで(^^;

「そんなんじゃないわよっ、あのぽーーーっとした子がなんにもしよーと
 しないから仕方なくやってんじゃない!! なんでわたしがわざわざ
 あの子の洗濯の世話までしなきゃ・・・あ、いた!!」

蒼い目長い耳の少女の視線の先では、蒼味をおびて光る髪の少女が
自分の部屋の窓際に突っ伏していた。

「ほら、洗濯物・・・って、ええ!?」

「くーーー・・・・・・」

「あんた・・・寝ちゃってる?・・・こら!!!」

「くーーー・・・・・・」

「こら!!、このうどん娘っ!!、起きなさいっ」

「くーーー・・・・・・ん・・・」

アスカは蒼髪の少女−レイ−を窓辺から引きはがし、肩を揺り動かすが
レイは脱力したまま眠りこけている。

「起きなさいってばぁっ!!・・・まったくぅ!!、よくもまぁ
 起きたばっかりの朝の九時に熟睡なんかできるもんだわ!!
 起きろおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

肩をぶんぶんと振り続けるアスカ。

「んん・・・・ん・・・・誰・・・」

「よおやく起きたわね、この馬鹿娘っ!!」

右手で軽く目をこすりつつ、顔を上げる眠り姫レイ(^^;

「お早う・・・アスカ・・・」

「お早うは2度目でしょーが!!、まったく・・・
 な・ん・で、起きたばっかりで熟睡なんかできるのあんたわっ!!」

「うん・・・外を見ていたら・・・ね・・・」

「外?、まあ、確かにいい天気だけどね・・・」

「そう・・・空が蒼くって・・・とってもいい天気・・・」

「あんたねぇ・・・そんなくったりしたしゃべり方してると・・」

「そう・・・なんだかくったりして・・・気持ちよく・・なって・・・」

「ちょ・・ちょっとあんた!、まさかまた・・・」

「それで・・・ね・・・・ん・・・・」

「こらぁぁぁぁぁぁ!!、人と話してる最中に寝るんじゃぁないぃぃぃぃぃ!!」

「く・・・・すーーー・・・・・・」

「ああああああああ・・・・また・・・・この眠り姫がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「すーーーーーー・・・・・・・・」

「・・・・駄目だわ・・・この子ってば・・・もー知らないっ!!
 あんたの服洗濯なんかしてやんないからねっ!!」

「すーーーーーー・・・・・」

「ふんっ、もーいーっ!!、好きなだけ寝てなさいよっ!!」

言い放ち、ばたん!と扉を閉めレイの部屋から出ていくアスカ。

「ん・・・・ん?・・・アスカ?」

扉の音に薄目を開けるレイ。しかし部屋にはもう人の気配はなく、
動きのない空気だけが、しん、と部屋の中にとどまるだけ。

「・・・行ってしまった・・・の・・・」

薄赤の瞳が少し寂しげに揺らぐ。そしてアスカの出ていった扉を
じっと見つめる。

「また・・・怒られた・・・・」

軽く膝を抱え、うつむいて考え込む。

「アスカに・・・ばかり、お世話になっては・・・いけない・・・」

顔を横に少しずらし、扉にちら、と薄赤の視線を向ける。

「彼女は・・・お客様の・・・ようなものだし・・・
 でも・・・わたしが・・・ここにいて・・・
 なにができるって・・・わけじゃない・・・・
 料理も・・・洗濯も・・・不器用だし・・・
 おじーちゃんを・・・手伝える・・・わけじゃない・・・
 わたしが・・・できるのは・・・勉強だけだし・・・
 ここにいて・・・なにができるの・・・わたし・・・」

ぼーっとして眠りこんでばかりと思っていたが、やはり考えてはいたようだ。

「おじーちゃん・・・幽霊に・・・・そう・・・・
 死んで・・・しまった・・・おじーちゃん・・・・
 わたし・・・おじーちゃんに・・・なんにもして・・・あげられない・・・」

顔を上げ、窓の外を振りあおぐレイ。夏の日差しは、彼女の色の薄い髪と
白い肌に光を散らせ、蒼い空がレイの心を覆う。

「おじーちゃんは・・・本当は・・・もういない・・・はずなのだし・・
 アスカは・・・別の世界の・・・ひと・・・なのよね・・・
 ほんとうは・・・・わたし・・・ひとり・・・なの?・・・・
 ひとりで・・・・わたしは・・・・どうすれば・・・いいの?・・・」

空の蒼はレイの心に染みとおり、誰にも見えない悩みを照らしていく。

「どうすれば・・・ん・・・・」

窓の外を見上げる瞳は細く薄められ、そのまま・・・・

「わたし・・どう・・・すれ・・・ば・・・・すー・・・」

・・・おいおい、せっかくシリアスなシーンになったと思ったら・・・

「すーーーー・・・・・・・・」

・・・結局また寝ちゃうのね・・・まぁ変に悩まれるよりはいいか(^^;

「くーーーーーー・・・おじい・・・ちゃん・・・」

・・・そうでもないか。不憫な子ではあるんだが・・・・

「くーーーーーー・・・・・・」

こう幼子のような顔で寝られては、同情するのもおかしな気がする(^^;
今はゆっくり眠らせておこう・・・って朝の九時からホントによく寝られるなぁ(^^;





「−−−−−−困ったなーー」

場面変わって坂の上の高台の道。かすりの和服に長身の若者がひとり、
軽く頭をかきながら、たたずんでいる。

「さっきの少年には『丘の上』としか聞かなかったからなーー
 教授の家までここからどう行けばいいのやら・・・
 うーん・・・迷ったなぁ・・・・・どぉしようか・・・・」

結局道に迷ったらしい長髪をひもで束ねた古風な青年。辺りを見回すと
いくつかある民家の前で、行商の野菜売りと話すおばちゃんの声が響いている。

「で、これがおつり、とゆーことで」

「はいどーも、いやーーーー最初はねーーーー」

朝からおばちゃん元気がいい。は、いーとしてこの野菜売りもどこかで見たよーな・・・
無精髭に伸ばした髪を軽くくくり、足元には全く同じ顔をした3人の子供?を
引き連れている。


「なーんかあんたたち、危なそーに見えたんだけど、売りに来る品物が
 いーからねーーー!、ご近所でも評判よっ」

からからと笑いながら話すおばちゃん、ほんと元気だ、うらやましい(^^;

「そりゃーどうも、なにせ新鮮で無農薬、自慢の野菜ですんでね。
 せいぜい宣伝してもらえますかね?今度は勉強させてもらいますよ(^^)
 それじゃぁ、これからもご贔屓にねがいますよ」

こちらも笑って話す無精髭の野菜売り。慣れた語り口に笑みがこぼれるが
怪しく見えないこともない、が、結構これが魅力なのかもしれない。

「いいわよっ、じゃあ下の奥さん方にも広めとくわよ(^^)
 こんどもよろしくねーーーー、あ、この子たちも妙に評判いいわよーー」

「え?」
「ぼ、ぼくたちが」
「人気者ですか、いやだなぁ」

「なーにいってんの、かわいい顔して照れちゃって。
 あんたも、若いのに3人も子供いちゃー大変ねーーー」

ちょっと顔を歪ませ苦笑いする無精髭の男。かわいい白と水色のセーラー服を着て、
ちょろちょろと動きまくる3人、生意気な口調と言いまるで幼稚園児のようである。

「はははは、息子って・・・・まぁ似たようなもんではありますがね(^^;
 こいつら食わせなきゃなんないんで、宣伝のほう、よろしくお願いしますよ」

「僕たちって」
「主任の」
「息子だったんだね」
「「「知らなかったなぁ」」」

「似たようなもんってゆってるだろーが、お前たち、今日は肉にするつもりだったけど
 そんなことゆーとまた夕食サラダだけにするぞ」

「そ、そんな」
「ダイエットしてるわけじゃないのに」
「おねがいです、お肉食べさせてくださいっ」

「あんたらもたいへんねーー、息子かどーかはそのうちゆっくり聞かせてもらうとして・・
 それじゃそのトマト3つほどいただける?」

「あ、奥さんすいませんねぇ・・・・」
「おばちゃんありがとお」
「それはちがうよ、『奥さんありがとう』だろう」
「それもちがうね、『おねーさんありがとう』だね」

「あんたらってば面白いんだからーーー、またきておくれよーー」

「はい、わかりました」
「どうぞ今後とも」
「ご贔屓に、お願いします」

ぺこりと頭を下げる3人・・・というより3匹(^^;

「奥さん、どうも毎度ありがとうさまで、またよろしく(^^)」

商売を終え民家を離れる無精髭の男と3匹(^^;

「さて、と・・・ま、お前らのおかげで売り上げも上がったし、
 今晩は焼き肉とサラダとゆーところだな」

「久しぶりの、お肉ですね」
「お肉はいいのだけれど・・・またサラダですか」
「主任はレパートリーがないから・・・」
「その点、シンジ君は結構料理上手だね」
「うん、彼が作ってくれると嬉しいのだけど・・・」
「最近、見張りばっかりで夕飯作ってくれないからねぇ・・・」

「お前らなぁ・・・まぁシンジ君が俺より料理上手なのは
 俺も認めるがな。今日はおだてて何か作ってもらうとしようか・・・」

「もし、お話中のところ申し訳ないですが・・・」

突然声をかけられた野菜売りたち・・・わかっちゃいると思うが
声をかけたのは和服で長身の男、声をかけられたのは野菜売り・・・というか
加持主任と3匹のカオル君(^^;である。

「おや・・・お客さんかな?、ありがとうございますっ」

「あ、いや、お客というわけでは、実は少々お尋ねしたいことが・・・」

「はい」
「なにか」
「お困りのことでも?」

「あ・・・・は、はぁ、ちょっと道に迷ってしまって・・・」

同じ顔3匹の答えに和服の男は少々ビビリつつも(^^;話を続ける。

「ええと・・このあたりに六分儀厳道教授のお宅があるはずなんですが、
 ご存じありませんか?」

「教授の家、ですか?」
「「「教授?」」」

すこしはっとした顔をする加持主任とカヲル君3匹、ユニゾンする声には
やはりびびる(^^;

「あ、ご存じないということであれば別によろしいんですが」

「いや、そんなわけではないんですがね」

にこりと笑う野菜売りの男、含みがあるような顔に見えないこともないが、
初対面ではなかなかわかるものではないか。

「教授の家は、この坂道をまっすぐ行くと左に階段がありますから、
 そこを入っていって道なりにずっと行けばわかりますよ。
 かなり歩きますがね」

「あぁ、それで大丈夫だと思います。どおもご親切にありがとうございます」

わざわざ丁寧にぺこりと一礼する和服の男。姿通り礼儀正しいといったところか?

「いやいや、どういたしまして。教授のお知り合いで?」

「ええ・・教授の教えを受けた者なんですが、お亡くなりになられたということで
 いても立ってもいられずにここまで来てしまったんですが」

「そうですか・・わたしも教授と直接お話したことはないんですが、なかなかの人物
 だったようで、生前に一度お会いしたかったものです」

社交辞令なのだろうか? 人物というより奇人変人の類だった気はするが(^^;

「それはそれは・・ここいらの方々には名前が知れているんですね。
 あんな事で大学をやめることにさえならなければ・・・
 いけないですね、余計なことまで。そろそろ失礼します・・・おや?」

野菜売りのかつぐ籠に目を向ける和服の男。

「そちらの大根は・・売り物ですか?」

「はいはい、れっきとした商売物ですよ(^^)、大根だけでなく色々とありますがね」

籠を下ろし野菜の数々を見せる野菜売りの男こと加持主任(^^;。

「お客さん」
「こちらには」
「スイカもおいてあるんですよ」

「それはすごい(^^;、大根・茄子に玉葱、トマト、あわせてスイカですか。
 どれも立派ですねぇ」

「ははは、わたしたちが丹精したんですよ」
「お客様」
「お一つ」
「いかがですかぁ?」

「それでは・・そちらの里芋とトマトと大根、いいですか?」

「「「毎度ありがとうございますっ!」」」
「毎度じゃないだろうが、お前ら(^^;。ありがとうございます。
 またよろしければご贔屓に」

「はは、またお会いできればいいんですけどね、教授の家族の方への
 手みやげということで」

「そう・・・ですね。教授のご家族の方にも宣伝しておいて下さいよ」

すこし言葉を濁す野菜売り。怪しげな感じがないでもないが、にこにことした
商売人らしい微笑みにごまかされてしまうのだろうか。まして・・・

「お兄さん」
「また、お帰りの時にでも」
「スイカひとつ、いかがですか?」

にこにこした同じ顔3匹にせまられてはそれどころではないであろう(^^;

「はは、お会いできたらということで。では、わたしはこれで・・・」

「では、またご縁がありましたら・・・」
「「「さよおならぁ」」」

和服の男は買った野菜の袋を抱え一礼し、坂道を上っていく。3匹は和服の男に
手を振っている。

「さて、と・・・今日の商売はこんなもんか、では帰るぞ」
「はいっ」
「それにしても」
「教授の知り合いとは」
「何物なのだろうね」
「歳格好からして・・・」
「実は・・・隠し子とか・・」

「お前らなにを言ってるんだ(^^;、ま・・教授も亡くなったことだし、
 わざわざ首を突っ込むこともないだろ・・・じゃ、行くぞ」

「「「はーい」」」

怪しい感じはあったものの、加持主任は本業をまともにやるつもりはないようだ(^^;
まぁ確かに相手が亡くなってしまってはやりようがないのも確かだろうが。
しかし、この後首を突っ込む気がなくても突っ込む羽目になってしまうのは・・・
ま、お約束というものであろう(^^;





「加持主任っ、どこ行ってたんですかぁっ!」

朝7時に目が覚めたシンジ君。いつもはわらわらとやかましい3匹の音がしない。
加持主任の姿もなくきちんと布団は畳まれている。まぁ加持主任は普段も
朝から畑仕事をしているのだが・・・。なんとなくまたかという気がしたが
ひとりおいてきぼりにされたのも何となく腹が立つのか単に律儀なのか
さっと黒服に着替えて玄関でずっと待っていたらしい。

「シンジ君、人が朝から労働にはげんできたというのに、その挨拶はないだろ」

「はいはいお帰りなさいっ、で、朝も早くにどこ行ってきてたんですっ」

「はいただいま(^^)、おいおい見てわからないかい? 野菜売りに行ってきたんだよ。
 今日は結構売れゆきがよくってなぁ・・・」

言い合いをしつつも挨拶を欠かさないところ、2人とも根は律儀者らしい(^^;

「だ・か・ら、そーいうことはやめて下さいって何度言ったらわかってくれるんですかっ
 いつもいつもあなたは朝早くから・・・本業に差し支えがあるじゃないですかっ」

「本業ねぇ・・・それより生活の方が先決ってもんじゃないか?
 俺は5人分にはとうてい足りない食費の足しにだな・・・」

「そうだよ、シンジ君」
「腹が減っては戦はできぬってね」
「本業だけでは食べてはいけないんだよ」
「はっきり言うね、事実だけれども」
「考えてみれば、情けないね」
「しょうがないさ、左遷されてるようなものだもの」

「カオル君たち・・なんでそういう気を削ぐことばかりいうんだよ!!
 確かに食べるためにはしょうがないけど・・・本業あってこその副業じゃないか!」

「ま、そう言うなよシンジ君。副業と本業兼ねてるところないわけじゃないしな」

「は?どういうことです?」

「つまりな、情報収集にもなるってことさ。今日も教授の教え子ってのから
 教授の家を尋ねられてな」

「ええっ、い、いつ? どんな人だったんです?」

「ん? 商売の帰り際にな、わざわざ和服にハカマはいた、髪の長い男だったな。
 まぁ・・・ほっておいてもいい気がするけどな」

「何言ってるんですかっ、わかりましたっ、さっそく教授の家に偵察に行ってきますっ」

「おいおい、だからほっておけと・・・まぁちょっと待てよ」

「待てませんっ、どんな細かい情報でも重要ですっ、ほっておくわけにいきません!」

「しょうがないな・・・カヲル君たち、シンジ君止めてくれ」
「「「はいっ!!!」」」

ダッシュしようとしたシンジの手に足に胴にしがみつくカオル君たち。
おかけで思いっきり転んで顔を地面にぶつけるシンジ君。

「いててて、こら! 離してくれよ!、何で邪魔するんだよ!!」

「ふふふふふふふふ」
「もー離さないよ、シンジ君」
「一度捕まえたからには・・・もう君は僕たちのものさ・・・」
「このなま白くて、細い手も」
「堅い感触の、この足も」
「ひょろっとしてるけど、思いのほか太いこの腰も・・・」
「「「みんな僕たちのものだよ、ふふふふふふふふふふふふ」」」

全身に思いっきり悪寒がはしり、顔色がだんだんと青くなってくるシンジ君。
まぁこのにこにこした3匹に、体中頬ずりされた日には無理もない(^^;

「や、やめろっ、やめてくれぇ、カオル君たち、お願いだ、離してくれぇぇぇぇぇっ!」

「こらこら、お前たち、嫌がってるのを無理矢理手込めにするのはいい趣味じゃないぞ」

「加持主任、何言ってるんですかぁっ!!、元はと言えばあなたが・・・」

「くすくす、そおだったな、別に襲わせるつもりはなかったんだが(^^;
 お前たちすりすりはもうよして離してやれ、シンジ君に朝ご飯作ってもらわなきゃだしな」

「朝ご飯」
「そうですね、シンジ君、作ってくれるよね」
「作ってくれないのなら・・・離さないよっ・・・ふふふふふふふ」

「わかった、わかったから、朝ご飯作るから離してくれよぉっ!!」

「そーそー、朝ご飯抜きは体に悪いしな。教授の家行くにしても、
 ちゃんと食べてからにした方がいいぞ」

シンジの身体から離れて、パンパンとセーラー服をはたくカヲル君たち。
相変わらずにこにこしてるのが1匹、未練タラタラに口をとがらせているのが1匹、
セーラー服をはたきつつもシンジから視線を離さないのが1匹である(^^;
シンジは異様な視線と光景にびびりつつも

「ちゃ、ちゃんと食べてからって、作るのは僕なんでしょ・・・
 そ、それにしても、カヲル君たちの、なんだかおぞましい格好は、なんです?」

「あ、シンジ君、気づいてくれたんだね」
「これはね、本部からわざわざ送ってくれたんだよ」
「夏服の支給ということさ」

「な、夏服って・・・なんでせえらあ服なんだよっ」

「さーなー、俺も上の考えてることはよくわからんがね。シンジ君の分もあるから
 着替えたらどうだ? シンジ君もいつまでも冬服では暑苦しーだろーに」

「い、いりませんよっ、そんな格好するくらいなら暑い方がまだましですっ」

「そーかー?、結構かわいいと思うがな、俺は」

「加持主任・・・あなたの感覚とゆーものが僕にはわかりません・・・・」

そうだろうか?、俺もセーラー服のシンジ君、結構かわいいと思うが(^^;
それ以前に冬服にせよ夏服にせよ、調査員に制服が支給されるということに
わたしは疑問を感じるが・・・(^^;





遠い青空の下、丘の上の大きな一軒家。白い壁と2階の大きなガラス窓が光っている。
風もない、暑い日差しが一瞬時が止まったような風景を浮かびあがらせている。

「はぁ、これが、教授の家、か・・・」

たたずむ和服にハカマで長髪の男。長い坂道と階段で多少息がはずんでいる。
ひとしきり家を眺めた後、玄関に歩みを進める。
が、玄関の扉は開いたまま、足元に何か白い固まりが・・・

「すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「は?、え、えええええええええ?」

よく見ると・・・蒼白い髪の少女が、巨大な白い枕に頭をのせ、白いシーツを
抱きしめて熟睡している。シーツを抱きしめる腕も抜けるように白い。

「ええ、と・・・完全に・・・寝ている・・・よな・・・どうしようか・・・」

起こせばいいのだ(^^; まぁ玄関口で熟睡している真っ白な少女などという
非常識なものを見たからには、動揺するのも無理はないと思うが・・・

「それにしても、ほんとに真っ白な子だなぁ・・・初めて見た」

確かになかなか見られるものではない。起こさないようにそぉっと腰をかがめて
少女に近づく和服の男であった。

「ん・・・・・なに・・・・」

ぼんやりと目を開けて、くるりと顔を回し赤い目を来客に向ける白い少女。
薄く開けられた視線に思いがけず目が合う男。

「は・・・・あ・・・・・俺は・・・なにも・・・」

言葉を失う和服の男。動揺して立ち上がりあたふたと両手を上げる。
白い少女も起きあがり、ぼーっとした目で男をじっと見つめる。

「・・・・・・・・新聞なら、とりません」

「は?」

「・・・・・保険かけるようなものも、ありません」

「あの、わたしは・・・」

「・・・・・預金するような、お金もありませんから」

「ち、違います!、新聞屋でも保険の勧誘員でも銀行の者でも郵便局員でもないですっ」

「・・・・・そうですか・・・・・それは失礼しました」

ぺこりと頭を下げる少女。礼儀正しさは見上げたものと言うべきか

「それでは・・・・・・・・・・おやすみなさい」

こらこらこらぁぁぁぁぁぁぁぁっ、せっかく誉めたと思ったら、
礼儀知らずなことをするんじゃないっ、というより玄関で寝るんじゃないっ!!(^^;

「あ、あのっ、ここで寝るのはどうかと・・・、じゃなくてっ」

「は・・・・・まだ、何か?」

寝起きと天然あわせての大ボケぶり・・なのだろうが、これにつきあっている
和服の男も大したものである。本人はそのつもりはないかもしれないが(^^;

「あのーーーー、とりあえず、これをどおぞ」

言葉を失いつつも大根・トマト・里芋のはいった紙包みを
少女の目の前に差し出す男であった。

「・・・・・・せっかくですが、受け取れません」

「え?」

「おじーちゃんに、知らない人から、物をもらってはいけないと言われているので」

「そ、それは・・・あ、今『おじーちゃん』って言いましたね。
 では・・・教授の、お孫さんですか?」

「え・・・・と、いうことは・・・・おじーちゃんの、お知り合いですか?」

「はい。教授に大学で教えを受けた者ですが」

「そうですか・・・・・ではいただきます」

「あ、はい、どうぞ・・・」

苦笑しつつ紙袋を手渡す男。あっさりと紙袋を受け取り右手に抱える少女であった。
この少女、教授といえば何でも信用することにしているのであろうか・・・

「どーぞ、お入りください。お茶いれます」

起きあがり、無言で紙袋を台所に持っていった後、白い少女は白い枕とシーツを抱えて
男を案内する。さすがにまだまだ理解不能なのか、男は野菜の袋を手渡した後、
玄関に突っ立ったままであったが、少女の案内に足を踏み出す。

「あ、あのー、ちょっと訊いてもよろしいですか?」

「何か?」

なんだかびびりつつ少女に問いかける男。無理もないが・・・

「さっきまで・・・玄関で、なにをしていたんですか?」

「・・・見たとおり、お昼寝してました」

「確かに・・・見たまんまですが」

「あそこは、少し涼しい風が通って、気持ちいいんです」

「はぁ、そうなんですか・・・」

首を傾げながら少女の後ろをついていく男であった。





「どうぞ」

「は、どうも・・・」

リビングにて椅子に腰を下ろす和服の男。少女に差し出された茶碗を手に取りつつも
”飲んでも大丈夫なんだろうか”という顔をして動きを止めている。

「ただのお茶です・・・それで、おじーちゃんに何のご用ですか?」

「そ、そうでした、はい」

考えを見抜かれていたのを驚きつつ、居ずまいを正す男であった。

「この度は誠に御愁傷様でした。教授がお亡くなりになられたと聞き、
 即、参った次第です」

「それはわざわざ、遠いところをありがとうございます」

互いに一礼する男と少女であった。なんか登場キャラみんなして妙に礼儀正しい。
あ、例外がひとり・・・(^^;

「あれーーー?、なんか声がすると思ったら、お客さん?」

「あ、アスカ。何してたの? おじーちゃんにお客さん」

「何してたのじゃないわよ! あんたがくーすか眠りこけてるから
 結局わたしが洗濯ならなにやらやんなきゃいけないんじゃない」

「ん、ありがと、アスカ」

「お礼よりも、寝てないで手伝ってよっ、もぉ・・・・
 こんな天気いいのに眠りこけっぱなしなんて信じらんないわよ。
 あんた眠りこけるためにここに来たわけじゃないんでしょうに」

「そうだけど・・・おじーちゃんのお葬式が終わったら、なんだかほっとして・・・」

「ほっとしたってのはわかったけど、あんたの世話までする義理はわたしには
 これっぽっちもないんですからねっ!、本来逆の立場だと思うけど?」

「そうね・・・アスカの言ってること、正しい」

「わかってんなら、寝てないで手伝いなさいよっ」

2人の漫才(^^;をあぜんと見ている男であった、いや、アスカの風体、
特に長い耳に、そして少女のアルビノ特有の赤い目に視線を右左に動かしていた
というのが正解なのかもしれない。赤い目はもとことん珍しいが、ぴんとはねた
長い耳に本物なのだろうかという思いがしても、当然というものか。

「ん?、なによっ!、人のことじーろじろと見て、レディに失礼ねっ!」

「あ、いや、そういう意図は毛頭なく・・・・すいません」

アスカにすごまれて思わず謝ってしまう男であった。まぁこれだけ滅多に
見れることがないことが続けば普通の神経では動揺してしまうであろう。

「ふんっ、どーせ耳みてたんでしょ・・・・ったく」

小さい声でつぶやくアスカであった、が

「耳がどうかしたの?」

はっきりした声で訊くレイであった。気遣いもなにもあったもんじゃない。

「あーーもうっ、何でもないったら!、教授のお客さんなんでしょ!
 さっさと教授呼びなさいよっ、話が長いったらありゃしない」

「うん」

話を長くしているのはアスカだと思うが・・・それはそれとして(^^;

(はぁ? 呼ぶって・・・教授、死んだはずじゃぁなかったのか?)

そらそうである、はっきり言ってアスカ登場以後男はほとんど
言葉を発する余地がない(^^;

「おじーちゃん、お客さん」

ぽむっ

「なんだ、客だと?」

「うん、おじーちゃんの教えた人だそうだけど」

「なんだ、青葉君か。たしかに久しぶりだな。来てくれたのか」

「青葉さん? そう言えばまだ名前聞いてなかった」

「名前も聞かずに家に上げたのか、レイ。
 まあいいが・・・彼はまだわしが大学で教えていたとき
 熱心な学生だったのだ・・・」

「ちょ、ちょっとちょっとお!」

「アスカ、どーしたの?」

「あんたたち、昔話してる場合じゃないわよぉ。
 この人・・・気絶してるみたいだけども・・・」

「おい、青葉君、どうした」

「ほんと・・・目が真っ白・・・固まってる・・・」

「れーせーに観察してんじゃないっ!、
 考えてみりゃ無理もないわね、死んだと思ってた人が幽霊になって出てきたんじゃ・・・」

ま、そういうことである、やっと名前の出た青葉君(^^; さんざ常識はずれのことが
続いたあげく、幽霊を目の前にするというとどめをくらった、ということであろうか。
さすがにご愁傷様である(^^;





「うーん・・・あの長髪が教授の教え子か・・・名前もわからないからなぁ
 やっぱり盗聴マイクくらいは必要だよな」

再び教授の家の脇にある巨木から、オペラグラスで覗き見にはげむシンジ君。
朝食を速攻で終えてここに直行したらしい。

「来年度こそは予算に組み入れてもらわなきゃ・・・でも加持主任、
 やる気無いからなぁ・・・結局あの真っ白い子の方が教授の孫娘、
 らしいな・・・『綾波レイ』て名前だったっけ・・・でも教授と
 名前が違うってのは・・・わかんないことだらけだ・・・」

つんつん

「で、わかんないのがあの栗毛の子の方なんだよな・・やっぱりあれ、
 耳、だよなぁ・・・教授のこと調べても何者なのかわかんないし・・
 なにか教授の研究に関係あるのかな・・・」

つんつんつん

「なんか慌ててるな・・・栗毛の子のほうはわたわたしてるけど・・・
 なんかふわふわした影が・・よくわからないなぁ・・・
 男と孫娘はなんかじっとしてるけど・・・あ、やばい、孫娘こっち見てる」

つんつんつんつんっ

「うるさいな・・・気づかれてはいない・・かな・・あの孫娘・・・
 なんかお人形さんみたいだな・・・ちっちゃくて・・白い肌がなにか
 そそられるものが・・・い、いけない、これじゃ覗きだ・・・」

覗き以外のなにものでもないと思うが、レイに関しては知らぬが仏と言うべきだろうか?
それにしてもさっきからシンジ君の肩口をつんつんつんつんとたたく影がひとつ・・・

「うるっさいなーーーー、こっちは仕事中なんだよっ、て・・・あ?」

ばっと振り向くシンジ君をじっと見つめる影!!!
というほどのものでなく(^^;、Phase 1でも登場のコウノトリくんである。
じーっとまたもやシンジ君に殺気をおびた視線をとばす。

「また・・・おまえか〜〜〜、だからさ、お前の巣には何の用もないんだから
 ほっておいてくれよ」

鳥に言葉が通じると思っているのだろうか?(^^; それでも、コウノトリ君
何か表情が変わったようだ・・・怒ってる?

コココココココココココココココココココココココココココココココココココッ

「い、いたたたたたたたっ!!、や、やめろって、だから、僕はお前には
 別になにもするつもりは・・・」

コココココココココココココココココココココココココココココココココココ
コココココココココココココココココココココココココココココココココココッ

「痛い痛い痛い痛いっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉっ」

「ん?・・・・さっきから・・・・外が騒がしい・・・・」

窓を上げて外に身を乗り出す綾波レイ。

「げ、や、やばい、あ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサーーーーーーーーッ

「何の音?・・・・何か落っこちたような・・・」

「あんた、ぼーっと外見てんじゃないわよっ!!、救急箱持ってきてよっ、
 わたしは濡れタオル変えておくから・・・」

「あ、わかった・・・持ってくる・・・」

ぱたぱたぱたぱた・・・というスリッパの音が遠ざかる。今回はシンジ君、
アスカのおかげで窮地を脱したようである。

「い、いてててて・・・危なかったなぁ・・・いて、今回は足、
 ちょっとひねっちゃったかな・・・」

「また」
「落っこちたんだね」
「シンジ君」

「う、うぁぁぁぁぁぁあっ、カヲル君たち、どっから涌いてきたの・・・」

「失礼な」
「涌いてきたなんて」
「僕らをウジ虫みたいに」

「似たようなものの気がする・・・」

「まったく」
「足をくじいたんだろ」
「運んでいってあげるよ、やさしいからね、僕たちは」
「シンジ君に、なんと言われようとも」
「シンジ君の、助けになるのなら」
「なんだって、やってあげるよ、ふふふふふふふふふふふ」

「そ、その笑いはやめてほしいんだけど・・・悪寒がする・・・」

「「「ふふふふふふふふふふふふふふ」」」

「や、やめてくれぇ、じ、自分で立てるよ、ほら!、あ・・・いたたたた」

「無理を」
「しちゃあいけないよ」
「僕たちが、手厚い手あてをしてあげるよ、ふふふふふふふふふふふ」

「お願いだっ、その、手厚い手あてってのだけはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「「「ふふふふふふふふふふふふふふふふ」」」

・・・なんやかんやいいつつカヲル君たちに引きずられていくシンジ君である。
危地を脱したとはいえ、彼の受難は、まだまだ続く、らしい(^^;





ぴんぽーん

「あれ・・・・また、お客さん?」

「なんかお客の多い日ねーーー、ちょっとわたし手が放せないから見てきてよ」

「手が放せないって・・・青葉さんは隣の部屋で寝てて、おじーちゃんが
 青葉さん見てるし、アスカお茶飲んでるだけにしか見えないのだけど・・・」

「あんたさんざんわたし働かせて何いってんのっ、ゆっくりお茶一服するくらいの
 権利はわたしにあるはずよっ、あんた午前中はくーすか寝てて、青葉さんとやらの
 応対しただけなんだから、そのくらいやんなさい!」

「それは・・・そうね。わかった・・・」

ぱたぱたと玄関に向かうレイであった。

「まったく・・・いちいち一言言わないと動かないのかしら、あの子は・・・
 わかんないんだろうな・・・あんまり他の人に顔出したくないっての・・・」

つぶやいた後、自分の耳をきゅっとつかむアスカであった。



「こんにちわー」

「はいーー」

玄関にたどりつき、返事をするレイ。真白なワンピースにサンダル状の
ベージュのスリッパがかわいらしい。今更だが(^^;

「や、久しぶり」

「ん・・・あ・・・相田くん?どおしたの?」

「どうしたのじゃないだろ、六分儀のじーさんが死んだってゆーからさー、
 お悔やみついでに、綾波来てるだろーと思って顔見に来たんだよ」

「それはそれは、わざわざありがとうございます」

「まったく、丁寧なご挨拶だけは相変わらずだな、ま、思ったより落ち込んで
 ないみたいだし、よかったよ、あがってもいいか?」

「う・・・ん・・・、はいってかまわない・・・」

「そうか、じゃ、おじゃまします」

「いらっしゃい・・・」

レイのほんの少しためらいがちな声に気がついたのだろうか、相田少年も
特におしゃべりを続けることなく、リビングに向かうレイの後を追った。



「相田ケンスケ君。中学の時の同級生、で、彼女がアスカ」

「ちょっと、紹介そんだけなの? ま、いーか・・・
 それにしても、あんたにそーゆー友達がいたとはねー」

にんまりと笑うアスカ。レイは「は?」という感じで目を大きく開けている。

「そんなんじゃないって(^^;、中学の時にさ、成績を競った仲なんだよ、
 綾波と俺は、な、綾波」

「うん・・・学年の1番を取ったり取られたり・・・3年間ずっと・・・」

「はぁ?ほんとにそんだけなのぉ?わざわざ顔見に来るってのは、あーやしーなー」

「だから違うって、綾波って面白いだろー、大ボケでさ(^^;
 中学の時も一日一度はクラス中あぜんとさせてたからなー
 高校で別になっちゃったから、少しは変わったかなーと思って見に来たんだけど、
 どう?、今頃の季節だとまた突然眠りこけたりしてない?」

「あ、あんた学校でも眠りこけてたの・・・相変わらずよ、それ・・・」

「ははははは、やっぱりなぁ、凄かったもんなぁ、授業中や昼休みなんか当たり前、
 廊下歩いてて突然ふらふらっとなったら眠りこけてるんだもんなぁ、
 あんだけ寝てて成績いいんだから、どーゆー頭してんのかってもんだよ」

「・・・あんたとゆー子は、よく寝る子だとは思ってたけど、そこまでひどかったの?
 まったく、しんじらんないわ・・・」

「・・・・・・反論できない・・・・・・大ボケは自覚してるもの・・・・・」

さすがのレイも機嫌を悪くしたのか、少しだけ口をとんがらせている。かわいい(^^;

「自覚してんなら少しは直しなさいよっ、その大ボケにつきあうこっちの身に
 なってよねっ」

「いやー、これだけの天然ボケを直すのはもったいないよ。大事に保護すべきだよ」

「あんたも・・・やっぱ変よ」

「そーかー? その方が面白いじゃないか?」

「・・・・・なんだか・・・・すっごく馬鹿にされてる気がする・・・・」

「気がしてんじゃないわよっ、きっちり馬鹿にしてやってんのよっ」

「わたし、馬鹿じゃない・・・ボケは認めるけど・・・・」

「馬鹿とボケのどこが違うってのよあんたわあっ」

「うっくっく、綾波の大ボケ見に来たと思ったら、さらに面白いもの見せてもらってるなぁ
 飽きないよ、2人の話(^^)」

「見せ物じゃないわよっ、本気で怒ってんのっ、あんたも似たようなもんじゃないっ」

「一緒にされちゃ困るよ、これほど俺ひどくないぜ」

「どこがぁっ、この馬鹿娘見て喜ぶのなんてあんたくらいなもんでしょうに!!」

「・・・・むーーーーーーーー・・・・・・」

詰め寄るアスカと口とんがらしてケンスケをにらむレイ、この2重攻撃に
くすくす笑っているのだから、相田ケンスケ、やはりただ者ではない(^^;


「綾波さんっ」

トリオ漫才花開く中、突然扉を開け大声で叫ぶ青葉君であった(^^;

「はい・・・青葉さん・・・気がつきました?」

さっきまでのむっとした顔はどこにいったやら、とぼけた顔で返事をする
レイであった。

「俺・・・いやわたし、ここに住まわせていただいてもよろしーでしょーかっ?」

「「「は?」」」

突然とんでもないことを言い出す青葉君、3人がユニゾンするのも無理はない(^^;

「教授にいろいろお聞きしましたっ。教授があのように変わり果てた御姿になってまで
 研究を続けられるというのを聞きまして、微力ながらわたしで是非お手伝いできる
 ことがあれば・・・いや、ぜひ教授のお手伝いをさせて下さい!お願いしますっ」

「え?、教授ってこないだ葬式したばかりじゃあなかったっけ?
 変わり果てた姿って・・・なんなんだよ」

ツッコミ入れるケンスケ君。当然の疑問である。

「ん? 相田君ではないか、久しぶりだな」

ふよふよとあぐらをかいた姿で部屋に移動してきた六分儀教授であった。

「へ・・・・きょ、きょーじゅっ??????」

「どうだ、かっこいいであろう」

「はいっ!!」

「あ、あんたねぇ・・・・・・」

どっと崩れ落ちるアスカであった(^^;

「だってさぁ、知人の幽霊なんてなかなか見れるもんじゃないぜ、
 こーやってまともに会話できるってのも・・・すごい経験だ」

「すごいもなにも、ゆーれいみて恐いとか驚くとかそーゆーまともな反応はないのっ!」

「驚いたことは驚いたけどさぁ、教授だぜ、恐いわけないだろ、このじーさんなら
 このくらいのことやっても不思議じゃあないし、ただで死ぬわきゃないなとは
 思ってたけど、まさかゆーれいになってるとはねぇ、すごいよ、うん」

「ふ、ほめてもなにも出んぞ」

「どこがほめてんのよっ、もーいやっ、こんな奇人変人ばっかりなんであつまってくんのよーっ!
 教授はマッドサイエンティスト+ゆーれいだし、孫娘は気が利かないわ大馬鹿だわ
 大ボケだわだし、その友達とやらは何でもかんでも面白がる変人だし、こんな家もーいやっ!
 早くわたしを元の場所に帰してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!(;_;)」

「言われてしまいましたねぇ、教授」

「うむ、このはっきりしたところがアスカのいいところなのだ」

「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

完全にキれてしまったアスカを脇にしながら、青葉君とレイは交渉を続けている。
比較的まともなような青葉君も、やはりまともな神経ではないのかもしれない(^^;
レイの方は・・・・まぁ当然だろう。この子はマイペースが持ち味なのだ(^^;

「綾波さんっ、お願いですっ、いいと言ってくださいっ
 孫娘が許すならば住んでもよろしい、と教授が言われてるんですっ、お願いしますっ!」

青葉君の熱弁を受けつつ、じーっと彼の目を見つめているレイ。早口なので
頭の中を整理しているといった所だろうか?

「・・・・つまり・・・・おじーちゃんのお手伝いをするのに、ここに住みこみたい、
 ということでよろしいですか?」

「はいっ、そのとーりですっ」

握り拳を固めて答える青葉君、結構激情家なのかもしれない。
しかし・・机に突っ伏して泣いていた(^^;アスカの耳がぴくんと動いた。

「ぐすっ・・・・て・・・ちょおっとまったあっ」

がばっと大声を上げるアスカにびびるケンスケと教授。

「今まで泣いてたと思ったら・・・いつもこうなんですか?彼女」

「まぁ・・・大体はああいう風だ」

一瞬ぎろっとした視線をケンスケと教授に向けた後、アスカはレイに向かって叫ぶ。

「まちなさいよっ、ここの家、女の子ばっかりなのよっ、
 男住まわせるわけにはいかないわよっ!!」

「・・・・いいです、どうぞ」

アスカの方を見もせずに間髪入れずに答えるレイであった。
当然・・・アスカは再び突っ伏してしまう(^^;

「あああああああああああああ、あんたって、ひとわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「アスカ、どうしたの?」

小首を傾げて今更ながらアスカを見つめるレイ。

「あんた人の話聞いてなかったのっ!!、いったい何考えてんのあんたわっ!!
 もーいちど言うわよっ、ここの家にはねっ、あんたと、わたししか、いないのよっ
 男住まわせて危ないとかそーいうこと考えないのっ!!」

「おじーちゃんも、男だけれども?」

「きょーじゅはゆーれーでしょーがっ、しかもあんな老人相手に危ないもなにもないでしょっ」

「ふっ、見くびられたものだな、わしも(^^;」

「きょーじゅは黙ってなさいっ、あんた少しは女のたしなみとかそーゆーものを・・・」

「女のたしなみといわれても・・・実感というものがないの・・・」

「実感もくそもないでしょーがっ、あんたがどんなに大ボケで女らしさってのが
 かけらほどもなくても、生物的に女だってことにはかわりはないでしょうがっ!」

「わたし・・・そんなに男っぽい?」

「男っぽくなんかないわよっ、そーゆーこと言ってるんじゃなくってぇっ!」

「あのーーお取り込み中の所悪いんだけどーーー」

「なによっ、相田とやらっ、こっちは大事な話してんのよっ、口挟まないでっ!」

「その話にも関わるんだけどさぁ、話は綾波の方にあるんだ」

「なによっ、わたしのけ者にする気!! わたしだってここの住人なんですからねっ
 一言言う権利はあるわよっ」

「なに?」

完璧にキれてしまってだんだん言っていることがわけが分からなくなってきてるアスカと
あくまで大ボケ+単刀直入マイペースなレイである。

「俺もここに住まわしてもらっても、いいかな?」

「あんたまで何言ってんの!、これだけわたしがいやだって言ってるの聞こえてなかったのっ!」

「・・・・いい、どおぞ」

「あああああああああんたも聞いてなかったのっ、いいかげんにしなさいよっ
 なんべん言ったらわかるのよっ、女2人だけの住まいに男住まわすなんてっ」

「わたしとアスカ、青葉さんと相田君、2対2でちょうどいい」

「人数の問題じゃないっ、寝込み襲われたらどーすんのよっ」

「相田君はそんなことしない。青葉さんも悪い人には思えないし」

「男ってのはねーーーーー、見かけじゃ判断つかないものなのよっ」

「・・・・アスカ、男の人に何かされたことでもあるの?」

「あるわけないでしょうがっ!!!、一般論としてよっ」

「一応男としては、耳が痛い話だなぁ」
「そぉだけどねぇ・・・この2人みてそーゆー気になる?」
「とてもとても、それどころではないような・・・」

「あんたら2人してぼそぼそ話してんじゃないっ、元はと言えば青葉さんとやら、
 あんたが変なこと言い出すからっ!!」

「そ、そういわれても、俺・・いやわたしはとにかく教授のお手伝いのために・・・」
「そーだよ、青葉さん、だっけ?この人責めても仕方ないじゃないか、
 せっかく教授のためにここまで言ってくれてるんだし」

「ケンスケとか言ったわね、青葉さんの方はわかるとしても、何であんたまでが
 この家住まなきゃなんないのよっ、あんた自分の家があるんでしょうがっ!!
 自分の親とかに相談しなくってもいいわけぇ!?」

「ああ、まぁ親には一言言うけどさ、心配ないと思うよ。うち7人兄弟でさあ、
 自分の部屋もなんにもないんだ。だからゆっくり勉強して眠れるとこが
 ずっと欲しかったんだよ。ここなら部屋も空いてるみたいだしさ」

「なにわがままなこと言ってんのよっ、こっちの都合という物も考えなさいよっ」

「わたし、かまわない。にぎやかになることだし、いい」

「あんた、にぎやかとかそーいう理由で許可したの?、いいかげんにしなさいよっ」

「そうだけど・・・・なにか他に不都合って、ないと思うけど」

「さっきからあたしがさんざん言ってるじゃないっ、女2人の住まいに・・・」

「いーじゃないか、綾波はこういってくれてるんだし、俺も青葉さんもそーいう気
 毛頭ないし・・・あ、そうだ教授、俺ここに住んでもかまわない?」

「わしはかまわんぞ。レイとアスカ2人だけでは心配だったしな」

「教授までなに言ってんのよーーーーーーーっ!、結局反対はわたしだけってわけ?
 いーわよいーわよわかったわよっ、襲われたらきっちり責任取ってもらうからねっ」

「おお恐、そんなこと言わなくったって手を出す気ないって」

「教授のお話だと、そんな訳にはいかないですよ。わたしも手伝いますから、
 出来るだけ早く、アスカさんを元の世界に返せるように」

「あ・・・ふんっ!、わかったわよっ、とりあえず信用してあげるから、
 あんたはきっちり教授を手伝うのよっ、変なことしたら承知しないからっ!!」

「はは、わかりました」

「青葉さん、でいいんだよね。そのアスカさん元の世界にって、どういうことなのか
 聞かせてくれる? 俺、まだその辺のことなんにも聞いて無くってさ」

「ああ、教授から聞いた話だと・・・」

「あんたから言われることじゃないわっ、わたしが当事者なんだから、
 わたしが説明するわよっ、あのねぇ、2ヶ月ほど前に・・・・」

アスカとケンスケ、青葉の3人がが話しているのを、レイは少し笑みを浮かべて
なにも言わず見つめていた。

「レイ、どうした」

「うん・・・・なんでもない」

教授はレイの顔をじっと見つめると、何か感じる物があったのかそっと頭を
なでる仕草をして、すっと消えた。
レイは少しだけ頭に手をやった後、再び話し続ける3人を見つめていた。





・・・にぎやかに なれば いいと思ったから

・・・『いい』って 言った

・・・にぎやかに なったら

・・・寝なくても おじーちゃんが 幽霊だと いうことを

・・・忘れて いられるかも しれないから

・・・おじーちゃん、わたし・・・・・・・






夜。レイとアスカは2人でお茶をすすっていた。

「はぁ・・・青葉さんも相田とやらも、今日はとりあえず帰るってことで
 相田は明日にでも、青葉さんは2、3日したら引っ越して来るってさ・・・
 またいそがしくなりそーね・・・って、聞いてるの、あんた」

「うん・・・考えてたの」

「あんたも、考えることなんかあるの?、今日なんかぼーっとしてわたしら
 話してるの聞いてたみたいだけど」

「うん・・・みんなの話聞いてて・・・決めたの・・・こっちに転校するって」

「はぁ? あんたそーいえば学校やめたくないってずっと言ってたじゃない。
 何で今更・・・あ、もしかして、今日の女2人って話気にしてはいたの?
 まぁ・・・こうなっちゃった日にはわたしひとりでも大丈夫そうだけどね」

「それもあるけど・・・ちょっと考えることがあって」

「考えることってなによ?、他に何か気がかりになるようなことでもあったっけ?」

「違うの・・・わたしのことだから」

「なによ、黙ってないで言いなさいよ、って言ってもあんたのことだから
 どうせつまんない理由なんでしょ」

「そう・・・かもしれない。それよりわたしも引っ越ししないと・・・」

「あああっ、これで引っ越しが3つぅ!、たまんないわね・・・
 まぁ勝手にしなさいよ。あんたの学校のことまでわたし口出す気ないから」

「ありがとう・・・アスカ」

「ふんっ、わがまま言いまくってなにを今更ってもんよ!
 ま・・・、なんか今日のあんたちょっと変だったし、まぁわたしのこと
 ほんの少しは考えてくれてるみたいだし、大目に見るわよ」

小さな目を大きく広げてアスカを見つめるレイ。

「気が・・・ついてたの・・・・」

「ちょっと変だってだけよっ! あんたの大ボケがおかしいとこっちの調子まで狂っちゃう。
 って・・・やだやだ、あんたにだんだん慣らされてきてるわ、わたし」

「・・・・ありがとう・・・・アスカ・・・・本当に・・・・」

「ふんっ、どおいたしましてっ、それより引っ越しの準備あんたちゃんと出来るの?
 心配だわ・・・ま、いいか。今日はもうわたし寝る!、なんかしゃべり疲れたわ・・・」

「毎日あんなにしゃべってるのに・・・アスカも疲れるなんてことあるの?」

「あんたわたしを何者だと思ってるのっ!! あんたとたいして変わんないわよっ
 疲れるときだってあるんだから、これからもずっと一緒に住むことになるんだから
 そーゆー時は手伝ってよ!」

「うん、わかった・・・・」




2人がお互いを見直した?ところで、千客万来な一日はふけていくのであった・・・・






- Phase 2 - End...











おまけ(^^;

「シンジ君、大丈夫かい?」
「足をくじいた上に、暑気あたりとはねぇ」
「素直に、セーラー服に着替えれば良かったのに」
「まぁいいさ、これでゆっくり、シンジ君のお世話ができると言うものだよ」
「たまにはゆっくりお休み、はい、濡れタオル変えてあげるよ」
「ゆっくり寝ておくれ、その間に・・・・ふふふふふ」

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、
 恐くて休みたくても休めるわけないじゃないかぁぁぁぁぁぁっ!」

「「「ふふふふふふふふ、お楽しみは、これからだよ、シンジくーーーーーん!!!」」」

「誰かぁ、僕を助けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」






            ちゃんちゃん(^^;





Written by mal


Top Page Contributions <- Phase 1


Upload Date: 98.5.26
Last Modified: 98.5.27
inserted by FC2 system